この先、復路に「東京湾フェリー」を使うとすれば、金谷港17時20分出航の便には間に合うだろう。2時間に1本なので、この便一択にはなる。
 勿論、往路のようにアクアライン経由でも帰れるが、川崎浮島辺りで混みそうなこともあるし、何より距離はフェリー経由のほうが圧倒的に短い。

 金谷までは、国道127号に戻って富浦ICから館山道経由で富津金谷ICまで、というのが時間的には一番短いようだが、そこまで急ぐこともなかろう、と思い、県道302号をそのまま進んで、旧・富浦町の多々良から国道127号に入ることを選択。
 その多々良交差点のすぐ先にあったセブンイレブンで小休止。
 セブンイレブンのアプリには、「お店巡り」や「都道府県制覇」という機能があるので、気が向いた時には利用する。今回も「南房総富浦多々良店」という「記録」がアプリ上には残るのだが、惜しむらくは「番号系」ではないところか。

 (※ 実はセブンイレブンをはじめとするコンビニエンスストアもれっきとした「番号系」であることが判明するのだが、それに関してはまた後日)

 近くには内房線・富浦駅があり、南房総市役所もある。その近くにある05139:富浦郵便局は既訪だし、当時は「安房郡富浦町」だったが、現在は「南房総市」なので妙味に欠けるから、ATM預入という選択肢は浮かんでこなかった。
 何度か触れたように、南房総市は、ほぼ旧・平群郡(平郡)と旧・朝夷郡で、館山市(ほぼ旧・安房郡)を取り囲むような形で富浦町、富山町、三芳村、白浜町、千倉町、丸山町、和田町という7町村の合併によって新設されているのだが、市役所は旧・富浦町役場を「当面」充てる、ということになったようだ。
 しかし、南房総市の「中心」とは言い難い位置にある。そもそも合併までは富浦町、富山町、三芳村は館山警察署、白浜町、千倉町、丸山町、和田町は千倉警察署の管轄だったのだが、合併の際に警察署も「統合」されて、現在は全て(安房郡として残った鋸南町も含めて)館山署が所轄している。
 感覚的には、富浦よりも千倉が中心にも思えるが、実際のところは「中心」も「重心」も、それこそ館山になっているようなものなのだろう。本来ならば、館山市も含めた大合併のほうが自然なのだろうが、各市町村の思惑が複雑に絡み合い、鋸南町も含めた8町村が館山市との合併に拒否感を持ち、鋸南町が千倉や白浜などまで含めた広域の合併に否定的な方針となったため、このような形で一応の「決着」となっている。
 合併の方向性としていくつか挙げられた候補の中には、安房鴨川市(旧・天津小湊町を含む)まで含めた広大なものもあったので、そこまで行ってしまうと、ほぼ完全に旧・安房国が一つの地方自治体となっていたことになる。個人的には、そこまでいってしまったほうが、新市名が「安房市」あたりですんなり決まっていたんじゃないか、とも思ってしまう。
 「南房総市」とはいうものの、そもそも「房総」は「安房+上総」なのだろうから、「安房」から出ておらず「『総』はどこから来たの?」という感じもする。房総半島の南半分くらいを占めるならともかく、1割程度の「先っぽ」のしかも「館山市を除く」なのだ。

 国道127号を北上し続けて、旧・富山町から鋸南町に戻って来た。朝方にも出たり入ったりした所を再び通ることになる。
 改めて岩井局や保田局の局舎を眺め、安房勝山駅もちらりと見えたが、立ち寄るまではしていない。安房勝山駅に立ち寄っていれば、現在新駅舎兼「安房勝山駅郵便局」の局舎になる建物が建設中の筈で、それを見ることもできたのだろうが、かなり日が傾いてきたので、写真を撮ってもなあ……と、割愛してしまった。

 保田を過ぎて暫く進むと、富津市に入る。
 安房国から上総国に入ったことにもなる。

 その境界にあるトンネルの手前から「鋸山登山自動車道」という有料道路が分岐している。上総と安房の境にもなっている「鋸山」の山頂付近まで登ることができるのだが、通過する山麓が全て私有地らしく、全線が「私道」という珍しい有料道路だ。
 中腹の「日本寺」にも行くことができるが、既に開門時間は終わっている。
 富津市に入って暫くすると、その鋸山に富津市(上総)側から登ることができるロープウェイ乗場へと誘う看板も出ている。しかし、16時半を過ぎているので、流石にこれから登る気はしないし、どうやら冬季は16時までしか運行していないらしい。更に、後で判ったのだが、どうやら1月9日から2月9日まで「定期設備点検」のために「運休」していたようだ。

 そのすぐ先が内房線・浜金谷駅への入口で、その近くには05114:金谷局もあるのだが、当然ながら既訪だし、貯金窓口の時間外に寄っていくほどのメリットもない。
 程なく、フェリー乗場への入口交差点に差し掛かり、乗船待ちの車列に並ぶ。一列当たり乗用車で10台ほどが並べるのだが、2列目の5~6台目になったから、15番目前後か。乗用車なら100台ほどは積める、と聞いているので、余裕で17時20分出航便には乗れそうだ。

 既に陽は落ちているが、まだ仄かに明るく、海を挟んで三浦半島、更にその向こうに富士山のシルエットも見える。


 しかし、雪まで降ったほどなので空気は冷たく、更に風もかなり強いから、あまり長く屋外にいるのは辛そうだ。

 フェリーターミナルに入り、乗船券を買う。


 車両を伴わない「徒歩乗船」の場合には、券売機での購入になるのだが、今回は車両ありなので窓口での購入になる。
 以前は、車両の「長さ」で料金が異なっていたように記憶しているのだが、軽自動車こそ若干安い(3,500円)ものの、普通車は6mまで同額(4,400円)だった。現在の自家用1号車は4mを切っているので、ちょっとは安いかな、と思っていたのだが(かつてここを含めてフェリーで航送した車は、全て4m以上5m未満だった)。
 この航送運賃には運転手1人分の運賃が含まれているのだが、JAF会員証の提示で1割引になり、3,960円と4千円を切ったから、まあいいか。

 時間は多少あるので、ターミナルビル内で若干の「土産」調達をする。
 もし、高速に上がってそのままアクアラインなり東関道+湾岸線なりで走り続けていたら、そんなことを考えなかったかも知れない。そういう意味では、帰りだけでもフェリーにしたのは意味があったかも。尤も、復路も海ほたるPAにでも寄っていたら、結局同じことだったかも知れないが。

 乗船が始まり、係の誘導に従って順番に船内へ。
 この東京湾フェリーでは、金谷港発便では船尾から乗り久里浜港では船首から出るのだが、久里浜港発便だと船首から乗って金谷港で船尾から出ることになる。


 そのため久里浜港では、そのまま船首から岸壁に突っ込めばいいのだが、金谷港に入港する際は、港内で180度回頭して船尾から接岸する必要がある。
 それほど広くはない金谷港で、長さ80m近くある船体を巧みに回頭させ数分で接岸するというのはなかなか高度な操舵テクニックが必要だと思われ、金谷港で入港の様子を見ていると、その手際の良さはまさに「神業」と言って良いと思う。
 具体的には、入港時に岸壁に対して若干の「取舵」で入り、適切な距離まで入ったら面舵一杯で後進に切り替え、スターボードサイド(右舷側)を「軸」側にして船尾を車両岸壁に、ポートサイド(左舷側)をターミナルビルからの徒歩乗船岸壁にピタリと着ける、という感じになる。
 それでいて、上下とも40分で運航し、20分で折り返すことで2時間ヘッドのダイヤをこなしているから、その「回頭に要する時間」は、ほぼ「誤差」程度しかないことになる。

 車両甲板は、航行中立入禁止なので、指定された場所に車を止めたら、階段で旅客甲板へと上がることになる。同乗者も原則は車で乗り込んで、運転手と一緒に移動することになるが、そもそも運賃は別に払う必要があるから、徒歩乗船の客として乗り込むこともできなくはない。


 旅客甲板は2層になっていて、上部甲板のほうが広い。また、前方の窓が、下部甲板では(夜間航海のためか)カーテンで閉ざされていたのに対し、上部甲板では開放されていたから、迷わす上部甲板に行った。尤もその分、車両甲板からは遠くなってしまうが。


 なお、更に上層の甲板には、操舵室後方に「グリーン室」が設けられている。定員は20名(大人)とされているが、料金3千円が「1人分」ではなく「ルームチャージ」になっているから、グループ旅行などでの利用だと割安に感じられそうだ。片道900円(往復1,600円)の航路なので、4人家族でも「倍額」まではいかないと思えば悪くないかも知れない。流石に一人で利用するのは憚られたから、今回は見てもいないが。

 季節柄か北風が相当に強いようで、出航後は結構揺れたが、まあ許容範囲ではあった。
 また、その北風をもろに受けるため、スターボードサイドの出入口は、航行中使用しないように、と船内アナウンスもされていた。


 久里浜港に着く頃には、すっかり暗くなってしまった。

 18時ちょうどに接岸。


 車両甲板への移動は接岸後に、ということだったので、それまで待ってから車に戻る。

 下船後、京急久里浜駅の南側で線路をくぐり、JRの久里浜駅から延びている引込線のような線路を(多分ほとんど閉まることのない)踏切で越えて、佐原ICから横浜横須賀道路に入り、帰途に就いた。

 結果として、往復で陸路と海路を使い分け、雪や雹にも見舞われたものの、道の駅で食事をしたり、と、多岐にわたる要素が絡み合ったテーリングになったと思う。
 テーリングそのものとしても、全て「新規」で19局とまずまずだったし、懸案だった移転改称予定の局は勿論、近々移転改称が予想される局も片付けられた。「ゆうちょラリー」では3ポイントになる鋸南町3局も完訪となり、それ以外にも「宝」の郵便局がちょこちょこあったりして、成果としては充分だろう。

 館山市中心部に4局残してしまったが、これは「移転改称後」の局を改めて訪問する時にくっつければ良いことだ。
 それ以外にも、鴨川市や勝浦市方面にはまだまだ未訪局が残っているので、今後、気長に片付けていこうかと思っている。

 (この項、了)