認知症(2)
我がお袋の「認知症」についての続編である。
一応介護の認定を受けて「ケアーセンター」と契約して、「デイサービス」を受けている。介護を受けるようになって、私とお袋は「社会」に大変感謝している。
かつて、東京海上の保険に「介護」を受けられるものがあった。当時、介護保険がスタートしたばかりの世の中だったので、個人主義が浸透した日本の社会で、果たして「介護の仕事」につく人たちがいるのだろうか、という素朴の疑問を抱いてた。
保険は介護が必要になったときに保険金がおりるのはもちろん「介護施設」も斡旋、紹介するというものであった。でも、被保険者にそういう状況が発生したとき、果たしてそれを保証できるのか? 冗談に「東京海上のOL」を派遣しなければならなくなるんじゃないの?と皆で笑いあったことを覚えている。
ところが実際に「介護」を受ける身になって、今では介護の仕事に携わる人々に、本当に頭の下がる思いと感謝の気持ちで一杯です。
お袋は90歳。一人暮らし。しかも「認知症」。でも物理的には私が面倒を見に行かなくても、食事を含めて、お袋は一人で生きていける。
精神的なケアは「デイサービス」でフォローできる。これって凄いことです。
だから、ご家族に介護が必要なお年寄りがいるご家庭でもケアサービに任せっきりというケースもあるかもしれない。
でも、本当に大切なのはサービスを受けられる時間と、受けられない時間の隙間をどうご家族がフォローするかが、大切なのだということも分かってきました。
私は、以前にも書きましたが、お袋とデートして山の手線を一周したり、都電に乗ったり、外食したりします。大きな刺激を与えると、脳の働きが蘇って、記憶も蘇る。
家の中で茶飲み話しをしているのとは違う結果が出る。
アルツハイマーや認知症の原因も「活性酸素」と言われています。抗酸化物質によってそれが防げると健康食品の宣伝もあります。還元水もそのひとつですから、私はお袋の件はハッキリ言ってショックでした。
しかし、お袋の面倒を見ながら、アルツハイマーや認知症の原因は、確かに「活性酸素」が関与しているかもしれないけれど、それは誘因であって、高齢者の場合「生きる楽しみ」「生きがい」が大切なのだということです。日常の生活の中に刺激が有るか否かです。
そこが「アルツハイマーや認知症」になるかどうかの分かれ目だと思います。昔の日本は「家」が中心で、大家族でしたから、お年寄りは孫の面倒をみたり、日常生活の中に刺激があって「ボケ」てる暇はなかったのかもしれません。それが今では「核家族化」でお年寄りの一人暮らしが多くなりました。話す相手もいなければ「ボケ」るのは当たり前、お袋の場合は近所の「水飲話友達」のお年寄りが居なくなってしまった。今から思えばこのことに気がつかなかったことが私の「失敗」。
病院で「認知症」と診断されてからは、介護を受ける前は公園に行かせるようにしていた。公園に行けば誰かがいて話が出来る。話をすることによって脳が働く。
ところが、公園に行ってもお年寄りが少なくなってしまって、一人で景色を眺めいることが多いようだった。今から考えてみれば、デイサービスに通っているか、あるいは家の中に引きこもっているお年寄りが多かったということだ。
お袋と電車に乗っても、喫茶店に入っても、町の食堂に入っても、お年寄りの姿がない。お袋を連れて散歩がてらケアセンターに行くと、担当の方がビックリする。
私のように面倒を見る例はごく少ないらしい。
お袋は「認知症」だから記憶の症状が安定しない。デイサービスに行った日に「電話」で様子を聞くと、ハッキリとした記憶に残っていない。
ところが「ケアセンター」に遊びに行って、担当の方から様子を聞かれると、事細かに説明している。「今、こうして話をしていても、光景が目に浮かびますよ」と言う。
私と話すのは身内だから、大した刺激が無いのかもしれないが、担当の方は他人だから、お袋も緊張し、鮮明に記憶が蘇るらしい。
「デイサービス」の様子を事細かに質問すると、だんだんと詳しく説明を始める。
お年寄りの中には、一日中口をきかない人もいるとか、運動をしても「皆、自分より体が動かない」とか…私より若いのに、皆私より元気がないから、皆と話をするとはき80歳といっているんだよ、という。つまり、自分が90歳だと相手の方が知ったらショックだろうから、と考えているらしいのだ。
塗り絵をしたり体操をしたり歌をうたったりとリバビリのためのカリキュラムがあるのですが、反応しないお年寄りもいるなか、お袋は何でもこなしてしまうので「提橋さん、提橋さん」と人気があるらしい。
お袋と外出するときも私は手を貸さない。自分で歩かせる。結局、そう出来るのも(認知症は別にして)、電解還元水による「老化防止」の効果である。明らかに周りのお年寄りより元気である。ケアセンターの方々もそれを認めて下さっている。
本人も「若いころは体が弱かったのに、歳をとればとるほど健康になったけど、不思議だねえ。水のせいかねえ」とつぶやいている。
若いうちは、勢いで健康を乗り超えられる。しかし、高齢になれば、明らかに「健康面のケアの差」が現れる。結果、ご近所にお袋の年代のお年寄りがいなくなってしまった。
「デイサービス」でも周りの方10歳くらい若い。なのに精神的、体力的にはお袋の方が勝っている。あとは、世間がアッと驚く逆転満塁ホームランが出るかどうか…だ。その可能性に挑んでいる。