「まあそんな感じで。良いこともあったよ。」
無表情のポインターが言う。
「へぇ、どんな?」
ユイがにやにやしていた。
「・・・・・・?」
カナミは状況が飲み込めない。
(この男の人、嬉しいのかな?)
とは思うけど、一応口には出さない。
「いじめてた奴らを殺したんだ。」
「へぇへぇ。」
「!」
ユイがにやにやする中、少女は驚いた。
「そういえば、リジェネイターさん。」
無表情の男がつぶやく。
「は、はい!なんでしょう!?」
カナミはびくりと反応してしまった。
(ああ、挙動不審かな、どうしよう。)
「きみはこの国の仕組みは知ってる?」
「え?仕組み?」
(前に言ってた、ルールとか?)
心の中で叫ぶ少女。
「ヒビキさんから聴かなかった?」
助け舟を出してくれるユイ。
「ああ、そういえば。」
「そう、連邦同盟加盟国は組織の監視下にある。」
「そゆこと。」
簡単に肯定するユイ。
「頭ん中も、なにもかもね。」
さらに言うポインター。
「え?頭の中?」
(どういう事?)
少女には疑問しか残らなかった。
「電磁波技術によってね。」
と、ユイが補足する。
「え、え?」
困惑する少女がそこにいた。
「まーね、俺も最初はわかんなかったけど。」
今度はにやりと、また嘘の笑いをする男。
「電磁波によって人の頭の中見たり。
頭をおかしくして、犯罪者に仕立てたり。
神経を操作して、病気にしたりね。」
ユイは、それで得た情報を研究していたのだ。
「集団ストーカーっていうらしい。
技術は組織の物だけど、実行犯はマスコミや一部の一般人だ。」
三人はリビングの椅子に座っている。
話をポインターが続ける。
「俺も嫌がらせを受けていた。
今も監視されて実験体になったり使われてる。」
それを言っている男は無表情だった。
「笑いがツクリっていうのは?」
「まあそれは、副作用みたいなもんかな。」
「副作用って、クスリの?」
「いや違う。笑いが嫌いなのは、いじめのせいだ。」
「す、すいません・・・・・・。」
少女はなんとなく謝ってしまった。
(自殺未遂と言ってたし、ひどいいじめだったんだ。)
と思っていた。
「だからね、リジェちゃん。」
ユイが話に割り込んできた。
「私たちは監視されてて、逆らうと殺されちゃうの。」
そう、それが現実なのだ。
「革命軍はそれに反対する人達っす。」
「だね。」
「・・・・・・なんか、大変なんですね。」
考えたこともなかった事実。
それに圧倒されるカナミだった。
「まあ俺は自殺未遂したらどうでもよくなったが。」
そう言うポインターは、ポケットに手を突っ込んだ。
ピルケースを取り出す。
そこから赤いカプセル錠をひとつ。
「それで後はテキトーに権力者に従ってさ。」
飲み込む。
「金稼いで、こーやって生きてる。」
「は、はあ・・・・・・。」
リジェネイターは物騒な言い方を受け流す。
「でも、無差別には殺さないんだよねぇ?」
けらけらと笑いユイが放つ。
「俺も無敵ってわけじゃないですし。」
ミネラルウォーターで薬を飲むポインター。
「こーやってクスリを摂取しなきゃならない。」
「・・・・・・はぁ。」
(自殺、かぁ。)
カナミは、そこに想いを感じた。
(なんか、それってわくわくするかも。)
少女は自分の中の新たな感情に浸る。
そして三人は夕食を食べて、風呂に入ってから眠った。
夜中、カナミは目が覚めた。
頭痛がした。
クスリ飲まなきゃ。
枕元に水を置かないことを後悔した。
水道・・・・・・水。
「うう・・・・・・。」
頭を意識しキッチンの水道へ向かった。
電気をつける。
「!」
ポインターがソファで伸びている。
「は?」
気付く男。
「ああ。」
ポインターは頭を揺らす。
「ちょっとクスリで気分眺めてた。」
のんびりしてる。
「そうですか・・・・・・。」
「リジェさんもクスリかな?」
「はい・・・・・・。」
カナミはコップに水を入れる。
そしてピルケースからプラメトールを取る。
水と一緒に飲み込む。
「はぁ・・・・・・。」
「俺なんか絶望思考もあるからね。
他の超能力者もそうだよ。
皆、頭になにか異常を抱え込んでる。
頭痛だけならまだマシだよ。」
「そう、ですか?」
「うん。」
それでも、私はつらいのだが。
で、ポインターが目を閉じ無言になった。
カナミは黙って、部屋に戻った。
クスリを飲んだ後は良かった。
すっきりして、よく眠れた。