「さあ、いこっか!」
ユイは、はきはきして言う。
「・・・・・・?」
カナミはまだ状況に疑問だった。
(とにかく、ついていけばいいのかな?)
疑問はあるが、口には出さない。
「はい、よろしく。」
ポインターが笑顔で言う。
「リジェネイターさん?も、よろしく。」
今度はポインターはカナミに言う。
「あ、はい!よろしくお願いします。」
ちょっと焦ったカナミが返事をした。
三人は、やたらと広い病院の駐車場へ出る。
「・・・・・・。」
(これから、外なんだ。久しぶりだなー。)
カナミは空気を吸った。
そして歩いていく三人。
ユイが先頭で、他の二人はついていく。
「さ、この車だよ。」
ユイがそう言い一台の車のロックを外す。
「ささ、乗った乗った。」
「・・・・・・。」
(明るい人だな。)
思うカナミ。
「面白い人ですね。」
ポインターがまた笑顔で言う。
「そお?ありがとー。」
少し照れるユイ。
「それで、車でどこへ?」
車が走り出す。
自分はなにも知らないカナミ。
不安しかなかった。
「ああ、とりあえず、待機用の家があるから。」
そうユイが言うと。
「そう、同居するけど、結構快適だよ。」
ポインターが補足した。
「そうだ、クスリのことだけど。」
急に呼ばれて、ハッとするカナミ。
「は、はい。」
「プラメトール。超能力に必要なクスリなの。少なくなったら言ってね。」
ユイがそう言って、一瞬ミラー越しに見てきた。
「わ・わかりました。」
カナミはピルケースを確かめた。
開くと、緑色のカプセル錠がたくさん入っている。
「えーと、この緑の、ですか?」
一応、確認。
「そ、あなたの超能力の維持には必要なの。」
車の運転をしながら答えるユイ。
研究者として、やはり詳しいのだな。
カナミはそう思った。
「クスリの効果が薄くなると超能力が使えなくなる。
効果の時間は環境とか色々な環境とかに左右されるけど。
放っておくと脳神経にとって障害になる。
死ぬこともあるから気を付けてね。」
補足する女性研究員。
私の超能力。
リジェネイター。
私の肉体の、超回復能力。
でも私は・・・・・・。
カナミは、その力の意味を知らない。
ポインターは携帯プレーヤーで音楽を聴いている。
「・・・・・・。」
流れる外を無表情で見ている彼を、見る。
「・・・・・・。」
リジェネイター。
するとポインターは突然ピルケースを持った。
そして赤いカプセルを三錠ほど口へ放り込む。
そのままカリカリと噛砕き、水で飲みこむ。
「ふー。」
ため息をつく。
「どう、頭痛の方は?」
ユイは運転しながら訊ねた。
「ひどくなってますよ。」
「情緒不安定も?」
「ひどくなってますよ。」
「ふむ、安定剤を増やしますか。」
「どうでもいい。」
彼にとってはどうでも良いことなのだ。
そう、一度生きることを放棄した彼にとっては。
今更それを言い出す気はない。
クスリは超能力者に絶対必要なものだ。
それを投与しなければ超能力は使えない。
だがクスリの投与は脳神経や肉体に悪影響をもたらす。
クスリを飲む超能力者は皆、精神が不安定だ。
それは命の短さをも意味するものであるのだ。
(・・・・・・。)
そのやりとりを見ているカナミ。
(クスリ・・・・・・。)
そう、自分の薬物投与も。
なぜか自覚できた。
全ては、作られたもの。
(・・・・・・それは。)
カナミは、一つの疑問に到達する。
(この、命も・・・・・・?)
と、考えたところで。
「あっ・・。」
強烈な痛みが体中に走った。
頭を抱え込むカナミ。
「だ、大丈夫!?」
ユイは正直、驚いた。
「・・・・・・?」
音楽を聴いていたポインターは遅れて気づく。
「は・はい・・・・・・。」
(ク・クスリ・プラメトール。)
慌ててピルケースと水を探す。
「はい。」
ポインターはミニペットボトルを渡した。
「あ・あり・・ございま・・す。」
プラメトールを水で飲みこむリジェネイター。
「は・はぅ。」
一息つく。
「思考には、気を付けた方がいい。」
ポインターがヘッドホンを外して言った。
「思考は監視されてる。考えちゃいけないことがある。」
その顔は無表情で、眼は虚ろだ。
「それが連邦同盟の国家戦略だ。」
「はぁ・はぁ・・・。」
息を繰り返すリジェネイター。
「・・・・・・。」
ユイは黙って車を運転する。
「危険な考えだけで体の危険を呼ぶのよ。」
まさにそうだった。
「考えただけでね。」
「それがルールみたいなもんだね。」
「・・・・・・そんなの。」
カナミは珍しく反抗的になる。
が。
「そう、ですか・・・・・・。」
肩と視線を落とした。