彼はいつも泣いていました。

勉強をしながら泣き、ご飯を食べながら泣き、野球でホームランを打った時でも泣いていました。

彼は、いつも泣いているので、周りのみんなは特に気にしていませんでした。

しかし、彼はとても悩んでいました。

本当は、とても悩んでいて泣いているということを、誰も知らないし、知ろうともしていませんでした。

彼は、お腹が空いたので、泣きながらカステラを買いに出かけました。

いつも行くカステラ屋のおじさんだけは、泣いている彼のことを気にかけていました。

おじさんはいつも泣いている彼を見て、かわいそうだなぁと、もう何百回も思っているのに、情に流され毎回カステラを3本も多くあげていました。

彼はそんなおじさんが大好きで、毎日のように通っていました。

おかげで家はカステラだらけ。

お母さんは、そんなにもらっても食べきれないから毎日行くのはやめなさい。と毎日彼を叱っていました。

叱られると、彼はいつもよりさらに涙を流してしまい、脱水症状を起こして痙攣してしまうのですが、彼はどうしても、カステラ屋のおじさんに会いたくてたまらないのです。

ある日、彼がカステラ屋に行くと、おじさんはとても悲しそうな顔をしていました。

彼は泣きながらおじさんに、何かあったなら話を聞くよ?と言いましたが、すでに泣いている彼におじさんは気を使ってしまい、なんでもないよ。と、言ってしまいました。

何でもない、そんなわけありませんでした。

おじさんのカステラ屋さんは、赤字に赤字が重なり、もう今にも倒産する手前だったのです。

理由はいつも3本も多くカステラをあげていたからです。

でもおじさんは、彼を責める気にはなれず、むしろもう彼を泣かせたくないと思い、ある決心をしました。

次の日、いつものように彼がカステラ屋に行くと、おじさんが見当たりません。

彼は泣きながらおじさんの帰りを待つことにしました。

すると、カステラ屋さんの前を通ったご婦人が、カステラ屋さんの中から泣き声がすることに気付き、カステラ屋さんに入ってきました。

彼は、おじさんが帰ってきたと勝手に思い込んでいた為、知らないご婦人が入ってきたことにとてもショックを受け、脱水症状で痙攣を起こしました。

ご婦人は、彼が自分を見た途端に痙攣を起こしたことに罪悪感を感じ、ここのカステラ全部買うから許して!と土下座しました。

その時、ちょうどおじさんが帰ってきたものだからさぁ大変。

彼は痙攣し、ご婦人は土下座し、おじさんは慌てふためいています。

しかし、彼は最後の力を振り絞り、おじさんに言いました。

このご婦人がここのカステラ全部買ってくれるから、元気を出してね。

彼はそう言って、息絶えました。

おじさんはそう言うことなんで、と言いご婦人にカステラを全部渡しました。

ご婦人は仕方なく全てのカステラを買い、家に帰って食べてみるとそれがまた美味しいこと。

実は料理評論家のご婦人は、早速そのカステラ屋さんの記事を書き、瞬く間におじさんのお店は50階建てのビルへと様変わりしました。

おじさんは今でも彼のことは忘れていません。
彼を土に埋めて、その栄養により生えてきた木におじさんは今でも水を与え続けています。
脱水症状にならないように、毎日毎日。

ちなみにおじさんが決心したのは、彼にごめんねと書いたカードを渡す為にイオンにお買い物に行ってました。

おしまい。