それからもキム・ヨンヒは3つの仕事をかけもちしながら働き続け、ついに3LDKの家を購入した。
新しい家の中にわくわくした様子で入るハインズ・ウォード。キム・ヨンヒはいう。
「自分に誇りを持つのよ」
それからハインズ・ウォードはチームの主力選手として活躍。プロチームのスカウトからも注目されるようになり、ドラフトで上位指名されることが予想された。
が━━ピッツバーグ・スティーラーズに入団はきまったものの指名順位は3順目、全体の92番目という予想外の下位指名だったのである。
結局、ハインズ・ウォードのプロ1年目は1度も先発の起用はなかった。しかしハインズ・ウォードは錆びることなく、ほかの選手の倍の練習をこなした。そんな彼の脳裏には常に人の何倍も働き、自分を育ててくれた母がいた。そしてハインズ・ウォードはようやくワイドレシーバーとして試合に起用されるようになっていった。
しかし、ある日のロッカールームでのことだった……。
中に入るとチームメイトからの罵声がハインズ・ウォードを待ち受けていた。
「調子にのんなよ!」
「優秀なクォーターバックがいなけりゃ、おまえはなんの役にも立たないさ」
「そういうことだ。混血児!」
チーム内で孤立していたハインズ・ウォードだったが、彼はこのあと意外な行動に出る……。