パパっと着がえて朝食を摂り、すぐに仕事に向かう。
今日は特別な日だ。
ウチの馬が他の牧場に旅立つ日、自分が牧場仕事を始めてから初めての、門出の日。
今回はなんと3頭も!その中には自分が殊更かわいがっていた子もいる。

愛馬?茶々丸。つぶらな瞳が可愛い。
彼らが行くのは、ウチの馬を何度も買ってくれてる、優しい牧場主さんがいる所。扱いに関して不安はない。だが、やはり旅立ちには寂しさを感じてしまう。
そんな自分を奮い立たせ、完璧な状態で馬を引き渡すために仕事に入る。
朝の馬房業務、必要じゃない放牧地のチェックを後回しにし、すぐに馬を呼びに行く。
そして繋ぎ場に出す。3頭だけ。
馬達もいつもと違う空気を感じているようだ。動揺し、すこし緊張している。
出したらブラシ掛け。いつもより入念に、完璧な状態で引き渡すべく汚れ一つも残さぬつもりで行う。そして馬に話しかける。彼らと話すのも最後だ。
一通りの手入れが終わったら、迎えが来るまで少し時間が出来た。ので、ベタベタ触る。これでもかと言うくらい馬に触る。

お母さん馬、ラムちゃん。うちに唯一いたトラケナー。

純道産子の雪丸。引き馬で出番が多いので、ファンの人が多い。
この子達といられるのももう最後・・・と思うと、やはり込み上げてくるものがある。
その時に茶々丸との写真を撮ってもらった。

最後の記念となるだろう。茶々丸の可愛さも良く出てる(笑)
その後、割とすぐに迎えが来た。
馬達は見慣れないものを嫌う。というよりも怖れる。繋ぎ場の目の前を通る馬運車に驚かないよう、馬達の傍に行く。
次の牧場のオーナー自らが来てくれた(Hさんと呼ぶ。)
Hさんはまず馬の様子をもう少し見たい、との事で、馬達を少し歩かせることにした。
Hさんに渡すために茶々丸を連れてくる。
そこで、自分の<ダム>は決壊した。
もう茶々丸を連れて歩く事は無いんだ・・・と思うと涙が止まらない。
しかしこれは馬達の新たな旅立ちであるし、こちらが泣いてたらHさんも、そして何より馬達が動揺してしまう。
グッ・・・!と涙をこらえ、震える声で茶々丸をHさんに渡す。
そしてHさんと訓練?のような形で歩きだす茶々丸。Hさんは言った。「完璧です。すごく良いですね!」
茶々丸と出会ってたったの2年である。しかも自分は茶々丸の調教には携わっていない。それでも、この言葉はまるで自分の馬が褒められたような気がして、少し誇らしかった。
同時に「これでこの子はHさんの所に行くな・・・」と確信した瞬間でもあった。
その後も淡々と、粛々と準備は続く。ラム、雪丸も歩かせ、状態に納得してくれたHさんは馬運車に馬を入れる準備を始めた。
馬運車は馬達にとって見慣れない物である。しかも足元の感触が変わるため、周りの全てに恐怖を感じて中々乗ってくれない事もある。
逆を言えば、ここですんなり乗せられる事が出来れば、今までの馬と人との信頼が形になって現れる、という事でもある。
果たしてウチの子達はどうだったのか、と言うと・・・
とてもすんなり乗ってくれた。確かに多少は怖がるし、乗った後も下痢が止まらなかった(馬は緊張したり怖かったりすると下痢をする)しかし、それでも前へ進んでくれた。
一番怖がりの茶々丸も、予想以上に素直に乗ってくれた。
この時、自分は「茶々丸が自分で行く事を決めたんだな」と感じていた。
かくして馬が全頭乗った。あとはサヨナラだけである。もうここまで来たら不思議と涙は出なかった。寂しさもあったが、それよりも、良く分からない「爽やかさ」みたいなものが心の中に在った。
聞こえてるかどうかわからないが、馬運車の外から馬達に話しかける。「元気でやれよ」と。
そうして茶々丸、雪丸、ラムは新天地へと旅立った。
このブログを書いてる頃にはもう着いている事だろう。どうか先輩馬達と喧嘩せず、仲良く元気にやってほしい。
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前回の更新から1カ月以上経ってしまいました。時の流れって残酷!
久しぶりなため、まとまって無い文章ではありますが・・・今日感じた事、思った事は忘れてはいけないと思い、久しぶりにブログを書きました。
これから再びちょいちょい更新・・・出来たらいいなあ(笑)
ではまた!