久々の更新です。来年、2013年ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートのプログラムが発表されましたね。


今回のプログラムの特徴としまして、ワーグナーとヴェルディの生誕200年という節目の年ということもあり、2人の作曲家の作品も登場します。


また、もうひとつの特徴としまして、シュトラウス・ファミリーの特に、2番目の弟、ヨーゼフ・シュトラウスの作品が中心となったプログラムです。今回、プログラムを見てて思ったことは、ニューイヤーコンサートでは、初めて登場する曲目(毎年、何曲かはありますが、2013年は比較的多いです)や、ワーグナーやヴェルディが生誕200年の節目の年であることや特に注目すべき点は、なんとヨハン・シュトラウス二世が彼らの作品のメロディーを借用して作品された楽曲があるという点です。興味深いですね。


指揮は、2011年に引き続き二度目の登場でもあるフランツ・ウェルザー=メストがタクトをとります。


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普段、あまりクラシック音楽を聴かれない方や、そうでない方も是非、このコンサートをテレビでご覧なられたらと思います。


テレビ、ラジオでは、お正月午後7時から(現地、ウィーンでは、開演時間が午前11:15、日本時間19:15から)毎年NHK教育、NHKFM放送、BS放送では再放送がされます。


【ウィーン・フィルニューイヤーコンサート2013予定プログラム】


第1部★印は初登場曲です


ヨーゼフ・シュトラウス作曲

★ポルカ『スブレット』作品109

ヨハン・シュトラウス2世作曲

★接吻のワルツ 作品400

ヨーゼフ・シュトラウス作曲

★劇場のカドリーユ 作品213

ヨハン・シュトラウス2世作曲

★ワルツ『山から』作品292


フランツ・フォン・スッペ作曲

喜歌劇『軽騎兵』序曲


ヨーゼフ・シュトラウス作曲

ワルツ『天体の音楽』作品235


★ポルカ『糸を紡ぐ女』作品192


第2部★印は初登場曲です


リヒャルト・ワーグナー作曲

★歌劇『ローエングリーン』より第3幕への前奏曲


ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世作曲


★ポルカ・マズルカ『二人きりで』作品15


ヨーゼフ・シュトラウス作曲


★ワルツ『宵の明星の軌道』作品279


★ガロパン(使い走り)・ポルカ 作品237


ヨーゼフ・ランナー作曲


シュタイアー舞曲 作品165

ヨハン・シュトラウス2世作曲


★メロディー・カドリーユ 作品112


ジョゼッペ・ヴェルディ作曲


★歌劇『ドン・カルロ』第3幕からバレエ音楽


ヨハン・シュトラウス2世作曲


ワルツ『シトロンの花咲く国』作品364


ヨハン・シュトラウス1世(父)作曲


幻想曲『エルンストの思い出、またはヴェネツィアの謝肉祭』作品126


(アンコール)


ヨーゼフ・シュトラウス作曲


ポルカ『おしゃべりな可愛い口』作品245


ヨハン・シュトラウス2世作曲


ワルツ『美しく青きドナウ』作品314


ヨハン・シュトラウス1世(父)作曲


ラデツキー行進曲 作品228

【演奏】


ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


【指揮】


フランツ・ウェルザー=メスト



【簡単な曲目解説】


プログラム第1部の第一曲目のヨーゼフ・シュトラウスのポルカ『スブレット』は、ニューイヤーコンサート初登場曲。題名の『スブレット』は『小間使い』の意。



『接吻(キス)ワルツ』このワルツも今回、初登場曲です。ヨハン2世の最初の年上の妻を亡くし、1881年に初演された、オペレッタ『愉快な戦争』のメロディーから成るワルツです。



『劇場のカドリーユ』も初登場曲。カドリーユとは、6曲の小曲から構成されており、ヨーゼフ・シュトラウスは、それぞれ他の作曲家のメロディーを借用して作曲されております。第1曲、アドルフ・ミュラー《エーゼルスハウト》ヴェルディ《仮面舞踏会》第2曲、スッペ《軽騎兵》とヘルテル《フリックとフロック》第3曲、再び《エーゼルスハウト》第4曲、マイヤベーア《アフリカの女》と《ディノラ》第5曲、ホップ《ドナウの乙女》スッペ《古い箱》第6曲、オッフェンバック《青ひげ》の各モチーフから構成されています。


ワルツ『山から』は、ヨハン二世が毎年訪れるロシアのパバロフスクで1864年に作曲。デビュー20周年を祝う演奏会でウィーンで初演されたワルツ。


喜歌劇『軽騎兵』序曲は、1997年リッカルド・ムーティ指揮のニューイヤーコンサートで初めて演奏され、今回で2度目の登場です。1866年3月21日、ウィーンのカール劇場で初演され、ウィンナー・オペレッタの今日よく知られた、お馴染みの名曲です。


ワルツ『天体の音楽』は、1868年1月21日、ウィーンのゾフィーエンザールで開催された、医学生の舞踏会で初演された、ヨーゼフ・シュトラウスの代表的なワルツ。


ポルカ『糸を紡ぐ女』は、1866年の謝肉祭にフォルクス・ガーデンで初演され、ワーグナーのオペラ《さまよえるオランダ人》の『糸紡ぎの合唱』を手本にしたといわれている作品です。


歌劇『ローエングリーン』第3幕への前奏曲は、1850年8月28日にワイマールの宮廷劇場で初演された作品で、この第3幕の前奏曲は壮麗な音楽で、オペラでは有名な《婚礼の合唱》へと続きます。


ポルカ・マズルカ『二人きりで』は、マーラーの後任として、ウィーン・フィルの指揮者(1901~03)を務めたヘルメスベルガーが20歳で父の四重奏団に加わり、1878年ウィーンの宮廷ヴァイオリニストになり、この作品は1877年頃の比較的若いころの作品です。


ワルツ『宵の明星の軌道』は、ウィーンの芸術家協会《ヘルペルス》の舞踏会で初演されたワルツで、今回ニューイヤーコンサートでは初登場曲です。とても、ロマンチックなワルツでもあります。


《ガロパン・ポルカ》(使い走りのポルカ)は、当時ウィーンの人たちが、証券取引所に興味を示す時代があったようですが、その頃、取引所に通信技術がなかったため、伝令役として『ガロパン』と呼ばれた、使い走りが大活躍しました。とてもユニークなポルカで、実はオーケストラで演奏したCDもあまりなく、今回ニューイヤーコンサートで演奏されるのもある意味、とても貴重です。


『シュタイアー舞曲』は、過去にムーティやアーノンクール等が、ニューイヤーコンサートで演奏しましたが、今回3度目の登場です。この作品は、3拍子の農民の民俗舞踏で、ワルツの祖でもある《レントラー》の一種でもあります。作曲者のランナーは、ヨハン・シュトラウス一世とともにウィンナ・ワルツの隆盛時代を牽引した作曲家です。


『メロディー・カドリーユ』は、面白いことに、ヴェルディのオペラの旋律を引用しています。《リゴレット》第1、4曲、《エルナーニ》第3、4、6曲、《マクベス》第2、3、5、6曲のそれぞれのメロディーが登場し、とてもユニークな作品です。ヨハン・シュトラウス二世のカドリーユでは、他にもヴェルディのオペラの旋律を引用した作品があり、1998年のメータ指揮による《新しいメロディーのカドリーユ》や1988年、アバド指揮で演奏された、《仮面舞踏会のカドリーユ》はいずれも、ヴェルディのオペラからの作品です。


歌劇『ドン・カルロ』第3幕からのバレエ音楽は、パリのオペラ座からの依頼でパリ万博の1867年に初演されました。こんにちでは、イタリア語上演が多いですが、バレエ音楽は、グランド・オペラの形式を踏襲するフランス語版で演奏されます。


ワルツ『シトロンの花が咲く国』は、シュトラウスが、1875年の5月にイタリア演奏旅行に出かけ、この曲は旅行用に作曲されました。タイトルは、ゲーテの《ヴィルヘルム・マイスターの修業時代》の『ミニョン』の詩に由来するものです。


『エルンストの思い出、または、ヴェネツィアの謝肉祭』は、ヴァイオリンの名手、エルンスト作曲の『ヴェネツィアの謝肉祭』に基づく変奏曲で、面白いことに様々な楽器が入れ替わりでテーマを演奏します。この曲は最近では、メータ指揮の2007年のニューイヤーコンサートでも初めて演奏されました。


ポルカ『おしゃべりな可愛い口』は、副題に《音楽の冗談》というタイトルが付いており、作曲家、ヨーゼフ・シュトラウスの10歳の一人娘カロリーネのために捧げた作品です。


ワルツ『美しく青きドナウ』は、毎年ニューイヤーコンサートではお馴染みのシュトラウスのワルツで、オーストリアの"非公式の第2の国歌"といわれている曲です。もともと、男声合唱のために作曲されたワルツですが、こんにちでは、オーケストラで演奏されることが多いようです。


『ラデツキー行進曲』は、小太鼓のテーマで始まり、お馴染みの勇壮な行進曲で、1848年にパリで2月革命が起こり、当日ウィーンでも間もなくその余波を受けて保守派と革命派が鋭く対立し、この時ヨハン一世は政府側の保守派に、息子のヨハン二世は、革命派につき、この《ラデツキー行進曲》は政府側の士気を高めるため、その時に作曲された作品で、イタリアを征服した名将"ラデツキー"の名をとったといわれている作品です。










イベールの喜遊曲をジャン・マルティノン指揮のパリ音楽院管弦楽団の演奏で聴きました。


マルティノンのこの曲の演奏は、どちらかと言えばインパクトがあって、ジョークっぽい感じで楽しめる演奏だと思います。楽曲中、最後の曲は駅員さんが吹く笛の合図を取り入れながら演奏しているところが楽しいですね。クラシックの初心者の方でも、この作品は結構、楽しめると思います。


作曲家のジャック・イベールは、交響組曲『寄港地』を初め、『美しい争い』や『我が青春アリアンヌ』『ゴルゴダの丘』などの映画音楽、それにこの『ディヴェルティメント』は、1928年アムステルダム王立劇場からウージェーヌ・ラビーシュの喜劇『イタリアの麦藁帽子』によるヴォードヴィルの劇音楽作曲の依頼を受けて作曲された。1930年にパリでウラディーミル・ゴルシュマン指揮のパリ交響楽団によって初演された。ユーモアにあふれた明るい楽しい音楽である。6曲はつづけて演奏され、第2曲目の《行列》にはメンデルスゾーンの結婚行進曲も登場する。


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ジャン・マルティノン指揮/パリ音楽院管弦楽団(DECCA盤)




バルトークのバレエ音楽『かかし王子』をピエール・ブーレーズ指揮のシカゴ交響楽団の演奏で聴きました。


指揮者のブーレーズは、バルトークやストラヴィンスキー、ラヴェルなんかを得意としているようですが、このシカゴ響とのコンビによる『かかし王子』は結構、聴き応えのある演奏です。もう一つのバレエ音楽『中国の不思議な役人』が比較的知られているのに対して、こちらの方は実演でもあまり演奏されない作品です。


バルトークの音楽の中でも『弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽』や『管弦楽のための協奏曲』あたりは有名ですが、バレエ『かかし王子』や『中国の不思議な役人』も結構、面白い作品だと思います。


『かかし王子』はメルヘン・バレエで、放浪の王子がほとりの王子を見はじめる。しかし、森の精の妨害があって近づけない。身代わりに彼は木を削って人形を作り、自分のマントと冠を着せる。人形は王女を誘い出すことに成功するが、王子を嫌う。妖精は今度は逆に王女に試練を与え、彼女がそれを乗り越えたところで、ふたりを結び付けるという話しである。


オペラ『青ひげ公』と同時にここでもテーマは孤独の男女の愛と言えるが、外的な象徴性も強くそこから外観に囚われている人間は、犠牲的な行為の後でのみ存在の尊さを知るという教訓が読めるし、また、王子が芸術家の隠喩であり、王子とかかし(芸術)の対決といった、ちょうどジャン・コクトーの『詩人の血』と同じ話題も盛り込まれている。


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ピエール・ブーレーズ指揮/シカゴ交響楽団(DG盤)