KMMのブログ

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人口700人程の村にある僻地診療所での勤務が終わり、現在は大学病院で勤務しています。
診療を通じてたことや、個人的に気になったことなど適宜書いていこうと思います。

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久しぶりの更新、バタバタしててあまり書けておらずすいません。


最近尾身会長の発言が世間を騒がせていますね、細かい内容はネット記事に溢れ返っているかと思うので省きますが、簡単に言えば、「この状況でオリンピックをやるのは普通の感覚ではない」みたいな感じの発言をして、オリンピックを推進している政府に対し真っ向から反対した、みたいな感じでしょうか。


尾身会長は知る人ぞ知る、自治医大の一期生の先生で、私の大先輩にあたります。


ここで一つ例え話を

ある発熱のある患者と医師のやりとりです。


患者「先生、40度近くあった熱が38度まで下がりました、今晩パーティーがあるんですが、行っていいですよね?」

医師「いや、まだかなり熱もあるし、パーティー行くのは控えた方がいいですよ、みんなにもうつす可能性がありますし、さらに病状が悪化してして肺炎を合併してしまう可能性も十分考えられますよ」

患者「大丈夫です、しっかりマスクして、はっちゃけすぎないよう自制もしますので。行くのはほぼ決定と返事もしてしまいましたし。」

医師「いや、まだかなり咳とかも出てますよ。せっかく治りかけてたのに、そこから無理したことで、また体調を崩したみたいな方も、これまでたくさん見てきています。やはりこの状況でパーティーにいくのは、医療者からすると普通の感覚ではありえませんよ」

患者「いやいや、それはあくまで先生の経験論でしょ?? 先生は全く違う地平から物事を見てきてるから、パーティーに行くってことの大切さを理解出来ないんだと思いますよ」


みたいな感じですかね。


おそらくこの医師はカルテに「この状況でパーティーに行くのは病状をさらに悪化させ、また他人にもうつしてしまう可能性も高いので絶対にやめといた方がよいと、再三にわたり指摘した」みたいな記事を残して、それでも行ったら自己責任と言わざるおえないみたいな対応をとるでしょう。


医師には、その患者がパーティーに行かないよう勧告はできても、行くのを強制的に辞めさせる手段までは、持ち合わせてはいないのですから。


2009年に新型インフルエンザが流行したのを覚えていますか?

なんかそんなんあったような?くらいの記憶じゃないでしょか?

しかしこの時、自治医大の学園祭が尾身先生の一言で、開催2日前とかに中止が決定したみたいなことがありました。



医学部の部活の大会(東医大や西医大)は、昨年春から現在も全て中止という状況が続いています。(甲子園やウィンターカップなど、高校生の部活の大会は当然のように開催されていますが)


医師の視点からすれば、感染や病状悪化のリスクが少しでもある状況なら、基本的には安静加療をするよう指示する、なのでこの状況でオリンピックなんてありえないでしょという尾身さんの意見は冷静に考えれば、医師として至って当たり前のことを言っているだけとは思います。


尾身会長も本当気の毒だなと思います。

何も間違ったことを言ってないし、不祥事も起こしていないのに、新型コロナウイルスという国民のストレスや怒りの矢面に立たされてるんですから。


物事の全ては、健康があってはじめて成り立つ部分があると思います。


政府はこれまで、国民に我慢を強いる時は、尾身さんなど専門家の意見を重用してきたのに、都合が悪いことを言われたら、自主研究や、違う地平から見てきた人だから理解できない、みたいなことを言うのは、ずるいと言うか、例に挙げた患者みたく、そもそも話が通じてないとは思います。


ただ「今オリンピックやるなんてありえないでしょ」や「専門家の尾身さんが普通はやらないと言ってるのに、オリンピック開催の方向で押し進める政府はどうかと思いますけどね」みたいなことを言ってるマスコミや世論が、いざオリンピックが始まって、日本選手が金メダルを取ったりなんかすると、大騒ぎして盛り上がってるんだろうなぁと思うと、人の言うことなんて矛盾に溢れているなぁなんてことを思ってしまう今日この頃です。


ではでは