2日午前受験の結果が出る5時までの時間。

 それは、本当に生きた心地がしませんでした。

 偏差値から考えると、この受験回が合格を勝ち取る最後のチャンスでした。

 先述のように、2日午後受験はB校の試験の中でも最難関で、偏差値もだいぶ跳ね上がります。

 

 そして、ついに、5時を迎え、合格発表サイトにアクセスしました。

 結果は――

 

 合格でした。

 合格者の受験番号の中に娘の番号があるのを何度も確認しました。

 

 それからすぐに学校に向かいました。

 校舎の入り口を入ってすぐのところに集会室があり、そこに合格者の番号が掲示してあって、その横で合格証明書と入学案内の封筒を貰いました。

 

 その合格証明書を手に娘が午後受験の会場から出てくるのを待ちました。

 

 しかし、その時、「合否を確認するドキドキ」と「自分の番号を見つけた時の喜び」を娘に直接感じさせてあげたい、という考えが浮かんできました。娘なりに努力した結果勝ち取った合格ですから。

 

 そこで、先ほどの合格発表の掲示のある集会室に戻り、そこに居る先生に頼んで、先ほどもらった合格証明書と入学案内の封筒を一度返させてもらいました。

 

 そして、改めて娘を待ちました。

 午後受験を終えて会場から出てきた娘からは、午前の結果を聞かれました。

 私は、「サイトの調子が悪いみたいで、合格発表が遅れていて、まだ結果が分からないんだ。家に帰ってからもう一度見てみよう」とウソをつきました。

 娘は、「なんだよ~、ドキドキするな~、なんでこんな時にサイトの調子が悪いの~」と言っていました。

 

 それから校舎を出る直前、例の集会室の前を通った時に私は、「あれ、ここで合格発表してるみたい。見てみよう」と言いました。

 娘は「私が自分で見るから」と私を制して、一人で合格者番号の掲示を確認しにいきました。

 そして、自分の番号を見つけました。

 飛び跳ねて喜んで、私にハイタッチをしてきました。

 この時の娘の姿は本当に忘れられません。

 

 先ほど私の無理なお願いを聞いていただいた先生たちもそれを見て微笑んでくれていました。

 娘はその先生たちから合格証明書と入学案内を受け取ると、それを大事そうに抱えて家路につきました。

 久々に受験のプレッシャーから解き放たれた瞬間でした。

 

 その夜は娘も久々に夜更かししました。

 夜12時に発表になる2日午後受験の結果を見たい、とのことでした。

 それは、娘の実力からすると到底合格しているはずはない試験なのですが・・ 

 

 なんと、2日午後受験の結果も合格でした。

 一番難易度の低い受験回に落ちて、一番難易度が高い受験回に受かった、ということになりました。

 その偏差値の差は6くらいあります。

 

 その日の朝、失意のどん底に落ち込んだ状態から、何か実力以上の力が湧き出てきたようです。

 

 試練を乗り越えてくれた、という気持ちでいっぱいなりました。

 

 人生の中では本当に小さい試練かしれません。

 しかし、娘が人生で初めて試練に臨んで、がんばってそれを乗り越えてくれたことは、本当にうれしいことでした。

 

 自分が1年浪人してまで東大にチャレンジして合格した時の合格発表のことを思い出しました。

 もちろん、それも本当にうれしいことでした。

 

 しかし、何度思い返して、何度考えても、自分の東大合格より今回の娘の合格の方がうれしい。

 子供の成長ってこんなにもうれしいものなんだ、と改めて思いました。

 

 その後、4日と5日には、合格したB校より難易度が高い学校の試験がありました。

 「もう、受験はこれで終えてもいいよ」と言いましたが、娘は絶対に受けたいということで、両方とも受験することになりました。

 

 どちらの試験が終わった後も、娘は「本当に楽しかった」と言いました。

 試験や勉強に関してこんな言葉を聞くのは本当に初めてのことでした。

 

 ただ、結果的には、どちらの試験も不合格でしたが・・。

 結局、7回受験して、2勝5敗という結果でした。

 これで、我が家の中学受験は完全に終了となりました。

 

 私が最後に娘に言った言葉は、「2月2日のことを忘れるな」でした。

 

 失意のどん底から力が湧き出てきたこと。

 それは、それまでこつこつ努力してきたことの成果であること。

 そして、試験を受けること自体が楽しいと感じられた体験。

 人生で初めて試練を乗り越えた感触。

 

 中学受験自体にどれほどの意味があるのか。

 中学受験なんて害悪でしかないのではないか。

 

 中学受験に対しては、実に様々な意見があります。

 賛否どちらの意見にも一理あると思います。

 

 しかし、中学受験を経験して娘は確実に一回り大きくなりました。

 そのことだけは間違いないことだと思っています。

 

 

 

                                    終了