毒どくどく
どうやら俺は、熱に浮かされているようだ。
ああ違う。
毒に、侵されているんだ。
走りながら思う。
死を恐れてはいけない、と、俺たちは思われている。
実際は逆だ。
死んではいけない。何があっても。
情報を集めるのが仕事だ。それを持ち帰ることも。
死んで奪われるなんて、最大の屈辱だ。
だから、何があっても逃げ切らなくてはいけない。
そうはわかっていても、思ってしまう。
死など恐れるものか。
と。
死んでしまえば、俺たちなんか存在しなかったものと同じだ。
――けれど誰か一人くらい。
俺がいなくなったことに気付いて、泣いてくれるだろうか?
毒を受けた右腕を吹っ飛ばして、さてこれからどうするかと首を傾げる。
もう毒は、全身に回っていたようだった。