Canon-Code.

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アメ限小説。

その「異常」を捉えた科学者や研究所は少なかった。ニュースにもならない小さな出来事だったが、報せを聞いた科学者のほぼ全員が衝撃を受けた。非常に短い時間、検出限界に近いほど短い時間だけ「重力定数」が変化した。観測されたのは「光子の軌道変化」だけだった。発振器と観測装置を結ぶレーザー光が一瞬軌道を乱した。この観測実験を行っていた3つの研究所が異常を検知したが、すぐに光路は復帰した。観測機器のエラーを疑った科学者も、大陸間と言う大きな距離がある複数の研究所が”同時に”観測したことで、確定的だと知った。

 

その時、地球はほんのちょっと「軽く」なったことになる。

 

科学者たちは頭を抱えた。原因が分からないのだ。精度の低い(小数点以下3桁すら確定していない)定数ゆえにどの程度の変化があったのかも不明だ。ただ、光路が逸れたことから、定数の変化が重力加速度の変化を生んだようだ。もしもである、もしもこの変化が秒単位で続いたならば、地球は「月を手放す」ことになっただろう。いや、太陽系の構造にまで変化を生じさせていた可能性もあった。

 

原因の特定まで、一流の科学者は苦悩するだろう。