「・・・・・・。」
そこにはポインターがいる。
ソファに伸びている。
そして、ぼーっと天井を向いていた。
「・・・・・・。」
それを、じっと眺めるカナミ。
ソファに座ってテレビを見たかったのだが。
テレビを点けて良いのかも困る。
少し間が空いた。
「なんすか。」
急に声を出す。
「あ。」
それでカナミは驚いてしまった。
「あの、テレビ見て良いですか?」
「いいすよ。あ、邪魔か。」
「あ、いえ。椅子持ってきます。」
軽い椅子があったので使おうとしていた。
「あ、いーっす。起きるから。」
「は、はぁ・・・・・・。」
そうしてカナミはソファにちょこんと座る。
そしてテレビを点ける。
チャンネルを、人気バラエティに回した。
入院中もテレビは見れたが、限られていた。
なので嬉しかった。
「・・・・・・。」
隣に座るポインターはまた無表情だ。
「ポインターさんは、好きな番組ありますか?」
カナミは嬉しそうに言った。
するとポインターはにやりと笑って。
「ないよ。」
と答える。
そうだ。
テレビ関係者も例の犯罪の加担者なのだ。
そのことを忘れてた。
それでポインターは自殺未遂をした。
「やっぱ好きな芸能人とかいんの?」
「は、はい、まあ。」
するとポインターは更に笑う。
「イケメングループとか?」
「まあ、歌とか。」
ポインターの笑顔は消えない。
「で、でも・・・・・・。」
なんだかカナミのほうは一生懸命だ。
続ける。
「ああいう人達は犯罪者ではないんじゃ?」
「そう思うの?」
「だと、思います。」
「どうかな。」
「だって、変な事とか言わないし。
その、頭の中の事とか。」
そう、私はそう信じたい。
カナミは信じたかった。
芸能人たちは歌とか笑いで人々に元気を与える。
そういう良い存在なのだ、と。
「じゃあ、俺の自殺は無意味か?」
「そ、そういう事は無いですよ!」
それはまずい事だと思った。
カナミはそう思った。
「どーだかね。」
へらへら笑いながら言うポインター。
投げやりに答えてくる。
「そういう、歌手だかグループだかだって、
過去に酷い事とか悪い事をしてんだぜ。」
ポインターは身を乗り出して言う。
それに対してカナミは、むっとする。
「でも、そうだったら人気になれないですよ。」
「被害者が訴えても、ファンが庇うからな。
今更そんなこと言うな、とか。それでもいい人だ、とか。
外見がかっこいいし、言うことも優しいからな。
その芸能人たちは。
昔からイケメンで、スポーツやってたりとか。
そーゆー人気で、皆が庇ってくれる。
俺みたいなブサメン・キモオタが言ってもな。
言っても、根暗だひがみだ言われて、逆効果だ。」
にこにこ笑いをやめないポインター。
「でも、全てがそういう人じゃないでしょう?」
カナミは、つい言い返してしまう。
「そうじゃないって、どうやって言い切る?
まさか君が、思考盗聴をしているとか?」
「いいえ、そんなんじゃ・・・・・・。」
「俺の場合は、そうだったからな。
いじめてた奴らは。
バンドやってたり、スポーツ出来たり。
誰からも一目置かれる存在だった。
逆に俺が問題視されてたな。
そいつらは誰も見てない所で俺を殴ってたのに。
俺の頭の中見てたのに。
皆、見てたって事なのにな。」
「わ、私は思考盗聴してません。」
「でも向こうは、君の頭の中を知ってるぞ。」
「そ、そうでしょうか・・・・・・。」
そこまで話して、直後に。
「はいはーい、終了終了。」
ユイがパンパンと手を叩く。
「ポインター、大人げないぞ。」
ユイは珍しく不機嫌な様子だった。
「あー、すんません。」
ニコニコ笑いのポインターが言う。
「・・・・・・。」
カナミは少し怒っているような感じだ。
なんだか、むっとしている。
「まったく・・・・・・。」
ユイはため息をついた。