かなりマニアックなネタです。

先日、HAMtteの会員ページで議論となり色々と調べてみました。自局にとって新たな発見がありましたので記事にします。

アマチュア無線家であればきっと、ぃゃ必ず目にしたことのある規定です。

4アマの標準教科書には

アマチュア局は、自局の発射する電波が他の無線局の運用又は放送の受信に支障を与え、若しくは与えるおそれのあるときは、速やかにその周波数による電波の発射を中止しなければなりません。ただし、非常通信等の重要な通信を行う場合は、この限りではありません。

と簡易化して書かれています。

そのオリジナル条文はこちら。

★無線局運用規則第258条

アマチュア局は、自局の発射する電波が他の無線局の運用又は放送の受信に支障を与え、若しくは与える虞があるときは、すみやかに当該周波数による電波の発射を中止しなければならない。但し、遭難通信、緊急通信、安全通信及び法第七十四条第一項に規定する通信を行う場合は、この限りでない。

ここで海上や航空系無線をかじったことのある方であれば、”アマチュア局がどうして遭難通信等を行えるのか？”と気付くと思います。

というのも、遭難通信の定義は以下の通りだからです。

★電波法第52条第1号

遭難通信（船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥つた場合に遭難信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう。以下同じ。）

遭難通信は船舶と航空機に限定しているので、普通に考えるとアマチュア局が入り込む余地は無さそうです。

＊お山で「遭難」した場合、電波法上は遭難通信ではなく「非常通信」に該当します。

更に詳しく見てみます。まずは航空機。

★無線局運用規則第169条

航空機局が無線電話により送信する遭難通報（海上移動業務の無線局にあてるものを除く。）は、当該航空機局と現に通信を行つている航空局、責任航空局又は交通情報航空局その他適当と認める航空局にあてるものとする。ただし、状況により、必要があると認めるときは、あて先を特定しないことができる。

主語が「航空機局」ですので、やはりアマチュア局が入り込む余地は無さそうです。

というか、アマチュア局に航空機と交信可能な無線設備があったら重大な電波法違反ですね。。。

次に船舶です。

★無線局運用規則第71条

船舶局における遭難警報若しくは遭難警報の中継の送信、遭難呼出し（第七十八条第九項の呼出し（第八十二条第四項において準用する場合を含む。）を含む。第七十三条第一項第一号、第七十七条第一項、第八十一条及び第八十一条の七第一項において同じ。）、遭難通報の送信、第七十八条の二第一項及び第二項に規定する通報の送信、緊急通報の告知の送信又は緊急呼出しは、その船舶の責任者の命令がなければ行うことができない。（以下略）

こちらも主語が「船舶局」のうえ、遭難通信は責任者（船長）の命令がなければ行うことはできません。

やはりアマチュア局が入り込む余地は無いです。。。

アマチュア局の遭難通信に関する条文が見つからずギブアップだったので、関東総合通信局にメールで質問したところ、直ぐに回答を頂きました。

【回答】（原文ママ）

アマチュア無線による遭難通信については、電波法令に規定してはいますが、実際に行われることはまず無いものと思われます。特殊な例として、船舶安全法では、第二種小型帆船（旅客定員が無いヨット）の義務設備となる通信設備にアマチュア無線を代用することが認められていることから、遭難時にアマチュア無線を使用することが想定されます。

えぇっ、なんと船舶安全法でしたか。

★船舶安全法施行規則第4条

法第四条第一項ただし書の規定により無線電信等を施設することを要しない船舶は、次の各号の一に該当する船舶であつて管海官庁が許可したものとする。（以下略）

別表：無線電信等を施設することの免除を管海官庁（日本小型船舶検査機構各支部）から受けた船舶に、通信範囲内に限り代替物として搭載が認められる設備（免除申請が必要）。

確かに別表にはアマチュア無線と書いてありました。

しかしながら、いくらヨットでもアマチュア無線だけの通信設備で航海に出る可能性は極めて低く、仮にアマチュア無線のHF帯で「メーデー」とやったところで救助される可能性も低いでしょう。今はインマルサットを搭載していると思います。

疑問は解けましたが、あまりにも特殊ケースでした。。。