~3人の女性作曲家との出逢い~
まずは最初に申し述べる結果としまして、このアルバムは3人の女性作曲家がバトンをつなぐように曲を提供して頂き完成いたしました。それも皆さま、個性豊か。それぞれに異なったフィールドで活躍されております。
歌里涼さん、中川果林さん、Yuria Miyazonoさん。
こう記しておりますと、3人の方々と話をしておりました時の表情や会話が頭の中で蘇ってまいります。
それでは、お一人ずつ、順を追ってお話をいたしましょう。
始まりは「歌里涼」さん。このアルバムを作るきっかけとなった方です。井料瑠美さんより「歌里涼」さんとおっしゃるシンガーソングライターの方がいるのですが、ご存知ですか?と聞かれました際の驚きは今でも忘れません。
「歌里」さんという名字の珍しさの印象もあったのですが、今を振り返る事もう15年前でしょうか、実は1枚のアルバム制作でご一緒した事があったのです。
少しお話が逸れてしまいますが、私が歌里さんに最初にお会いしたきっかけは、笑い話のような出逢いでした。 下北沢に打合せに行った帰り、会社に戻る途中で手帳を無くしたことに気付いたのです。大判のシステム手帳。それを落とすなんて、何というドジだと自分を恨み、大切な情報を書き込んでいなかったか・・・ひと様にご迷惑をおかけしないだろうか・・・と思い返しながら落ち込んでおりました。
数日経った時、勤務先(東宝ミュージック)に電話がかかって参りました。
「手帳を拾いました、落とされていませんか?」と、その声の主が歌里さんだったのです。
手帳に名刺を入れていたおかげで、落とし主だとわかり、ご連絡をくださったとの事。
早速、お目にかかり、ご連絡をくださったお礼を申し上げながら、お話をしておりましたら、歌里さんが音楽活動をされていることを知り、どんな作品を作られているのか、デモを聞かせていただけないかと、お礼を忘れて音楽制作のお話に花が咲いた事を昨日のように覚えております。
さらに余談ですが、今でも、当時落とした手帳は私のカバンの中に入っております。
15年前にアルバム制作をしておりましたアーティストの方は、「今井清隆」さん。
歌里さんには、このアルバム制作にご参加頂きました。
今井清隆さんと言えば、井料瑠美さんの方が私よりご縁が深いのではないでしょうか。
劇団四季にいらした際は「オペラ座の怪人」のファントムとクリスティーヌ。東宝の「レ・ミゼラブル」でもジャン・バル・ジャンとファンテーヌ。
今井さんのアルバムに関わった方が、こうして時を経て井料さんのアルバムでご一緒するのは、何という巡りあわせなのでしょうか。
さて、お話を元に戻しましょう。余談が多すぎました。
歌里さんの世界観を一言で申しますと「ワールド」。
洋画がお好きなのは、存じておりましたが、当時より歌里さんが構成する音楽が持つ独特の世界観は、ただそれだけが要因では無いと思っておりました。そして現在、Facebookを始めSNSが発達した今、世界とつながるチャネルを見つけることは難しくないのだ・・・、と改めまして歌里さんとこの度ご一緒して感じた事です。
歌里さんが発信する音楽をキャッチし、戻してくださる方々。それがFacebookでのつながりで有りましても、いや、むしろ誰とでもつながる事ができるからこそ、世界中の音楽家の方々と言葉を越えて、交流されていらっしゃる。
歌里さんは、どんどんと、そうしたアンテナからキャッチした要素を取りこんで音楽を紡ぎだしていく。これこそが歌里さんの最大の魅力「ワールド」なのでしょう。
しかし、そこにひとつ、ちょっとした違和感が生じてきたのです。
それは何かと申しますと、歌里さんの世界が外に開かれ過ぎているという事だったのです。
歌里さんの持つ世界観のひとつ、壮大さとは真逆にあるものなのかも知れません。強いて申しますと、今回のアルバム「コノハナノサクヤヒメ」は古より現在(いま)に脈々とつながる日本固有の精神あるいはDNAをくみ取り、音として紡ぐ作業。儚さ、たおやかさと言った「=もののあわれ」にも通じる概念。
歌里さんは、素晴らしい感性をお持ちのアーティストでいらっしゃる事は間違いのない事実。
どうしたら、この精神世界の共有を計ることができるのか・・・。
それでは、この続きは次回にお話しいたしましょう。
サニワ(審神者)とは神託を受け、神意を解釈して伝える者。
この記事について
井料瑠美1stアルバム『コノハナノサクヤヒメ』
2015年11月3日発売
【文化家】にて好評発売中!
井料瑠美 『コノハナノサクヤヒメ』
価格:3,000円(税込)