ジャックは悔やんだ。
何のせいという訳ではない、
任務直前の葉巻を吸うことが出来なかったからだ。
ジャックは既に戦闘ジャケットを着せられ、背中にボンベを背負っている。
そして顔には、
「はぁ…」
ジャックは無意識の内に溜め息をついてしまった自分に気づき
酸素マスクの上から頬を手で触った。
酸素マスク。
その決定的な存在のせいでジャックは葉巻を諦めることを余儀なくされた。
恨めしい。
実に恨めしいのである。
しかしいつまでもくだを巻いている暇は無い。
「準備は良いか?」
スピーカーから少佐の声が聞こえてきた。
「ああ。」
自分でも笑えるほどにやる気の無い答え方だった。
「準備してくれ。」
渋々輸送機の後部に立つ。
後部の貨物ハッチが僅かに軋み声をあげながら開く。
遠い遠い稜線から眩しい光が登ってくるのが見えた。
「夜明けです。」
オペレーターの1人が告げる。
貨物室内に吹き込んでくる
外からの大気に向かいながら
ゆっくりと歩を進め、
既に飛び降り準備は整った。
「鳥になってこい!」
少佐が高らかに晴れやかに言った。
ジャックは
その言葉を背に
大空へ飛び込んだ。
