病気とは直接関係ありませんが、本人のバックグラウンドとなることも書いていきます。


最初はチューニングしてるだけかに思えたギターの音が、
高音の共鳴で、これは「宇宙」なのか…と思い始めたころ…
ウェーブのようにアリーナ側からスタンドへ沸き起こる歓声と、
立ち上がる聴衆の波。
19時15分ごろ、開演。

1曲目はアレンジされたギターのイントロから始まった、ノーパン。
この曲は吉井自身もモバイルサイトのアルバム収録曲の投票で
選んでしまったという、懐かしいにおいのする一曲。
彼曰く、吉井の音楽のルーツである「ヒラノくんちのロック」
(bridge vol.59インタビューより)であるこの曲から乗っけることは、
VOLTという作品がどれだけ彼にとって、衝撃作であったか、
そしてそれを表現するに十分な実力を備えた「今」をあらわすのに
持って来いである。

最初の衣装はアンティークの店で購入したという、大正時代の着物。
その出で立ち、一目で清志郎へのオマージュか、と思ったが、
真意は語られていない。
さすが役者の息子。着物を羽織にして流しても雰囲気が引き立って美しい。

続いて、フロリダ。
個人的には「代々木だ代々木だ」と「フロリダフロリダ」のところで
言ってくれるかな~、と期待したが、「東京東京」だった。

間髪入れずにBiri。
前作から登場のディスコチューンもライブ定番となりつつある。
ただただ踊るのが楽しい。そんな曲。
のっけのupper曲最後はHOLD ME TIGHT。

次に聴いたことのあるような、ないようなギターから始まったのは
ウォーキングマン。
アルバムでも周りに乗せられてやっちゃったらできちゃった、
的なブルースギターだが、生で見れて、アルバムとはまた違うアレンジで
オーバーアクションも加わって、すごくよかった。
声の張り、伸び、最高潮に自信がないと出ない輝き。
吉井は既に、吉井のブルースを鳴らし始めている。

続いてヘヴンリー。
そして、舞台が暗くなったかと思ったら、液晶モニタに
映し出されたのは、暗闇で赤くあやしく光る、
ピカチュウ。
「ピカ…チュウ!」「ピッカ…チュ!」
どうやらピカチュウにエフェクターをかませているらしい。
なんと!
シールドの刺さったピカチュウはちょっとグロい輝きを放っているが、
かわいい鳴き声に会場が和む。
そして、そのリズムが、だんだんと聴き慣れたメロディと一致していく。
始まったのは20GO。
一番暗い時代である、at the BLACK HOLEの1曲目である。
ピカチュウが加わることで、新たなるロックの誕生…
後でパンフレットを見て発見したのだが、このピカチュウ、
アメリカのスタジオにいたのだろうか。
後姿がオーラを放っている。恐るべしピカチュウ。

宇宙っぽい締めの後、魔法使いジェニー。
「ジェニーが飛んでったの見えますか~」と吉井。
さすがに飛び道具はないか…(笑

そしてまた懐かしいところでCALL MEカップリングの
MUDDY WATER。
もともとはアップテンポな曲だが速めアレンジ。

とここで、イントロとともに花道を駆ける吉井。
「ROCK STAR!!」
死んだら新聞に載るようなロックスターに…
清志郎オマージュだろうか。
吉井は死んだら新聞に載るだろうか。
評価されるべき実力がありながらまだ
吉井和哉ってだれ?という人もいるのも事実。
イエローモンキーの、と付け足すとやっと、ああ、とわかってくれるが
その、イエローモンキー時代も名曲揃い踏み。
その中でもこのROCK STARは、
実力派ながら認められず、さらにコンプレックスの塊である吉井を
象徴するような曲。

と、ここでMC。
「映像、お願いします」と言って話し始める吉井の声とともに、
背景の白布に映像が踊る。
音に反応して映像が動くという仕掛けを今回使っているらしい。
声という、一瞬で消えてしまう形のないものを
「見る」ことのできる装置、と嬉しそうに話した後で、
消えてしまうものを見られる、残せるということに絡めて
「生まれ変わってもまたみんなと巡り合いたいです。」
その瞬間、次に何が来るかわかった私はここで息が詰まる。

SNOW。
この曲が私にとってこれほどまでに思い入れのある曲になるとは、
初めて聴いた時は思わなかった。
某所にて入手した吉井武道館2008の映像を見て
SNOWという曲の存在を知り、何回も繰り返してみるうちに、
好きになり、やさしい音色の輪廻に心地よさを覚えた。
そして3月、くも膜下出血で倒れた私に、携帯は持ってきてくれないのに
「それと、いろいろ、ね」と言ってイヤホンなどとともに
母が持ってきてくれたのはiPod。
旧型ながら5Gなので映像の見られるそれに、
吉井武道館の映像も入れていたので、
手術前日までと、術後何日かしてから、
毎日のように見ていた。
SNOWの詞にあるフレーズに病床で涙した。
「終わらすには終わらすにはまだ早いさ」
「真珠のように一個の貝から一粒だけの人間の魂はいったいどこへ帰るんだ」
ベッドには4本全部の柵(転落防止)がされ、頭も上げることがかなわず、
天井と、横を向くしかなかった寝たきり時期を思い出し、
そしてその歌をいま生で味わっている事実…
あふれだした涙は止まらなかった。
吉井はよく、生まれ変われるんだぜ!と言うが、
それをリアルに体験した今、もう、
次々に流れるものを止める必要も術もなかった。
下を向いて涙を拭いていたら隣から暖かい手を差し伸べてくれた。
吉井のLIVEに大切な人と来るのも初めてだった。
私の中でこの曲がアンセムになってしまった。
繰り返されるギターのフレーズに酔いながら、
素敵な時間はあっという間だった。

曲終りから連続してやさしいリズムの跳ねる、シュレッダーへ。
この曲は、男女の別れの話だけれど、
苦しかった思い出をシュレッダーにかけるのだと思った、人は。

ONE DAY。
この前向きなメロディもVOLTの中で好きな一曲である。
「そこにある」「夢にいつか」「花が咲くまで」
「キングになる」「クイーンになる」「時がくるまで」
言葉のひとひらひとひらが、しみてきた。

モバイルサイトで本人自らネタバレを先にしていたが、
次は恋の花。
39108にはアコギだけで歌うやさしい歌になっているが、
もともとの歌詞は、ネガティブなもの。
今回はそれで、バンドVer.の披露。ラストの展開はとても新鮮だった。

そしてこれもLive定番曲となりつつある、Tali。
大切な人と一緒に聴けることがすごくうれしかった。
あったかい気持ちになれた。

VOLTで一番酔える曲(笑)。ルビー。
歌詞もメロディも秀逸なのだが、
女性視点での歌を歌う吉井はなんであんなにセクシーなのだろう。

トブヨウニ。
おととしのLiveでこれを聴いた時、なんていい曲なのだろうと思った。
歌詞に励まされることが多い。
トブヨウニを最初に歌っていた頃、吉井はまだ、
カオスから這い上がろうとしている時代だったはずなのに。
「徐々にで そう徐々にでいいから」
また少しだけ、景色がにじんだ。

本編最後に、ビルマニア。
これも、素敵な歌詞の宝庫である。
入院中、仕事のことで悩んでいた時に、
ふっと、答えを与えてくれた曲。
「誰も恨まず最後は絶対そうしよう」
病気や運命恨んだって仕方無い。
「あいつを絶対見返そう」
いつか、自分を見返してやる。
歌いながらまた少し涙目だった。

アンコール1曲目はPHOENIX。
前日に聴いていて、これ、やらないかなぁ…と思っていたら、
やってくれてびっくりした。嬉しかった。
「何回でも生まれ変われるぜ」

そしてLive定番曲シリーズ。これを聴かなきゃ帰れない。
I WANT YOU I NEED YOU。続いてWEEKENDER。
I WANT YOU~では恒例の間奏客いじりが今回は
なかった。センターでマイクの前でじっと構える吉井もよかった。
吉井の何が変わったって、まっすぐ正眼で構えたり、
下から見上げるような艶のある瞳だったり、
表情がすごく生きている。
地に足が付いているというか、これを貫禄というのだろうか。
そこにいるのは、紛れもなくROCKSTARの、吉井和哉だった。
39108のツアーで吉井がやっていたサビの手の振りは
吉井自身もやっていないし
客席でやっている人は減ってきて切なかったが
それでも楽しんでやった。
WEEKENDERでもやはり、「遠回りしてもよかったといえる大人になりたい」
のフレーズに痺れる。
吉井みたいな大人になりたい。失敗しても何度でもやり直せる。
失敗して学んで強くなる。
恒例の、「働いて夜中になって」の後の一言は「明後日からもがんばれよ!」

そしてさわやかに、Shine and Eternity。
この曲のMVが好きだ。
笑えることって大切である。

最後の締めはやはり、
またチャンダラ。
現地コーディネーターのコブラ氏との会話の中で、
「またチャンダラ~?(チャンダラは実在するインド料理店の名前だそうだ)」
というところから生まれたというこの曲。
CDではシタールを使っていたがここでは
ギターとキーボードで成り立っていた気がする。気のせいか?


どこで挟んだMCだかわからないけど
「みんな帰りたくないよね、土曜日だしね」
という吉井。
ソロ史上最高のツアーです。とコラムで自ら言う吉井。
エンターテインメントは、作り手から半分は受け手に任される。
受け手は十人十色、それぞれ感じ方が違うから、
別に響かない人もいるだろうし、最強に響く人もいる。
しかし、私も吉井の言うとおりだった。帰りたくなかった。
思いを共有できるということは、素晴らしい。
それだけで、彼の言葉は、本物になる。

CDでのツアー、というのは、単発のお祭り的なLiveに比べると
じっくり味わったり、演出的な要素が大きかったりするが、
今回は大満足だった。

会場が代々木ということで、話には聞いていたが、
音は正直あまりよくはなかった。
努力はしても会場の形状からしてあれ以上は無理なのだろう。
所詮体育館である。
Vocalがバンドに潰されることが何回か。
歌詞と曲がわかっているから脳内補完できるが、
初見の人には少しつらかったかもしれない。
でもバンドの音の構成はGuitarが引き立っていたように思う。
私はサウンドについては素人なのでこれ以上言うと突っ込まれそうなので
ここまでにしておく。


昨年の年末吉井武道館は、
チケットは取れていたものの、年末だし仕事も休めず、結局
チケットを無駄にしてしまい悔しい思いをした。
だから、昨年2月のZepp以来の吉井LIVE。
その間に、本当にいろいろなことがあった。
ありすぎるくらいあった。
生まれ変わって、また、吉井に会えた。
彼も成長していたし、
私も精神の肉付きは良くなったような気がする。
これからも応援したいと思った。

最後に、
尊敬するアーティストでありながら、
レポートの文体上、敬称略してしまったことをお詫びいたします。
吉井さん、私の人生に大きくくいこんでしまったアーティスト。
また魂の叫びを聴きに、見に、行きます。
ありがとうございました。

ぐだぐだですがここまで読んでくださってありがとうございました。