白く輝く山 | HOTEL KIDSのブログ

白く輝く山

何故か、新しい年を迎えた後に

山を見たくなる傾向がある。

・・・去年は、この時期に富士山を見に行った。

方向音痴の私は、どこから見てもわかるものが好きだし、

そして、どっかり腰を据えて そこにある というものを

見て、「私もしっかりせねばならない」とか・・・思う季節なのかもしれない。

何より、山からのパワーをうけ、リフレッシュできる。


アフリカの最高峰 コーヒー名にもあるキリマンジャロ。5,895m。

この山の形も富士山に似ている。

ヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」も有名ですね。


この山に登ったのは7年ほど前。

私は、自分のペースでなら、ただひたすら歩くのは得意な方。

この山登りは、5泊6日かけて、一番簡単なルートを歩いていくというものだった。

現地ガイドがついてくれて、料理やら荷物運びをしてくれるのだから

自分ひとりがとりあえず登ればいいし。

多分、日常生活がおくれる体力があるなら登れる。


ポーターには、「正装」で運ぶのが礼儀だといわんばかりに、スーツ姿で革靴、頭に荷物を乗せ

軽々と私たちを追い越していく人もいるのだから。

でも、途中で「この前は、途中で紫になった人を山の下まで運んだよ。」とか冗談とも思えぬことをサラッと言い、私たちは山の怖さを一瞬で知ることになる。

実際、以前高山病になったという先輩は、

歩いている山道にマス目が見え、ゲームが始まったという。

マス目に色んな果物があるが、メロンを踏んでしまうとアウトらしい。

案の定、先輩はメロンのマス目を踏み、山を降りた。


前日まで熱が出ていた私も、山の清々しい空気に癒され軽快に?

しんどいながらも登っていくことができた。

・・・のは、キボキャンプサイト(4,700m)まで。

深夜に頂上にむけてアタックするのだけど、仮眠をとっている間に

やられたのだ・・・・頭が割れるように痛い。食べたものを全て吐く・・・

これが、高山病なんですね。

毛布の中で座ったまま、ただ時間が過ぎるのを待つ。

やっとアタックの時間。

その前に出てきたのは、ココナッツで炊いたご飯。

「こんなくどいもん食べれるか!」と・・・心でつぶやく。

「何なら食べれるか?食べないともたない。」とポーターに言われ、

「ウガリ」と現地の主食を伝える。

「めぐみはもうタンザニア人だ。」と何故か喜ばれ・・・めでたくアタックの時を迎える。


それからは急な斜面をひたすら登る。朝の日の出をギルマンズポイント前で迎えた。

あと少し・・・


やっと着いたよ~!!と思った瞬間、

見晴らしの良い開かれた空間に旗がみえる。それが「ウフル ピーク」頂上。

山を登りきったら頂上だと思っていた私の体の力が抜ける・・・・

歩いても歩いても、旗は見えているのに一向に近づかない。

斜面をあがっているときは、頂上に向かうというのが実感できるから頑張ることができる。

でも、ほぼ平らな土地で頂上に向かって歩くのはかなりきつい。

標高が高いだけあって、息はすぐあがる。

「もう、いーわー」と半泣きになる私。隣にいる友人も言葉を発さない。

と、その時

「日本人の名前をもらったよ。」と嬉しそうに話し、いつも優しい言葉をかけてくれた現地ポーターが

2人の肩を抱きかかえ、二人三脚で歩き始めた。

本当に強い人は、通常は強そうにみえないのかもしれない。

ある極限で強さをみせる。

もちろん私たちは、頂上についた。


これは、きっと自分で山を登ったといえるものではないと思う。

でも、確かに二人三脚で三人とも登った。


人生には、ひとりで対処できない場合もある。

ひとりでできなくても

怯みがちになっている時でも

肩を押してくれる存在がいればどうにか登れることもある、と思う。

それが家族であったり、パートナーであったりするのかもしれない。


でも

この際、ポーターのように深い知識と経験がなくても

しんどい時も笑顔を絶やさず

諦めない気持ちを持ち続けることができたなら。

どうにか登れることもある、と信じよう。


ザク ザク ザク

そんな音がしたのかしなかったのか・・・

心に響く足音。

前進あるのみ。


                           廣田めぐみ