認知症(3)
親父は私の大学進学と老後に備えてアパートを建てた。小さな敷地の小さなアパートだった。昭和37年のことである。
日本が高度成長経済を迎えて、人々の暮らしが豊かになると、アパートの質も向上して、空き家になってしまった。
私は、アパートを改造して地域のお年寄りが一日TVを見たり茶飲み話しをしたり出来る集会所にしたいと考えた時期もあった。
お年寄りが、それぞれの家族の中で「個」として存在する寂しさを何とかしたいと思ったのである。若いころの夢想だった。
ところが、今は「デイサービス」というのがあって、そこはまさにお年寄りの「幼稚園」。専門のスタッフが「カリキュラム」にそって専門的なケアを行っている。単に茶飲み話しだけではない世界がそこにある。
私はお袋が「認知症」になるまで、そういう施設があることすら知らなかった。勉強不足もはなはだしいが、実は行政側のPR不足もあると思う。
この施設は「介護」の認定を受けなくても「有料」で利用できるという。
だったら、私はお袋が健全なうちから通わせておけばよかったと後悔している。
喋る、歌う、運動、手作業…こうした刺激と、デイサービスへ行くことが楽しみとなる刺激が認知症の予防になると私は思う。認知症だけでなく健康面で効果があるだろう。
そこで、そういうことをご存じない方々へのPRを兼ねて、この原稿を書いている。
私が居住する千葉県印西市でもボランティアによるお年寄りの「ケア」が行われている。「すずかけ茶話会へのお誘い」というチラシが届いた。妻の話によると月1回行われているという。すばらしい活動かもしれないけれど月1回は、お年寄りにとって少なすぎる。結局、経費的な負担はあってもデイサービスを利用するほうが有効であり、お年寄りのためにもそのほうが良いというのが私の考えです。(母の例を反省して)
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お袋は時々記憶が飛ぶ。その時は「頭の中がモヤモヤして気持ちが悪い」という。
ところが、記憶がハッキリしているときは「頭の中がスッキリ」しているらしい。
前回書いたように、大きな刺激(外出したりドライブなど乗り物に乗ったりする)を与えると「頭の中がスッキリ」するらしい。要は「楽しかった」ということが有効なのだと思うが、このことを医師に質問したら「気のせいだ」の一言。
そういえば、通院しているといっても、ただ薬をもらってくるだけで、具体的な症状の聴取はない。「認知症はクスリで進行を遅らせるだけ」しか治療法がないらしい。
頭の中の「もやもや」「スッキリ」といった体験など医師は「認知症」になったことがないのだから分からないのは当然なのかもしれない。しかし、一方で医療とは何だ、と思わざるを得ない。
最近よく「患者側に立った医療」といわれるが、医療も変わらなければいけないのだろう。高齢化社会に向かって、認知症高齢者の数が増加する傾向にあるそうです。そして社会改全体が、この問題を大きくとらえて動きだしていることを、母を通じて知りました。、 予防!予防!予防!…。認知症の予防は高齢者自身の自覚も必要だが、家族や自治体など社会が、高齢者を受け入れる体制作りも大切である。そして付加として「還元水」が大切な事はいうまでもないことです。