『初恋』
この言葉の響きを聞いて、
自分の初恋を明確に思い出せる人はどの位いるのだろう。
私は、自分の意志で
幼い頃の記憶を消してしまったから、
自分自身が
明確に自覚している初恋は、18歳だ。
虐めと、
男性不信で、
中学高校は女子校に進学した。
専門学校も、
短大卒業資格を取れる専門学校で、
保育科を専攻した。
保育園でアルバイトしながら、
別のところでも、1週間に1回のアルバイト。
その、週1のアルバイト先の社員に恋をした。
保育園でアルバイトしていたので、
他の女の子よりは、はっきり言って怪力だったと思う。
でも、そんな私にも平等に、
「女の子やから、仕事はしてもらわないといけないけど、
そんなに無理したらいかんよ。」
って、気を配ってくれた。
彼は、社会人として普通に接してくれていただけだったと思う。
でも、男性不信で、
男性に対して免疫のなかった私は、
その当たり前の優しさが嬉しかったし、
知らず知らずのうちに好きになっていた。
気がつけば、彼を捜して、目が追っていた。
彼の働く後ろ姿が自信に満ちていて好きだった。
その、アルバイトを辞めてからも
彼が乗っていた黒のスカイラインGT-Rを見掛けると、
彼じゃないかって思って、運転している人の顔を見たりしてた。
ボランティアキャンプで、酔った勢いで、
友達の前で、口を滑らせただけで、
顔どころか、
首筋も、
耳も、真っ赤になって
穴があったら隠れたいくらい
恥ずかしくなってしまうような、
告白すら出来ない、
そんな純情な初恋だった。
自分が、穢れている人間だから、
彼を好きになる事に罪悪感を感じた。
私が、好きと想っているだけで
彼まで穢してしまったようなそんな気がして、
告白なんて出来なかった。
でも、人を好きになることは
人を信じたいと思える自分が産まれてくることだったんだ。
彼に恋をして良かったと思う。