コードネーム「コンフェッション」
 俺は、いつからかそう呼ばれていた。
 そうなってどれくらいの時が経ったのか、よくわからない。
 生まれた時につけられた名前があるはずだが、現在それを呼ばれることはない。
 他にも、家族の顔とか同級生の顔とか……。
 今はもうよく思い出せなくなっていた。
 クスリのせいかもしれない。
 なんだかよくわからないうちに研究所に隔離され、様々なクスリを飲まされた。
 そして現在、皆の英雄「世界連邦同盟」に属する超能力者だ。
 薬物投与や人体実験により、俺は連邦の超能力兵士となったのだ。
 俺はその超能力で、次々に課せられる仕事を淡々とこなしていた。
 人に対し俺が意図した言葉を言わせたり、あるいは心の本心を洗いざらい吐かせる。
 それが俺の超能力だ。
 主に、連邦同盟の敵である「革命軍」の構成員の尋問に加わっている。
 他にも、裁判とかで連邦にとって都合の良いことを喋らせたりもする。
 その他、色々と……。
 とある日の朝、俺は軍用レトルトの簡単な朝食を食べていた。
(これってカロリーとかどうなってんだ?まあいいけど)
 外で車の音が響く。
 誰かが信号無視でもしたようだ。
 人が怒鳴っている。
 だが俺は気にしない。
 意識しないというわけではないが。
 耳で聴こえる音や目に見える映像が「本当」であるか怪しいのだ。
 世界連邦同盟が支配するこの世の中では、なおさらだ。
 世界連邦同盟は「新世界政府」といってもいい。
 対を成す革命軍は世界中に散乱して潜っている。
 前に起こった世界同時各爆弾テロも革命軍の仕業だ。
 当時俺は全く関係なく生きていた。
 だが連邦同盟に入ってから、連邦が裏で行っていることを知った。
 連邦は確かに超能力技術研究に力を入れている。
 だが超能力を発現できる者は少数だ。
 更に効果も不安定な奴が多いし、コストもかかる。
 だからそもそも、連邦は超能力者に期待はしていない。
 軍隊や兵士はもう時代遅れだ。
 新しい戦争では、電磁波を応用した技術が使われる。
 殺すときも、監視するときも。
 連邦は通信記録監視はもちろん、電磁波を照射して一般人の脳をも監視している。
 被害者が気づいても気づかなくても、ろくな未来はない。
 連邦の電磁波攻撃は回避することができないからだ。
 被害者は電磁波で脳を焼かれ、精神異常者や犯罪者に仕立て上げられる。
 精神病院送りか刑務所送りだ。
 負けずに耐える奴もいるが、解決は不可能だろう。
 そんな現実の中で、俺は超能力工作員として活動している。
 テレビを点ける。
 テレビに映る天気キャスターが今日の天気を告げる。
 画面には晴天を告げる数値が映っているが。
「今日の天気は……」
 とその時。
「豪雨になるでしょう」
 コンフェッションが告げる。
「ご、豪雨になるでしょう……あれ?」
 コンフェッションが言う言葉を、キャスターも喋った。
(よし……今日も超能力は万全だな)
 彼の超能力は、このようにテレビなど……ラジオを仲介しても使える。
(俺以外にも、これに似た能力を使える奴がいると聞いたことがあるが・・・・・・)
 考えながら、空になったレトルトのリサイクル・トレイをゴミ箱の放り込んだ。
(ま、今のところ俺には関係なさそうだしな)
 楽観的な結論に至った。
 それから洗面所で歯磨きをする。
 鏡には、小柄でぼさぼさ頭に薄い無精ひげの、少しお腹が出っ張った自分が映る。
「ひげを剃る必要……ないかな」
 結論づけて、外出の準備を始めた。
 支度が終え家から出ると、彼は晴天の空間から吹いてくる風に顔を撫でられ、空に対しにやりと笑い返した。

 

 

↓おまけ動画です。コインテルプロという集団ストーカーの手口。