年末年始からこの本を3回読みました。
う~~ん、すごいです。
原田さんの本は大変売れている「三千円の使い方」など明るく前向きなもので読んでいて元気をもらっていました。
しかし、これはがらりと違います。
【ネタバレでないあらすじ】物語は主人公の藍の母がその母(藍の祖母)を刺して留置され藍に「保釈金100万をお願い!」というところから始まります。
アラサーの藍は勤務先の上司との不倫が発覚して離婚したばかりで武蔵小杉のタワマンから追い出され、元住吉の安いアパートでガスレンジもない極貧の生活を送っています。
藍は元主人と不倫相手を脅して100万を作り、母を釈放させて、母と祖母の住む相模原市の古い家で一緒に暮らし、総菜屋でパートをはじめます。
と、一難去っておだやかな暮らしに見えますが昔も知り合いだった隣人の美代子に会います。
美代子は高校生の頃から介護に追われて家族をひとりずつ看取った後に祖父を介護し、祖父の年金で暮らしています。
ところで藍の母は男出入りが激しく、藍は祖母に育てられたようなものです。
父の記憶はなく生活はいつも逼迫しており、藍は高校の頃からアルバイトをし、大学は奨学金とアルバイトで卒業しています。そんな事情で藍は母を許していません。
藍は不倫相手から「大学も出ているし、頭もいいのに、その後ろには俺たちとは全然違う、品の悪さがある」と言われます。藍はかなりの美人でもあるのです。
不倫相手の察した通り、藍は美代子と普通の人間が経験しないような世界に入っていきます。
【感想】この歳(66歳)になって思っても仕方がないのですが、私の幼少期は大変貧しかったのではないかと思います。半世紀以上前なので、まあみんなあんなものだったとも思いますが、それでも何かしら不安のようなものを感じます。
本当は不自由したこともなく、国立の附属小学校に通い、ピアノも習い、、、なので私が相談されたなら「思い過ごし」と一笑にふすと思います。しかし何かしら自分の中の並みでない点を思い、それが貧しさからではなかったかと思うのです。
私にもそんな「品のなさ」はないかと探すようにきっと3回も読んだ気がします。
主婦が離婚されると陥る貧困は本当に想像が簡単な気がします。それも杞憂でしょうか?
この話の後半のストーリーである美代子のしていることは私には絶対できません。
しかし、美代子の助言で藍がしたことはもし私に生活力のない祖母と母がいたら簡単にしてしまう気がしました。恐ろしいことです。
読み応えありすぎでした。貧困も怖いですが、人間の業みたいなものの恐ろしさがよく描かれています。