雨の五重塔 | HOTEL KIDSのブログ

雨の五重塔

仕事で出かけた帰りに

雨が降ってきました。

そうだった・・・天気予報では夜には雨模様って言ってたな。

そんなことを思いながら

自転車で加速・・・

黙々と道を走り抜けながら

ふと目を上げると


暗くなった空から

まるで浮かび出るように

五重塔がそびえたち

はっと目をひく

晴れの日とは又違う風景。


雨が激しさを増してくると

いつの間にか浮かんでくるのは

昔住んだ事のある遠い暑い国のスコールの光景。

これ以上何も含めない凝縮された

液体が

大地に激しく降り出す。

何もかもかき消すように。

そんな激しい雨には、傘なんて役にたつはずもなく、

いつの間にか傘を持つことを忘れた。

ただ、雨宿りをする。

それが、木の下だったり、バーの軒下だったり

場所は変わるのだけど。

そこで、見知らぬ人が集まってくる。何気ない会話をする。

・・・というより

「元気か?」「どこから来た?」「お父さん、お母さんが元気か?」

「日本は中国の中か?」「日本に自転車で行ったら何時間かかるのか?」

質問攻めに答えるはめになるのだけど。

そんなことをしているうちに

いつの間にか、空は明るくなり

そして、じりじりと照りつける太陽。

何事もなかったかのように人々はまた歩き出す。


ただそれだけなのだけど

今思えば

とても贅沢な時間だと思う。

雨によって

少し時が止まる。

実際は時は止まらないし、自分も常に前に進んでいかないといけないのだけど。

でも一瞬の錯覚によって

あ、このままでいいんだ、

この瞬間、今が大切なんだと思う。


小さな時に

雨でずぶ濡れになって

でもそれがなんだか楽しくて

必要以上に

雨の中にいたり、水溜りに入ったり

そんな感覚に似ている。

雨が一瞬、時を止める。

今この瞬間が大切。


いつのまにか

何かに流されていたり

過去にとらわれていたり、

未来を考えすぎたり、

でも

今この瞬間をどんな風に過ごすのか。

どんな風に生きるのか。

それが大切ですよね。


               廣田めぐみ