🌿 各藩の薬草リスト(史料に基づく代表例)

加賀藩(加賀・能登・越中)— 立山系薬草の宝庫

加賀藩は、薬草採取と売薬の中心地で、特に越中富山の売薬で知られます。 明治初年に金沢の薬種商が提出した「売薬々方明細」には、和産薬種が多数記録されています。

主な薬草(和産として記録)

  • 木香

  • 桔梗

  • 桑白皮

  • 玄参

  • 山椒

  • 升麻

  • 紫苑

  • 防風

  • 萩苓(茯苓)

  • 大黄

  • 人参(和人参)

  • 附子

  • 麻黄

  • 肉桂

  • 甘遂

  • 巴豆

  • 丁子

  • 檳榔子

これらは、加賀藩領内(立山・能美郡・越中など)で採取されたものが多く、薬種商(中屋・宮竹屋・福久屋)が大阪の薬種仲間とも連携して流通させていました。

大和国(奈良)— 森野旧薬園と大和薬の中心地

奈良は古代から薬草の中心地で、江戸期には採薬使の重点調査地となりました。

森野旧薬園で栽培された薬草(幕府から拝領した6種)

  • 甘草

  • 東京肉桂(シナモン系)

  • 烏臼木(なんきんはぜ)

  • 天台烏薬

  • 牡荊樹

  • 山茱萸

奈良の名薬に使われた薬草

  • 大和当帰

  • キハダ(黄柏)

  • 陀羅尼助の原料(オウレン・キハダ)

  • 三光丸の原料(胃腸薬系の和薬)

奈良は薬草の質が高く、売薬(陀羅尼助・三光丸・蘇命散など)も全国的に流通しました。

尾張藩(名古屋)— 御深井御薬園の体系的薬草園

尾張藩の御深井御薬園は、江戸初期に整備された大規模薬草園で、絵図には多くの薬草が描かれています。

絵図に確認できる薬草例

  • おもと(藜蘆)

  • リンドウ

  • カキドオシ

  • スミレ

  • 五味子

尾張藩は薬草園の管理が厳格で、藩主の私的空間でもあり、薬草研究の拠点でした。

水戸藩(常陸)— 本草学の学術中心

水戸藩は本草学研究が盛んで、薬園を整備し、薬草栽培と学術研究を連動させました。

主な薬草(記録に多いもの)

  • 当帰

  • 地黄

  • 柴胡

  • 黄芩

  • 芍薬

  • 甘草

水戸藩は学術的整理が進んでおり、江戸の医師層にも影響を与えました。

薩摩藩(鹿児島)— 南方系薬草の導入

琉球貿易を通じて南方系薬草を導入し、温暖な気候を活かして栽培。

主な薬草

  • 陳皮

  • 竜眼肉

  • 山梔子

  • 木瓜

  • 南方系の香薬類

会津藩(福島)— 藩校と薬園の連携

会津藩は日新館で医学教育を行い、薬園で薬草を栽培。

主な薬草

  • 当帰

  • 川芎

  • 地黄

  • 柴胡

  • 黄連

  • 黄柏

🚚 売薬の流通経路(江戸時代の薬がどう動いたか)

産地 → 藩の薬園・薬種商

  • 加賀藩:立山・能美郡・越中で採取 → 金沢の薬種商へ

  • 奈良:宇陀・吉野の薬草 → 地元の売薬商へ

  • 尾張:御深井御薬園で栽培 → 藩内医療・研究用

藩 → 大坂・道修町(薬種中買仲間)

大坂道修町は日本最大の薬種市場で、全国の薬草が集まり、唐薬(輸入薬)もここで流通。

加賀藩の薬種商も、大坂の平野屋・小西伊兵衛などから薬種を仕入れていました。

大坂 → 江戸・全国の医家・売薬商

  • 江戸の町医者

  • 富山売薬(行商)

  • 奈良の売薬商

  • 京都・大坂の医家

売薬商 → 庶民の家庭薬へ

富山売薬の「反魂丹」、奈良の「陀羅尼助」、大和の「三光丸」などが全国に普及。

🧭 まとめ:各藩の薬草と流通の特徴

  • 加賀藩:立山系薬草+薬種商のネットワーク

  • 奈良:薬草の質と売薬文化の中心

  • 尾張藩:高度な薬草園と体系的管理

  • 水戸藩:本草学の学術拠点

  • 薩摩藩:南方薬草の導入

  • 会津藩:薬園と医学教育の連携

江戸の薬草は、藩の薬園 → 大坂道修町 → 全国の医家・売薬商 → 庶民という流れで動いていました