元海自幹部のオオカミ少佐による「先任伍長」の解説。
自衛隊には幹部・曹・士と階級が分かれている。
旧軍でいう下士官に相当するのが「曹」、兵は「士」。
下士官兵を「曹士」と纏めて呼びますが、その海曹士を纏めるのが「先任伍長」という制度が海自にはある。
ちなみに旧陸軍の階級に「伍長」という兵長の上、軍曹の下にある階級とは別なので間違えないようにね。
先任伍長とは、「部隊等の長により指定を受け、当該部隊等の海曹士を統括し、部隊等の長を補佐する者をいう。」と定義されている。
各部隊指揮官から指定を受けて活動する先任伍長は、全国で約320名となっている。
先任伍長の任務は、
1 規律及び風紀の維持をはじめとする海曹士の服務の指導
2 部隊等の団結の強化
3 海曹士の士気の高揚等に係る活動の推進
4 1~3に係る事項についての各部隊等間における情報交換の推進
5 海曹士の人事業務に関する助言
と定められている。
各先任伍長は、時には規律及び風紀の維持のため、いわゆる「鬼軍曹」のように口うるさく、また時には海曹士に寄り添う「良き兄貴分」として、部隊の士気向上を図るとともに団結の強化に努めている。
これらの実現には、海曹士の認識の統一が必要であり、そのため、「先任伍長ネットワーク」と呼ぶ先任伍長間での情報交換の枠組みを重視している。
縦の関係である指揮系統と、横の関係である「先任伍長ネットワーク」を活かすことで、より早くより深い情報共有が可能となり、一丸となって任務に臨む態勢とすることができるようになる。
海上自衛隊における「先任伍長」は、旧日本海軍の「先任伍長」の役割を復活させたものです。
つまり階級ではなく、「役名」というわけです。
そして「先任伍長」は、「先任海曹」たちのなかで最古参の隊員であり、つまり艦長と同じく、1艦につきひとりしかいません。
海上自衛隊の規定ではその役割について、規律および風紀の維持や、海曹士の総括、隊内の団結強化などとしています。
要はベテランとして艦内の曹士全員をまとめ上げ、幹部の補佐をし、護衛艦の運用に支障をきたさないよう目を光らせるのが仕事です。