ずうっと、行きたかったのです。昨日、やっと行くことが出来ました。
「光と影の詩人」と称される影絵作家藤城清治さんの美術館が、今年、那須にオープンしました。
4月26日開館の予定が、直前に藤城さんの入院と言う事態で、最後の作品完成が間に合わず、
とりあえず、下絵のままの展示でプレオープン。
いよいよ作品が完成して、6月15日にグランドオープンとなりました。
「僕の美術館は、生きている美術館。今を呼吸している美術館を作りたい。」
と、先生ご自身が仰っているとおり、
見る人を楽しませ、喜ばせ、おもしろがらせ、考えさせ・・・・そして、もう一度来てみたいと思わせる!
感動と驚きがいっぱいの美しい美術館でした。
ここは、美術館のゲート。
お馴染み猫や小人のシルエットのオブジェが4つ、私をお出迎え。
コンクリートの壁の上に並んでいるのが見えるでしょうか?
この壁に続く長屋門をくぐり抜けると、目の前に広がるのは小川が流れる雑木林。
広葉樹や山草が彩る散策路の奥に美術館が佇んでいるのです。
もうこれだけでワクワクのシチュエイションでしょう~♪♪~
かつてここは、「ニキ美術館」でした。
(私が大好きだった女流前衛芸術家ニキの美術館。2年前に閉鎖になりました。)
その建物を生かして清治ワールドが再生されたのです。
まず目に入ってきたのは、 小さなチャペル。
『・・・・美術館の敷地の林の中に小さな教会も建てた。
そこは、ぼくのデザインした12個のステンドグラスをつけた。
ステンドグラスは太陽の光を通す、光と影の原点で、
ぼくの長年の夢だったから、
はじめて自分のデザインしたステンドグラスが出来て
こんなうれしいことはない。
ここで結婚式もできるようになっている。』 (図録より)
入り口上の天使がモチーフのステンドグラス
祭壇に向かって両側の壁には、人魚やペガサスがモチーフのステンドグラス(一部)
そして、祭壇上のステンドグラス
「ノアの方舟」がモチーフです。
小川のせせらぎに耳を傾けながら橋を渡り、心地よく茂る雑木林の散策路に沿って歩を進め、
いよいよ美術館の中へ。
展示室に入ると、初期のモノクロ作品から影絵の世界が始まりました。
続いて色鮮やかなカラーのメルヘンの影絵の世界へ。
『暮らしの手帖』の表紙絵、NHK『みんな歌』や、『木馬座アワー』、『ケロヨン』・・・・
懐かしく美しい清治ワールドをうっとり堪能。
ミニシアターも楽しかった!
ミニ影絵劇 『地球は回る 夢は生まれる回り舞台』
スクリーンで影絵劇を楽しんだ後、先へ進むと、
スクリーンの裏側が、投影のハイテクな仕組みが、そっくり見られるのです!
展示作品に添えられた先生直筆の作品解説や思い出を綴る文も楽しくて。
89歳の先生が、「ぼく」という言葉でご自分を示されるのも、失礼ながら微笑ましくて・・・・。
突如、微笑んでいるであろう私の顔の筋肉がこわばりました。引きつりました。
同時に涙と新たな感動の波が押し寄せました。
影絵で表現された3.11被災地の光景!
(MOE8月号綴じ込みのポストカードより転載)
月間MOE8月号
陸前高田の奇跡の1本松、七ヶ浜町被災地、閑上被災地、南三陸町防災対策庁舎、
海から800mも離れた気仙沼市街地に津波で打ち上げられた共徳丸・・・・・・・・・・
TVで、新聞で、雑誌で・・・・・・何回も何回も目にしてきたお馴染みの被災地の光景。
なのに、
リアルに影絵で表現されたこれらの光景から、新たな苦悩と衝撃と感動が私を襲ったのです。
『東日本の大震災のあと、被災地を・・・・・・・・・・・・・腰を落ち着けてデッサンするのは・・・・直接
役立つわけではないと自重していた。けれど、・・・・日本を根底からゆり動かし、地球やあらゆる
生命をおびやかす事態が起こっているときに、地球を愛し、生きる喜びを訴えて絵を描いている
ぼくが、ただ自重して傍観していいのだろうかと思うようになった。いま現在、地球上に自分が、
生きているならば自分なりに何をするべきか考えて、積極的に事態に飛び込んで行動すべきだと
思うようになった。そして、・・・・・・・被災地をまわりデッサンした。いたる所にがれきの山がある。
そのがれき一つ一つの中に無限の情念がつめこまれている。
がれきの中に再生のすばらしい力と希望が見えてきた。』
『被災地に残された風景の中には、ただただ美しい風景以上の無限の美しさがあるように思う。
震災の現実を描くことによって、多くの人々が災害を乗り越え、未来への希望を大感じるような
絵を描いていくことがぼくの使命だと思っている。』
『がれきは宝石より美しい 僕は被災地を描く』 (以上、図録より書き写す)
深い思いに突き動かされるように
88歳という御年にして、雪や雨が降る東北地方をデッサンして回られたと・・・・・・・。
先生のその思い全てが、鎮魂が、未来への願いが、影絵の中で情念となって、私を襲ったのです!
再生の願いを託した 幅6mに及ぶという大作 『魔法の森に燃える再生の炎』 が、
展示室最後の作品でした。4月26日オープンに間に合わなかった作品です。
水面と鏡とに映り、どれが本当の作品でどれが虚像なのか・・・・
いくつにもいくつにも重なり合って、延々と広がっていく再生の炎。
先生の強い願いが託された再生の炎!
作品の一部が、図録の表紙になっていますが、
この作品の感動は、皆さんの目で直接見て、感じていただきたい! マウスパッドを来館の記念に。。。。