カナミ達を乗せた車は走る。
超能力者の少女、リジェネイター。
少女は流れる景色をじっと見つめる。
隣には彼女と同じ超能力者の男が座っていた。
(この人も、私と同じなのかな?)
カナミは考えた。
ヒビキという研究者が言っていた。
<超能力者は機密だから、家族に会えない>
<死亡扱いされる人もいる>
「・・・・・・。」
「ん、なに?」
ポインターが話しかけてきた。
「え・・・・・・。」
つい、彼の方を見つめてしまったらしい。
「あ、いえ、なんとなく。」
カナミは慌てて目をそらした。
「そうか。」
ポインターはそう言い、笑顔になった。
(なんでだろう・・・・・・。)
少女はその笑顔に違和感を感じ取った。
そして走行していた車が停車する。
どこかの広い駐車場だ。
「ついたな。」
ポインターが、ぽつりと言う。
「さあ、二人とも降りて!」
運転していたユイが二人を促す。
「は、はい。」
まだ少し慣れない状況に困るカナミ。
(ここって、少し大きなとこ・・・・・・。)
大型の駐車場に大きな倉庫のような建物などがいくつもあった。
学校のグラウンドを思わせる。
そのグラウンドには簡単な家や障害物が置いてある。
射撃訓練場なんかもあった。
要するに、いわゆる戦闘訓練場だ。
三人はその中の居住区へ入って行った。
テレビやキッチンに冷蔵庫、風呂があった。
エアコンまでもが完備されている。
(す、すごい。)
カナミは、ちょっと気が抜けた感じで周囲を見る。
するとユイが。
「はいこれ。カードキーと携帯通信機。」
と言ってカナミに渡した。
ポインターが先に開けて入って行ったのだが。
「あ、はい。」
それらを受け取るカナミ。
「無くさないでね。」
「はい。」
そこへ、にこにこと笑う男。
ポインターだ。
「俺ら常に一緒だから、どっちかが持ってりゃいいでしょ。」
「そうね!」
元気にユイが答えた。
(うーん。)
カナミは頭の中で少し考える。
(このポインターってひと・・・・・・。)
さっきから気になるのだった。
それが。
「なんすか?さっきも、だけど。」
また、カナミは彼の事を見つめてしまったようだ。
「あ、いえ。」
すぐに顔をそむけるカナミ。
まあ、いいっすけど、と流す。
「ああ、わかるわぁ。」
ユイがつっこみを入れてきた。
「ポインターの笑顔だよね!」
「え、えぇ?」
かなり動揺してしまった。
「ああー、やっぱそうですかー。」
ポインターが普通に返した。
「彼の笑いって、ツクリだからね!」
にっこり笑顔でユイが言う。
「はは、わかるんすね。」
そう言って突然無表情になるポインター。
「・・・・・・ツクリ?」
「まあ。」
「ポインターってば根暗だからねー。」
「言わないでくださいよ。」
「・・・・・・。」
(よくわかんないけど、根暗は失礼なんじゃ。)
カナミはリアクションに困る。
とりあえずなにも言わないでいる。
「俺って小さい時いじめられてて、笑えなくなったんですよ。」
「根暗じゃないの。」
「うーん。まあユイさんだから許しますけど。」
ポインターはニコニコしながら言う。
そして三人はすでに部屋に入っている。
「ツクリって、嘘ってことですか?」
「そそ、笑うの嫌いなんですよホントは。」
「・・・・・・大変ですね。」
「そうかな。」
ポインターは表情を変える。
さっきまでとは違い、無表情になった。
「まあ、それで自殺実行しちゃったしな。」
「す、すごい大変じゃないですか。」
慌てるカナミ。
どうかな、とへらへらするポインター。
彼女が小学生のころ、いじめ事件などあった。
カナミはできるだけ加わらなかったが。
それが酷いことだとはわかっていた。
「それで超能力が使えるようにもなったが。」
そんなポインターを見つめる少女。
カナミは反応に困った。
「ま、一応生きてるよ。」
ポインターは驚いていた。
カナミに対して。
初対面で俺の歪みに気づくとは。
普通ならなんとも思わない。
笑ってても無表情でも。
ただ思う。
そういう人なんだな、と思うだけだ。
感知型なのか?
リジェネイター。
どんな能力者なのか・・・・・・。
超能力者という性質上、自分の能力は明かせない。
たとえ味方同士であっても。
超能力といっても魔法ではないのだ。
誰にでも弱点はある。
超能力者の武器は超能力。
手の内を明かすのはリスクも伴う。
一風愛想よくしているのもそのためだ。
自分を明かさず、相手に答えさせるのは不自然。
歩きながらつらつらと考えるポインター。
だが<笑って穏やかに>というのは必要だ。
それはポインターが生きていくための重要な技術なのだ。
「そうだよな、イジメられている時も。
自殺するときも、俺は・・・・・・。」
ポインターはぶつぶつと口のなかで言った。