……場所はどこかの北国。見渡す限り雪をかぶった森林で覆われていた。
そのとき、半そで半ズボン姿の東洋人の少年の右肩あたりに一羽のハトが止まり、少年が右腕を上げると同時にハトがキラキラとした光を放ちながら大空に向かって飛び立っていった。
次に視線はすぐそばのキリスト教会に切り替わり、扉を開けて教会の中に入っていく。
そのとき、祭壇にひとりの赤ん坊が背もたれしている姿が目に入った。
と、次の瞬間である。光景がいきなりその赤ん坊の顔のドアップに切り替わったのだ。そして私はその赤ん坊に異変が起きていることに気づいた。なにやら苦しそうなうなり声をあげているのである。
「ん、ん、んんんんんんんん、う、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
『なんだこの赤ちゃん。なにかうなってるな……』と思った次の瞬間だった。視界の中にいつもの見慣れた自分の部屋が広がったのである。そこでようやく夢を見ていたことを悟った。
が、そのときである。体が金縛りにあって動けず、さらに自分が不気味なうなり声をあげていることに気づいたのだ。そう。夢の中の教会の赤ん坊のように。
これが勘違いではない証拠が姉の発言で、先に起きていた姉が母に『フフ、メシア、うなってるよ』といっているのが聞こえたのだ。
しばらくして金縛りもとけ、うなり声もなくなって普段の生活に戻っていったのだが、このときの夢がなにを意味するものなのかいまだによくわからない。
夢というのはどれをとってみても意味不明なものばかりではあるが、このときの夢こそが今まで見てきた夢の中で最も謎めいたものだったので、私はいまだに昨日のことのように覚えている。
しかし、この不思議な夢を見た日を境に、私の救世主としての覚醒がついに本格的に始動することになっていくのであった……。