以前の記事に関連する話です。
ご存じのとおり、公立中高一貫校では、入学試験ではなく「適性検査」で合否が決まります。適性検査は教科をまたぐ融合問題となっており、私立中の一般入試で出される算数の問題(=進学塾で学ぶ受験算数の問題)とは大きく違うため、これとは無縁の中受生が多いかと思います。
ただ、そうとばかりも言い切れない状況が出てきており、一般入試のなかでこうした教科横断型の適性検査型問題が出されることもあります。たとえば次の問題。ふつうの計算力や算数センスのほかに、長い文章や小難しい資料を読み解くための読解力や論理的思考力などが問われています。
毎年日本には多くの台風がやってきます。その一部が日本に上陸あるいは通過し、大きな被害をもたらすことがあります。上陸とは台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸に達した場合を言い、通過とは台風の中心が、小さい島や小さい半島を横切って、短時間で再び海上に出る場合を言います。この問題では、台風が上陸した場合も通過した場合も「日本に来た」と表すことにします。
次の表1は2017年から2019年の間に発生し、日本に来たすべての台風について、そのときの日付、階級、中心気圧、最大風速についてまとめたものです。なお、階級は気象庁がある基準にしたがって定めたものです。(ドルトン東京2021)
⑴ 9月に日本へ来た台風の中心気圧の平均値を答えなさい。
「9月に日本へ来た台風」は次の4つ。2017年の①タリム(975hPa)、2018年の②ジェビ(950hPa)と③トラミ(960hPa)、2019年の④ファクサイ(960hPa)。
よってその平均値は (975+950+960+960)÷4=961.25hPa
⑵ 最大風速の小さい順に並べたとき、11番目である台風名を答えなさい。
最大風速の小さい順に並べると(カッコ内は最大風速)①ナリ(35)、②リーピ(40)、③アンピル(50)、③クローサ(50)、③ナマドル(55)、⑥タリム(55)、⑦ノル(60)、⑦サオラ(60)、⑨ジョンダリ(65)、⑩フランシスコ(70)、⑪シマロン(75) となり シマロン
⑶ 表1から読み取れることとして適当なものを2つ答えなさい。
ア 気象庁は最大風速が70ノット以上の台風を階級が5であると定めている。
イ 2017年から2019年の間に、12月に台風が日本へ来たことはない。
ウ 2017年から2019年の間に日本へ来た台風について、7月の最大風速の平均値と10月の最大風速の平均値を比べると、10月の方が大きい。
エ 最大風速が速いほど、日本各地に大きな被害がでる。
うえから順にみていくと
- アについて、表1をみるとジョンダリは最大風速65でも階級5となっているので×。
- イは表から〇と読み取れる。12月に日本に台風は来ないという常識*も助けにする。
- ウは平均値を出すのが少し面倒なので後まわしにする。
- エを先にみると、台風の被害については表1は何もふれていないから明らかに×。
「適当なものを2つ」という質問なので、ウについて計算でたしかめるまでもなく、正解はイとウ
*もっとも遅く日本に台風が来たケースとして、11月に上陸したものが過去に1つだけあるようです(1990年11月30日和歌山県に上陸)。なお、日本には上陸しないというだけで、台風が12月に発生すること自体はそうめずらしいことでもないようです(気象庁のデータはなかなか興味深いです)。
⑷ 表1をまとめたグラフとして正しいものを、ア〜エの中からすべて選びなさい。
正しいものを「ア〜エの中からすべて」選ぶ形なのでぜんぶたしかめるしかない。順にみていくと
- アのグラフでは、階級3が3回、階級4が5回来たことになっているが、表1で数えると階級3は2回、階級4は6回あるので×。
- イとウはたしかに表1の内容と合っており〇。
- エは、左下にある点(中心気圧960、最大風速40)に対応する台風が表1にはなく×。
⑸ 次の表2は、表1とは違う年に日本に来た台風の一部をまとめたものです。この3つの台風のうち、階級5であるものは1つだけです。どの台風か名前を答えなさい。また、階級が5である台風はどのような条件を満たすと考えられますか。説明しなさい。
台風名ーナムセウム
説明ー階級が5である台風は最大風速が60ノットより大きいという条件を満たすと考えられる。表1をみると、ジョンダリ(最大風速65)は階級5なのに、ノル(60)やサオラ(60)は階級4だから。