Q:3年間滞在の予定で8月に渡米したばかりです。先週から現地校に転入した小4の息子がいますが、とりあえずは機嫌よく通っています。しかし、これから実際の学習が始まると大変になり、現実に直面してストレスも出てくることと思います。また親としては、英語を習得し是非バイリンガルになってほしいと願っていますが、心構えとして、その習得過程や注意するべき点を教えてください。また日本語は続けるべきか否かなど教えてください。(イリノイ州、母)
A:現地校が始まると、最初は新しい環境や楽しそうなイベントなどに高揚感を感じますが、段々と現実的な葛藤が生まれて来るのが一般的です。実際最初の1年は言葉もほとんどわからず学習もきちんと頭に入らないことが多く、日本語で全て理解できていた子供にとっては、想像以上の苦痛となりえます。おっしゃるとおり、ストレスが溜まりに溜まり、ある日突然大泣きを始めて止まらない、というケースもよく聞きます。また「わからないことに馴れ、平気になる」といった態度も多々見られます。これは開き直ることによる、本人なりの精神的防衛なのかもしれません。いずれにしても、学習面、精神面共に家庭でのサポートはかなり重要だと念頭に置いてください。
さて英語の習得過程に関してですが、米国のESL/バイリンガル教育では一般的に2段階に区別しています。第一の段階はBICS(Basic Interpersonal Communication
Skills)と呼ばれ、これは子供達が遊びや生活の中から学んでいく、いわゆる「生活言語」で、約2年が習得の目安とされています。
これに対して第2段階はCALP(Cognitive Academic Language Proficiency) =「学習言語」と呼ばれ、学年相当の学習をこなすための基礎言語力、すなわち思考、読み書きができるレベルです。これに到達して、やっとネイティブ並みに主流に入るわけですが、これには実際5年から7年を要するとまで言われています。ですので、親としては、子供がペラペラしゃべれるようになったからといって、アカデミックな内容も全て理解していると勘違いしないようにしましょう。
ただこれらはあくまでも目安であり、子供それぞれの能力や性格、環境によってその期間もまちまちです。中には極まれに1年でESLのクラスを抜け、会話も読み書きもみるみる習得したり、飛び級した子供もいましたが、そのような子はもともと言語能力や学習能力が高いものと思われます。ここで親が注意したいのは、他の子供と比べてはいけないということです。息子さんの場合3年滞在予定ですので、一般的にはようやく流暢な会話力を身につけたところで帰国、ということになるかもしれません。
最後に日本語学習についてですが、 母国語を伸ばすとより思考力がつき、そのため第2言語も伸びるという説があります。また最近の研究では、バイリンガルで育った人は、モノリンガルよりも、多くの違ったコンセプトに触れて、考え方や視野も広いという結果を報告しています。実際子供は英語を覚えるよりも何倍も早く日本語(特に読み書き)を忘れますので、せめて家庭での読書などは続けたいものです。


