市川昭介さん一周忌…都はるみが追悼
肝不全のため亡くなった作曲家・市川昭介さん(享年73)の一周忌にあたる26日、愛弟子の歌手・都はるみ(59)が東京・東京国際フォーラムで「市川昭介メモリアルコンサート」を開催、涙の熱唱で恩師を追悼した。ステージではこの日に発売された遺作「蛍の宿」(詞・吉岡治)を初披露。「本当にありがとうございました」と声を振り絞った。
ずっとこらえてきた涙が、ほおを何度も伝った。5000人のファンが見守ったステージのラスト。市川さんとの最後の思い出が詰まった「蛍の宿」を泣きながら歌い終えると「情けない、泣いたら(市川先生に)怒られるから、絶対に泣くまいと思っていたのに。40何年も歌い手やっているのに、本当に情けない」。自嘲(じちょう)気味に吐き出し、はるみは「ハア!」と大きくため息をついた。
ピアノの前で優しい笑顔を浮かべる市川さんの遺影がステージ後方につるされ、その遺影に向かって祈るように頭を下げて、ステージは始まった。客席には寿子(かずこ)夫人(66)、長女の美歩さん(33)長男の昭太さん(32)ら遺族もつめかけた。43年に及んだ師弟関係の始まりとなる「アンコ椿は恋の花」から、8曲のメドレーを含む全28曲すべてが「市川作品」という異例のステージ。「歌いたい歌がありすぎて、本当に選曲は悩みました」と振り返った。
「先生が亡くなった朝5時が気になって6時半まで眠れなかった」と明かしたはるみ。一曲一曲、師匠との思い出を語りながら「市川メロディー」を歌い上げていく。「私って孫悟空のようにずっと先生の手のひらの上だったんだな。困ったときはいつも、先生に助けてもらったんだな、と思って1年が過ぎました」。何度となく舞台上手の方をチラチラと眺めた。いるはずのない師匠の姿を探しながら万感の思いを歌に込めた。
今月20日に神奈川県川崎市の霊園で営まれた納骨式にも参列。「これからが新しいはるみのスタートなんだ」。墓前で誓って臨んだ区切りのステージ。プロの意地を見せるつもりが不覚の涙だった。それでもラスト曲「好きになった人」では飛び切りの笑顔でステージを動き回りながらの熱唱で締めくくった。