戸籍謄本が必要になった。
いや、家にはあるけれども『発行から1年以内』という事に引っかかる。
『あ~、嫌だなぁ』
と、思いながら役所に行った。
別に、ただの役所の窓口だけどね。
そこには、婚姻届出しに来たり、出生届出しに来たりする人もいてさ。
そりゃ、離婚届の人もいるだろうけど。
これからの未来に期待をしている人達の方が、圧倒的に多い。
マイナンバーの手続に来ている老夫婦だって、未来の期待がある。
未来のための手続にきてるんだ。
俺は、除籍の記録が必要の為に役所に来て。
こんな未来の無い手続のために。
申請用紙を書こうとしたら、案内係の人が
『今日はどの様な手続ですか?』
と、聞いてきた。
『戸籍謄本が必要なんです』
『マイナンバーカードはお持ちですか?』
『はい。持ってます』
『でしたら、あちらの自動機で発行すると窓口より50円手数料が安くなりますよ』
と、隅に置かれた機械を指さす。
窓口で
『何の為の戸籍謄本ですか?』
って聞かれるよりはマシかも。
『ただ、ご自身でやって頂く必要があります。こちらではご案内できません』
あぁ、だから誰も使っていないのか。
まあその方が良いか。
『どうも』
と、その機械の前に行く。
コンビニのマルチコピー機とほぼ一緒だ。
大きな操作画面があって。
タッチパネルで『証明書の発行』を押す。
後はそのまま選んで行く。
戸籍謄本、450円。
硬貨を入れると、コピー機から出てくる。
妻の名前と『除籍』の文字。
分かってはいたけれど、やっぱり辛くて苦しくなる。
妻の生きた証が、とても軽く感じてしまい。
それが余計に、辛く、苦しく、悲しい。
便利にはなったけど、人間が介在しない為に『命の証』さえも軽くなってしまった気がする。
もちろん、俺がこんな事になっていなければ、
『待たされないし、便利だなぁ』
と、便利と手軽さを実感しただろう。
今は、その『便利と手軽さ』に打ちのめされている。
だから、役所には行きたく無いんだよね。