バーをたたき、上方に大きく弾んだ自らのシュートに、駒野は天を仰ぎ、頭を抱えた。うつむいてセンターラインの仲間のところへ戻る駒野を抱きかかえるようにして迎え、列の中へ招き入れたのは、大会前にその腕からキャプテンマークを剥奪された中沢だった。
5人目のキッカー、カルドソが決勝のゴールを決めると、歓喜の輪を抜けだし、1人のパラグアイ選手が駒野に駆け寄り、額をすりつけるようにして何かを語りかけた。自身4人目のキッカーとして落ち着いてゴール中央にPKを決めたアエドバルデスだった。おそらくスペイン語だったのだろう。駒野は何を言われているのか分からないはずだが、しきりにうなづいていた。気持ちは通じていたのだろう。
一番長く駒野の肩を抱いていたのは、松井だった。そして駒野以上に泣いていた。何も言わず、しゃくり上げ、ただただ肩を抱き続けていたようにみえた。そして逆の肩を、阿部が抱いた。
サポーターへのあいさつに駒野を背を押していざなったのは、稲本だった。努めて笑顔だった。駒野は笑顔を返すことはできなかった。それでも稲本は笑みを送り続けた。
ロッカ-ルームに引き上げ、ミックスゾーンに姿をみせた駒野は、無言でうつむき、報道陣の前を通り過ぎた。バッジオが、バレジも味わったPK戦の残酷。だが多くの仲間に支えられ、駒野は立ち直らなくてはならない。
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産経新聞の6月30日付けの記事「誰が駒野を慰めたのか」より、引用。
本当に素晴らしいチームだった。
人生に勇気と希望を与えてくれた。
そして、初のベスト8が決まって歓喜のまっただなかであるだろうに、
相手国のPKを外した選手のことを思いやれるバルデスも素晴らしいと思う。
負けたのは残念だけれど、負けたのがパラグアイでよかった。
正々堂々と戦えて、互いの健闘をたたえあえるような国でよかった。
もちろん、次の試合もパラグアイを応援します。
はあ。だけど、本当は、この代表たちをスペインと戦わせてあげたかった。
4年後、また、ブラジルW杯はあるけれど、
その時は当然このメンバーではない。
胸が熱くなるようないいものを本当にたくさん見せてもらったので、
(負けない気持ちとか、信頼とか、がむしゃらさとか、)
それは、きっと、サブの選手も含めて、
この代表選手たちだからこそのものだったと思うので、
それが、とりあえず、終わってしまったのが、残念です。
岡田監督、選手のみなさん、本当におつかれさまでした。
普段サッカーには興味の薄い、にわかでミーハーなファンだけど、
俄然、Jリーグに惹かれてきました。
ああ、楽しかった。この、数週間。
心から感謝したいです。どうもありがとう。