「あのまま猫と暮らしてた人生と、いまの人生、どっちが幸せだと思う?」
「今の方が幸せだと思うけどなぁ。比べるものでもないと思うけど」

「でも、あの時、運命が私によって変わったものだから。
…私、最低な考えしてるんだけどさ。
あの時、…猫がパニクって廊下に出ちゃった時、私もパニクったけど、
もしあの時、玄関の扉を開けていれば、って、今でも後悔してる。
そしたらお義母さんとも、こうはならなかったのに」

彼は少し間を空けて言う。
「…あの時玄関の扉を開けられてたら、息子にも会えなかったかもな。自分の状況も、猫が居なくなって、どうなるかは分からないし」


「数年経ったことを今でも後悔してるってことは、それが本当の自分なんだと思う。
だから、あなたが幻滅しても、これがホントの自分で、これから一生を共にしようとする人間なんだよ」

「…でも俺は、あの時玄関を開けなかったななみちゃんも、本当のななみちゃんだと思うよ」

…めっちゃ泣いた。
まさかそんなこと言われると思ってなかった。
そんなこと考えもしなかった。
ずーーっと、後悔に苦しんできた。あの時どうして、猫を逃さなかったか。
午前4時、それが浄化された瞬間だった。