十数分分かけて、カナミたちは到着した。
だが・・・・・・。
カナミは驚く。
(あれ?)
なんともない、普通に駅だった。
(テロがあるんじゃ・・・・・・?)
本当に普段通りという。
人々は普通に歩いている。
「さーてと、どこかな?」
ユイは辺りを見渡している。
すると・・・・・・。
「ちょっとすみません。」
警察官が声をかけてきた。
「あ、はい。」
ユイはにこりと笑って対応した。
「研究所からの増援ですか?」
「はい、そうです。」
「では、こちらへ。」
超能力研究は連邦の極秘事項だ。
それを知っているということは、ただの警官ではない。
「・・・・・・。」
カナミは事態が飲み込めない。
(・・・・・・だけど。)
体はなんだか冷静で、安定している。
(私って前、こんなのだったっけ?)
学校のテストとかでも緊張するような私が。
そう思っていた。
(こんな、テロとかすごいことに・・・・・・。)
「さあ、どうぞ。」
警官が駅内の一室へ案内した。
そこには・・・・・・。
銃や防弾ベストなどで武装した兵士達がいた。
ぞろぞろと。
「どうも。」
ユイが指揮官らしき男に挨拶する。
「ああ。あなた達が超能力の?」
「ええ。」
「そうですか、楽にしてください。」
「どうも。」
「ありがとーございます。」
ユイとポインターは気楽に対応した。
「・・・・・・。」
カナミは周りを見る。
(本物の銃だ・・・・・・。)
「なにかおかしいかい?お嬢さん。」
指揮官が厳しい表情で話しかけてきた。
「い、いえ。なんでも。」
「そうかい。」
そして。
「それで、学者さん。彼女らに武器は必要ですか?」
と尋ねてきた。
「あ、俺は防弾ベストだけください。」
ポインター。
「銃は?」
「俺は銃はいらないっす。おっかないんで。」
ポインターは軽い感じで答える。
「そうか。そちらのお嬢さんは?」
「ああ、彼女には銃と防弾ベストを。」
ユイが代わりに答えた。
「了解しました。」
そして指揮官は部下に指示をする。
「あの、テロがあるのに・・・・・・。」
カナミが口を出す。
「ん。」
「避難とかさせないんですか?」
「んー、まぁね。」
「そしたら、相手が逃げちゃうから。」
ポインターが代わりに答える。
「テロが起こるまで、黙ってみてるんですか?」
カナミは更に追及した。
だが。
(私にはわかっている。この状況。やるべきこと。)
「ことが起こるまで、なにもできないよ。」
ポインターが無表情でつぶやく。
「ほぼ全てのテロは国家監視システムで感知できる。
だけど、監視システムは国家機密なの。
民間人にそれを悟られるわけにはいかないの。」
ユイがそういうが・・・・・・。
「あ、すいません。余計な事を・・・・・・。」
(わかってるのに。)
「まあ、最初だから。仕方ないわね。」
ユイは少し視線を落とす。
だがその意味を解るのは、監視システムだけだ。
思考盗聴とインターネット通信傍受。
それは国防のための国家機密事項である。
そして、超能力も。
「そろそろ標的が来るそうです。」
兵士の一人が言った。
標的、か。
カナミにとって、まだ未知数というか。
出来ることは分かっているのに、実感がない。
(人を、殺す・・・・・・。)
それは連邦同盟のためである。
国民のためである。
だがここでは、まず犠牲になってもらってからという。
テロがあったほうが得なのだ。
後々、敵を殺す理由にになるから。
テロは、軍隊にとって燃料なのだろう。
国に被害があれば、それを口実に権力を拡大できる。
戦争はビジネスでもある。
ただ世界平和のためだけってことでもないんだ。
カナミは、ハッと気づく。
自分はなぜそんなことを考えるのだろう?
いつから、そんなことを考えるようになった?
自分で、自分がわからない・・・・・・。
私、戦争なんてやりたくないよ!
と、思うカナミだが、気持ちは落ち着いている。
大勢、人が犠牲になるのに。
大勢、死ぬのに。
だけど私は超能力者で。
連邦軍に思考盗聴されてて。
だから、ほかの道を選べなくて。
選べば裏切者で。
裏切ったら自分が殺されて。
という絶対的な支配。
あ、やめよう。
こんなことを考えるのは。
また苦しい思いをすることになる。
目の前のことだけに注意しよう。