孤児院でセイシちゃんと出会い、養子にむかえることをきめたマーチン夫妻。しかし孤児院の担当者からセイシちゃんのそばに置かれていた手紙を渡されたものの、それ以上の情報を得ることはできなかった……。
アメリカでは海外の孤児を様子にすることが日本より遥かに多い。特に中国からの養子が最も多く、年間8000人もの孤児がアメリカに養子としてもらわれているという。
こうした背景や知り合いに中国人がいたことなどから、セイシちゃんは自分の顔が周囲とちがうことにショックを受けることはなかったらしい。ちなみに養子であることはすでにマーチン夫妻は伝えており、セイシちゃんもそのことを受け止めているという。ただ、生みの親や捨てられたことについてはまだ触れていない。それ以上の真実はセイシちゃんが成人をむかえてから伝えようと考えていた。
2005年━━セイシちゃんは『パパ、ママ、行ってきます!』といって遊びに出かける。その姿を見送るマーチン夫妻。
「本当にいい子に育ってくれたな」
そんな夫にマーチン夫人がややため息まじりにいう。
「でももうすぐ七夕ね。あの手紙にあった10年目の……」
「ああ、約束は守ろう。生みの親も心配しているだろう。俺が元気な様子を伝えてくるさ」
セイシちゃんを会わせる気はなかったが、せめて無事を伝えて生みの親の心を楽にしてあげたい━━しかし仕事の都合で行けなくなり、やむをえずゴ・ガクホウに託したのだが……。
人が家路につき出した夕暮れどきの約束場所の広場。ゴ・ガクホウは沈痛な表情でマーチン夫にケータイをかける。
「マーチンさん、本当に申しわけありません。私のミスで両親をしっかり探すことができませんでした」
「どういうことです?」聞き返すマーチン夫。
「待ち合わせの時間に遅れてしまって……」
深くため息をつきながら肩を落とすマーチン夫……。
セイシちゃんの無事を生みの両親に伝えたい。しかしその願いはかなうことはなかった。
が━━おりしもこの日は年に1度の七夕。テレビ局の協力によって事態は思わぬ展開を見せるのであった。