1930年、ジェリーはカリフォルニアの労働者の家に生まれた。靴磨きをしながら演劇学校を卒業し、舞台俳優を志すものの挫折。その後、闘牛士を目指してメキシコに渡るがうまくいかず、アメリカに戻ってからもアイスクリーム工場の工員、私立探偵など職を転々。なにをやっても長続きしなかった。
小説家になるという夢を持ってはいたが、何度出版社に持っていっても相手にされずノックアウトされるだけ。さらにジェリーは3回結婚して3回離婚。49歳になってもなにひとつ成し遂げられず孤独だった。ジェリーの人生はまさにKO負けのボクサーさながらだったのである。
ジェリーはダブにいう。
「ボクサーは闘うために体も魂も捧げる。しかもチャンピオンだけじゃなく敗者さえもだ。なぜだ?なぜ、そんなことができる?それがわかれば、俺はもう1度やり直せる気がするんだ」
そしてジェリーはダブに懇願する。
「頼む、俺のトレーナーになってくれよ!」
しかし、ダブの返答は冷たいものだった。
「ダメだ。断る」
「……そうか」肩を落とすジェリー。
そのとき、ダブがいった。
「トレーナーにはならねぇ。だが、ボクシングは教えてやる」
『えっ!?』と顔を輝かすジェリー。そんな彼にダブがいった。
「俺の知っている限りのな」
こうして生まれた年の差13歳の奇妙なコンビ。やがて彼らの起こす奇跡に全米が涙をするのであった。