我が子には、色んな可能性があるはずだ。
だから、色んなことにチャレンジしてもらって、好きなことを見つけてほしい。
1つのことばかりして、他にあるかもしれない可能性は、潰したくない。
きっと、そんな想いで、保護者の皆さんは、お子さんにたくさんの習い事をさせるのですよね。
そういう、お子さんの将来を考える、お気持ち、とてもよく分かります😌
その上で、1つの習い事の講師としてお子さんの成長を見守ってきた経験から、お伝えしておきたい、大切な事が、あります。
それは、たくさんのことに取り組むよりも、1つのことを徹底的にやった方が、結果として得られるものが大きい、ということです。
「一芸に秀でる者は多芸に通ず。」
という言葉があります。
同じようなことを、天才作曲家モーツァルトも言っています。
「多くのことをなす近道は、一度にひとつのことだけをすることだ。」
The shorter way to do many things is to do only one thing at a time.
この事について、少し考えてみましょう。
まず、「学ぶは真似ぶ」というように、学習の基本は、真似をすることから始まります。
どんな楽器の演奏も、スポーツも、最初は、先生の真似をするのです。
どんな学問も、最初は、既存の理論をなぞり、覚えるのです。
そうして、自分の中に知識や技術を、理解し、習得していくうち、
ある事柄について、それが存在する理由を「なぜ?」と考え始めます。
技術に関して言えば、よりよく身につけるための方法を自分なりに考え始めます。
そこで、先人とは違った、自分のやり方、すなわち独自の学習のプロセスが生まれるわけです。
この「なぜ」と思考し、独自の学習のプロセスを生み出すためには、基礎の部分を完全に理解し、高い練度で習得できている必要があります。
そこから、さらに深く学んでいき、自分の疑問について答えを出し、独自の技術を身に付けていくと、ついには、それを人に教えられるようになります。
ここまでが、「守破離」という考え方です。
さて、1つを藝を極めるには、こうした深い学習が必要です。
その学習によって得られるものには、芸事の知識や技術だけではなく、物事の学び方という、人生の財産があります。
これはもちろん、他の分野を学ぼうとする時にも、生きてきます。
新しい知識を学ぶとき、どうやって勉強すれば良いかが分かります。
新しい技術を学ぶとき、練習の必要性を充分に理解し、いかに練習すべきか、やり方を研究することができます。
これを、広く浅い“子供の頃の習い事”で終えてしまうと、どの分野においても、基本の部分を身につける事すら、ままならず、物事の学び方を知らないまま、大人になってしまう可能性があります。
そして、全ての子供達が受ける、学校教育というのは、まさに広く浅く学ぶ営みです。
その先にある、受験勉強というのは、真に教科を極めていなくても、傾向と対策による受験技術によって、ある程度は何とかなる部分があります。
もちろん、東大や京大の理系などトップクラスを目指すなら、そうはいかないでしょう。
しかし、今の日本では、ほとんどの高校生は、親御さんの経済力が許せば、どこかの大学には入れます。
ですから、物事の学び方なんて知らなくても、大人になることは、できるんです。
あなたは、ご自分のお子さんに、何を身につけさせたいですか?
私は、もし、自分が子育てをするなら、物事を学ぶ術を身につけてほしいと思います。
それは、別に音楽でなくても、かまいません。
何か1つのことを通じて、一芸と言えるまでに、学んでほしいと思っています。
そして、知的好奇心を持って、この情報社会を生きていける、立派な大人になって欲しいです。
教育者の立場である今、自分が教える生徒には、できる限り、同じものを与えていきたいと思っています。
あなたのお子さんにも、一芸という物事の学び方を、プレゼントしてみてはいかがでしょうか。
ではまた☺️