If... | HOTEL KIDSのブログ

If...


先日、久しぶりに飲む機会をつくっていただきました。

風景が目の前に広がるような熟成されたウィスキーをいただき、

少しゆっくした時間を味わいました。


絶え間なく続く日々に、時々咀嚼できないことがあります。

それは感情であったり、伝えきれない思いや考えであったり、

語彙が貧弱でもどかしい思いをするのですが

(それで、ブログも怠りがちに・・・すみません。)


でも、もし・・・・

もちろん努力した上ですが、そんな一瞬があるのだと私も夢見たい今日このごろです。



もし僕らのことばがウィスキーであったなら、もちろん、これほど苦労することもなかったはずだ。僕は黙ってグラスを差し出し、あなたはそれを受け取って静かに喉に送り込む、それだけですんだはずだ。とてもシンプルで、とても親密で、とても正確だ。しかし残念ながら、僕らはことばがことばであり、ことばでしかない世界に住んでいる。僕らはすべてのものごとを、何かべつの素面(しらふ)のものに置き換えて語り、その限定性の中で生きていくしかない。でも例外的に、ほんのわずかの幸福な瞬間に、僕らのことばはほんとうにウィスキーになることがある。そして僕らはーー少なくとも僕はということだけどーーいつもそのような瞬間を夢見て生きているのだ。もし僕らのことばがウィスキーであったなら、と。 

        『もし僕らのことばがウィスキーであったなら 村上春樹』


                                  廣田めぐみ