ユイが運転する車は訓練場のセキュリティを抜けた。
駐車場へ入る。
(私たちしかいないのかな?)
カナミは疑問を持つ。
(こんなに広いのに・・・・・・。)
「ついたよー。」
ユイは車を停車させた。
他にも十数台は入れそうな駐車場なのに。
今は私たちしかいない。
カナミはそこで少し目を細める。
寂しさを感じた時、家族の事を思い出した。
両親は今、何をしているのだろう?
私の事は、どう思っているのだろう?
カナミは今、軍隊の兵士をやっている。
超能力者とはいえ、まだ十四歳の少女だ。
前にテレビで革命軍が少年少女を訓練するのを見た。
嫌だなぁと思ったけど。
今は自分がそうなっている。
だがなぜか自分のそれを嫌だとは思えない。
むしろ、自分が戦うのを許している。
私は大人のために人殺しを・・・・・・。
とカナミが考えたところで。
「ささ、降りて降りて。」
自分が先に降りつつ言うユイ。
「よっ、と。」
ポインターも降りる。
それにつられてカナミも降りる。
貰った銃を持ったまま。
「ふう。」
ポインターがそこで防弾ベストを脱いだ。
「汗、ひどいわね。」
ポインターは気温のせいかと思っていた。
だが、違う?
「ん、ええ。」
「クスリ、切れてるんじゃないの?」
バタン、と車のドアを閉めるユイ。
「そっすね。」
ポインターは赤いカプセル錠を取り出す。
そして複数口に入れ、ミニペットボトルの水で飲みこむ。
「・・・・・・。」
(頭痛がする・・・・・・。)
カナミもクスリを取り、飲んだ。
「ふう。」
カナミも一息した。
「お互い、薬物中毒者っすね。」
ポインターがカナミに言うと。
「はぁ、まあ。」
と曖昧な態度に出た。
(中毒かぁ。確かに病院を出てから・・・。)
でも・・・・・・。
(一番知りたいのは、この男の能力。)
歩いて部屋に入って行く三人。
(ちょっと一発、攻めてみるか?)
「あ、あの、ポインターさん。」
「ん?」
「?」
ユイも立ち止まる。
「ポインターさんの超能力って?」
「ああ、さっきの戦闘じゃ、わからないっすか。」
「す、すいません。」
カナミはアサルトをキュッと抱きしめ縮む。
「俺の能力は警報とか、予兆みたいなもん。」
「警報?」
「研究でも、科学的解明はできないらしい。
外からなにかを感じたり俺に変化があると発生する。
一瞬だが対象物への干渉を起こすという。
それが生物にとって一瞬の隙になるんだよ。
でも壁を割るとか、そういう破壊力はない。
だからあんまり役には立たないが。」
三人はリビングへ入り、肩の力を抜く。
ユイがリモコンでエアコンとテレビの電源を入れる。
カナミは防弾ベストと、腰に装着した拳銃と予備弾倉を外した。
アサルトライフルも装填弾丸と弾倉を外す。
かなり手慣れた作業の様だった。
それを見ていたユイは思う。
十四歳の少女が、人を殺す道具の扱いが上手いというのは。
そしてカナミは気づく。
「あ、ここじゃなくて部屋に持っても良いですか?」
一応ユイに訊ねる。
リビングにそんなものを置いても邪魔だと思った。
「うん、いいよ。」
ユイがそう言ったので部屋に持って行った。
バタン。
カナミはドアを閉める。
机があるので、そこへ銃・弾薬を置いた。
衣装ケースもある。
中にはシャツと下着とカーゴパンツと靴下が数着揃っている。
あらかじめ用意されていたのだろう。
サイズがちょうど良い。
タオルも数枚あるので、風呂に入る事にした。
持ってリビングへ行く。
ポインターとユイがいた。
ユイはテレビを見ているが・・・・・・。
ポインターはソファーに気持ちよさそうにダラけている。
というかボーっとしている。
意識が無いようにも見えた。
「あ、リジェちゃん。」
「あの・・・・・・お風呂先に。」
「うん、いいよ。」
「ポインターさん、大丈夫なんですか?」
「ああ、ちょっとクスリをね。
ハイになってるか、意識が鈍化してるか。異常はないよ。」
「はぁ・・・・・・。」
「起きてるっす。」
ポインターは口だけ動かして言う。
まるでゾンビだ。
「じゃあ、お先に。」
カナミはバスルームへ入って行った。
ユイはバラエティ番組を見て笑う。
ポインターは全く動かず息をするだけ。
その後三人は食事をして眠った。