フィリピン「児童ポルノ禁止法」通過を求める声
児童労働ネットワーク事務局から、フィリピンでの「児童ポルノ禁止法」通過に向け、日比NGOネットワークに協力の要請がありました。フィリピンの日本人新聞記者、矢野純一氏の働きかけであり、日本からも応援しないと法律がうやむやになる可能性があるとのことです。5月27日には、マニラで早期成立を求めてデモが行われ、約300人が参加しました。
フィリピンでは、子どもを性的な対象とした有害なDVDも氾濫しており、2007年にはおよそ30万の海賊版DVDがマニラ市内のいくつかの店から押収されました。児童ポルノは、少しの投資で莫大な利益を得ることができるため、フィリピンでは市場が拡大し、子どもたちが虐待の被害を受けています。
(日本ユニセフ協会HPよりhttp://www.unicef.or.jp/special/0705/cyberporn03_02.html)
以下、5月11日 毎日JP.に掲載された記事です。
児童ポルノ:フィリピン、規制審議 被害「最多国」汚名返上へ 単純所持も禁止に
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090511ddm012030079000c.html
<世の中ナビ NEWS NAVIGATOR 国際>
国際社会で児童ポルノ取り締まり策が論議を呼ぶ中、フィリピン下院(定数250
以内)は児童ポルノの単純所持やネット閲覧を禁じる厳格な児童ポルノ禁止法案審議
を進めている。法案には下院の過半数が賛成する見込みで、年内成立の可能性がある。
同国はネットや書籍・ビデオ販売などで流通する児童ポルノの発信源の一つ。その
「商品」に使われる被害児童の多さでは筆頭に挙げられる。児童ポルノ規制強化の動
きは、単純所持を禁止しない日本などにも影響を与えよう。【マニラ矢野純一】
法案は規制範囲として児童ポルノを写真やビデオに加え、性描写目的の漫画も含め
ている。販売目的の所持だけでなく、単純所持や意図的なネット閲覧やダウンロード
も禁じた。違反した場合は禁固6~12年。インターネットの接続業者(プロバイダ
ー)や、児童ポルノ関連のホームページ開設者も処罰対象になる。
フィリピンではこれまで児童ポルノを労働法や人身売買法の枠内で規制するだけで、
児童ポルノを定義して規制する単独の法律がなかった。そのため、未成年者を対象に
した売春容疑などでしか摘発できなかった。規制が緩いことから、各国の捜査機関は
児童ポルノをネット上に流す抜け穴の一つにフィリピンがなっていると指摘してきた。
日本の捜査当局がこれまでに押収した児童ポルノの画像の中には、比国内で撮影さ
れたものが多く含まれている。また、日本の児童ポルノの漫画が同国を発信源にネッ
ト上に流される例もある。
法案提出者の一人で下院・児童福祉委員会のテオドロ委員長は「貧困から親が子供
を児童ポルノのモデルに使って、その収入を生活費に充てているケースもある」と語
る。比国ネット上では、法案に対して「表現の自由を侵す」「捜査権の乱用につなが
る」との批判も飛び交っている。
テオドロ委員長は「表現の自由といっても子供の性を食い物にしていれば問題だ。
また、きちんと(児童ポルノに使おうとした)証拠を集めれば、(違法かどうか)判
断できる」と力説する。
世界各地で児童ポルノ問題に取り組む国際NGO「児童失踪(しっそう)・児童虐
待国際センター」(米バージニア州)は「フィリピンでこの法律が施行されるとアジ
ア地域で最も規制の厳しい国になり、喜ばしいことだ」と規制強化実現を期待してい
る。
◇「娘との生活のため」 日本の漫画、翻訳しネット販売
日本の児童ポルノ漫画を翻訳するフィリピン人女性は胸中を悲しげに話した。「生
活のためには仕方がない」。マニラ首都圏に住む20代の女性は周囲を気にしながら、
翻訳中のポルノ漫画を見せてくれた。未成年と分かる制服を着た少女や、小学校の校
庭を舞台にした絵が描き出されていた。
女性は児童ポルノなどをネット上で販売する会社で翻訳のアルバイトとして働いて
いる。「仕事を失いたくない」と匿名を条件に取材に応じた。
「日本の漫画に興味がある人」という求人をネット上で見つけ、応募した。給料は、
同国の公務員の平均月収とほぼ同じ月額約1万5000ペソ(約3万円)。小学生の
娘と2人暮らし。この収入だけが生活の支えだ。
日本の漫画は定期的に、マニラ首都圏にあるこの会社にメールで届いているという。
女性は週2回、出社して漫画の画像が入ったUSBメモリーを受け取り、自宅のパソ
コンで日本語のせりふ部分を英語に翻訳する。日本語はほとんど話せないが、ネット
の辞書機能を使っている。
同社の事務所では10人ほどがパソコンの画面でフィリピンや世界各国のポルノビ
デオやアニメの編集や翻訳をしている。編集した映像や、女性が翻訳した漫画は、ネッ
ト上で世界中に販売されているという。欧米など世界中に顧客がいる。事務所は24
時間稼働。「人件費が安いし、規制がないから、この国にこんな会社があるのだと思
う」と女性は説明する。
「初めてこのような漫画を見たときには、あまりのひどさに頭が混乱した」という。
自宅で作業中のパソコンの画面を娘が見たこともある。それ以降、二度とパソコンに
は近寄らないように言いつけている。今は何も感覚がなく、淡々と訳すだけだという。
「子供を扱ったものは規制すべきだと思う。こんな仕事をしていて罪の意識はある
けど……」。別れ際に彼女は力なく話した。
フィリピンでは、子どもを性的な対象とした有害なDVDも氾濫しており、2007年にはおよそ30万の海賊版DVDがマニラ市内のいくつかの店から押収されました。児童ポルノは、少しの投資で莫大な利益を得ることができるため、フィリピンでは市場が拡大し、子どもたちが虐待の被害を受けています。
(日本ユニセフ協会HPよりhttp://www.unicef.or.jp/special/0705/cyberporn03_02.html)
以下、5月11日 毎日JP.に掲載された記事です。
児童ポルノ:フィリピン、規制審議 被害「最多国」汚名返上へ 単純所持も禁止に
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090511ddm012030079000c.html
<世の中ナビ NEWS NAVIGATOR 国際>
国際社会で児童ポルノ取り締まり策が論議を呼ぶ中、フィリピン下院(定数250
以内)は児童ポルノの単純所持やネット閲覧を禁じる厳格な児童ポルノ禁止法案審議
を進めている。法案には下院の過半数が賛成する見込みで、年内成立の可能性がある。
同国はネットや書籍・ビデオ販売などで流通する児童ポルノの発信源の一つ。その
「商品」に使われる被害児童の多さでは筆頭に挙げられる。児童ポルノ規制強化の動
きは、単純所持を禁止しない日本などにも影響を与えよう。【マニラ矢野純一】
法案は規制範囲として児童ポルノを写真やビデオに加え、性描写目的の漫画も含め
ている。販売目的の所持だけでなく、単純所持や意図的なネット閲覧やダウンロード
も禁じた。違反した場合は禁固6~12年。インターネットの接続業者(プロバイダ
ー)や、児童ポルノ関連のホームページ開設者も処罰対象になる。
フィリピンではこれまで児童ポルノを労働法や人身売買法の枠内で規制するだけで、
児童ポルノを定義して規制する単独の法律がなかった。そのため、未成年者を対象に
した売春容疑などでしか摘発できなかった。規制が緩いことから、各国の捜査機関は
児童ポルノをネット上に流す抜け穴の一つにフィリピンがなっていると指摘してきた。
日本の捜査当局がこれまでに押収した児童ポルノの画像の中には、比国内で撮影さ
れたものが多く含まれている。また、日本の児童ポルノの漫画が同国を発信源にネッ
ト上に流される例もある。
法案提出者の一人で下院・児童福祉委員会のテオドロ委員長は「貧困から親が子供
を児童ポルノのモデルに使って、その収入を生活費に充てているケースもある」と語
る。比国ネット上では、法案に対して「表現の自由を侵す」「捜査権の乱用につなが
る」との批判も飛び交っている。
テオドロ委員長は「表現の自由といっても子供の性を食い物にしていれば問題だ。
また、きちんと(児童ポルノに使おうとした)証拠を集めれば、(違法かどうか)判
断できる」と力説する。
世界各地で児童ポルノ問題に取り組む国際NGO「児童失踪(しっそう)・児童虐
待国際センター」(米バージニア州)は「フィリピンでこの法律が施行されるとアジ
ア地域で最も規制の厳しい国になり、喜ばしいことだ」と規制強化実現を期待してい
る。
◇「娘との生活のため」 日本の漫画、翻訳しネット販売
日本の児童ポルノ漫画を翻訳するフィリピン人女性は胸中を悲しげに話した。「生
活のためには仕方がない」。マニラ首都圏に住む20代の女性は周囲を気にしながら、
翻訳中のポルノ漫画を見せてくれた。未成年と分かる制服を着た少女や、小学校の校
庭を舞台にした絵が描き出されていた。
女性は児童ポルノなどをネット上で販売する会社で翻訳のアルバイトとして働いて
いる。「仕事を失いたくない」と匿名を条件に取材に応じた。
「日本の漫画に興味がある人」という求人をネット上で見つけ、応募した。給料は、
同国の公務員の平均月収とほぼ同じ月額約1万5000ペソ(約3万円)。小学生の
娘と2人暮らし。この収入だけが生活の支えだ。
日本の漫画は定期的に、マニラ首都圏にあるこの会社にメールで届いているという。
女性は週2回、出社して漫画の画像が入ったUSBメモリーを受け取り、自宅のパソ
コンで日本語のせりふ部分を英語に翻訳する。日本語はほとんど話せないが、ネット
の辞書機能を使っている。
同社の事務所では10人ほどがパソコンの画面でフィリピンや世界各国のポルノビ
デオやアニメの編集や翻訳をしている。編集した映像や、女性が翻訳した漫画は、ネッ
ト上で世界中に販売されているという。欧米など世界中に顧客がいる。事務所は24
時間稼働。「人件費が安いし、規制がないから、この国にこんな会社があるのだと思
う」と女性は説明する。
「初めてこのような漫画を見たときには、あまりのひどさに頭が混乱した」という。
自宅で作業中のパソコンの画面を娘が見たこともある。それ以降、二度とパソコンに
は近寄らないように言いつけている。今は何も感覚がなく、淡々と訳すだけだという。
「子供を扱ったものは規制すべきだと思う。こんな仕事をしていて罪の意識はある
けど……」。別れ際に彼女は力なく話した。
