はじめに

ついに発売された道尾秀介さんの「いけない」の続編「いけないⅡ」を考察してみました。


読み終えて、最後の写真を見た後に何度か読み返すうちに写真の意味に気づきピースがはまっていく感覚…前作に続き面白いですね!

自分の認識が合ってるのか分からず考察を検索しましたがまだ最新作ということもあってかどこにも見つからず…拙い文章力ですが自分で考察してみました!


※これより先は完全にネタバレです。また、あくまで私個人の考察ですので間違っている可能性もあります。ご了承いただける方のみ先を読み進めてください。


 ​第一章 明神の滝に祈ってはいけない


第一章は、普通に読むとこんな感じ


行方不明の姉を探しに出た妹の桃花が、姉の痕跡を追っているうちに鶴麗山の避難小屋の管理人である大槻に出会う。同時期に行方不明の少女の捜査にあたっている隈島刑事が何度か大槻の元へ聞き込みに訪れる。避難小屋で大槻と話をするうちに桃花は大槻が姉を殺したのではないかという疑惑を抱く。実際、大槻視点では1年前に少女を殺したと思わせる回想シーン(p31 暗い背景に浮き出た少女の姿〜これから起きる出来事など何も知らずに〜)や(p58 観瀑台の上で芋虫のように激しく身体をくねらせていた少女)、(p69 大槻に両手で首を押さえ込まれながら〜動かなくなった少女)などの描写があることから、桃花の姉を殺したのは大槻であると考えられます。その後大槻の小屋へ侵入した桃花が遺体の隠し場所である冷凍庫を開け、それに気づいた大槻に追われるがなんとか騙して逃げ切れた…かと思われたが最後には桃花も殺され、大槻も観瀑台から飛び降りて自殺してしまう…


素直に文章を読み進めるとこのように読めますが、この流れで最後の写真を見た時にまず最初に気づくのは干支だるまでしょう。

p7の年賀状のくだりで桃花の行動している年はネズミ年のはず。p38でも「雪で作られたネズミ」とはっきり書かれている。なのに最後の写真の干支はウシ…牛


最初は「大槻は実は最後自殺したのではなく生きていて、翌年も干支だるまを作ったのか…?」などと考えましたが腑に落ちませんでした。


注目すべきはこの最後の写真を撮ったのがいつなのか。大槻が文中で干支だるまを撮影したのはp71の(六)段落最後のシーン。この写真を撮影した時点がウシ年牛だということを表している(桃花が姉を探しに出たのはネズミ年ねずみだからその1年後)。


これを踏まえてこの段落を読み返すと、(p69 一年前、山が暗くなったことに困り果て〜やがてしんと動かなくなった少女)という文章があります。

ここで言う一年前とは、ウシ年牛の一年前であるネズミ年ねずみのこと。姉が行方不明になったのはネズミ年ねずみのさらに一年前いのししのはずですよね。

ということは、この(六)段落に書いてある「一年前に大槻に殺された少女」は桃花だったのです!叫び

凍った大槻の母の死体を見てしまった桃花は大槻に殺されてしまいます…


第一章では「一年前」という言葉を多用して、「一年前=姉が行方不明になった年」と錯覚させているのです!


ここまで分かると、読み返していくうちに時系列をミスリードさせるトリックがあちこちに…


各段落の繋がり方が同時期の話のように書いてありますが、よーく読むとウシ年牛とネズミ年ねずみを段落ごとに行ったり来たりしています。


実は隈島刑事が捜査に当たっていたのは、姉ではなく桃花の行方不明事件。

p31の干支だるまの描写で「ちょろっと丸まった尻尾」とあるからここまでの流れで当然隈島刑事と大槻の会話もネズミ年ねずみの出来事と捉えてしまいそうになりますが、ここも読者を騙すトリックです。桃花が殺された一年後のウシ年牛の出来事なのです。


ほかにも、(六)段落で死体を隠している冷凍庫が壊れ、説明書を探そうと部屋中に電化製品の説明書を散乱させているシーンでは、凍った少女の死体は霜が溶けているのに対し、(七)段落で桃花が冷凍庫に逃げ込んだ時に見た「h」型の死体にはまだ霜が付いています。つまり桃花が逃げ込んだ時にはまだ冷凍庫が壊れていない(一年前)ということですね。カキ氷


最後のシーンで冷凍庫に入っているのは大槻の母と桃花の死体で、隈島が一年もの間探していたのは桃花だったということになります。


そうなると、姉はどうなったの?となってしまいますが…p80で大槻が「彼女の姉は、実際にこの場所で滝に祈ったのだろうか〜彼女は一体どこへ行ったのだろう」と言っているので、大槻は姉とは本当に関わっておらず、姉は本当にただの行方不明だったということだと思われます。


 まとめ

・凍った大槻の母の遺体を発見した桃花は大槻に殺された(ネズミ年)

・隈島刑事が桃花を捜索しているのはその翌年のウシ年

・大槻は姉を殺していないし会ったこともなかった(姉は単なる行方不明)

・冷凍庫が壊れてついに殺人を隠しきれなくなった大槻は最後に飛び降り自殺


こんな感じでしょうか?


所々に書かれている冬牡丹の「本当は、とっくに枯れている花。咲いているはずのない花。」という表現。

これは桃花はとっくに死んでいるのに、生きているかのような文章で読者を騙す道尾秀介さんからのヒントだったんですね…


ここまで読んでいただきありがとうございました!

とりあえずまだ第一章しか読んでいないので、続きはまた後日!