🌿 各藩の薬草リスト(史料に基づく代表例)
① 加賀藩(加賀・能登・越中)— 立山系薬草の宝庫
加賀藩は、薬草採取と売薬の中心地で、特に越中富山の売薬で知られます。 明治初年に金沢の薬種商が提出した「売薬々方明細」には、和産薬種が多数記録されています。
主な薬草(和産として記録)
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木香
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桔梗
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桑白皮
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玄参
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山椒
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升麻
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紫苑
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防風
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萩苓(茯苓)
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大黄
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人参(和人参)
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附子
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麻黄
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肉桂
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甘遂
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巴豆
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丁子
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檳榔子
これらは、加賀藩領内(立山・能美郡・越中など)で採取されたものが多く、薬種商(中屋・宮竹屋・福久屋)が大阪の薬種仲間とも連携して流通させていました。
② 大和国(奈良)— 森野旧薬園と大和薬の中心地
奈良は古代から薬草の中心地で、江戸期には採薬使の重点調査地となりました。
森野旧薬園で栽培された薬草(幕府から拝領した6種)
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甘草
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東京肉桂(シナモン系)
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烏臼木(なんきんはぜ)
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天台烏薬
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牡荊樹
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山茱萸
奈良の名薬に使われた薬草
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大和当帰
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キハダ(黄柏)
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陀羅尼助の原料(オウレン・キハダ)
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三光丸の原料(胃腸薬系の和薬)
奈良は薬草の質が高く、売薬(陀羅尼助・三光丸・蘇命散など)も全国的に流通しました。
③ 尾張藩(名古屋)— 御深井御薬園の体系的薬草園
尾張藩の御深井御薬園は、江戸初期に整備された大規模薬草園で、絵図には多くの薬草が描かれています。
絵図に確認できる薬草例
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おもと(藜蘆)
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リンドウ
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カキドオシ
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スミレ
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五味子
尾張藩は薬草園の管理が厳格で、藩主の私的空間でもあり、薬草研究の拠点でした。
④ 水戸藩(常陸)— 本草学の学術中心
水戸藩は本草学研究が盛んで、薬園を整備し、薬草栽培と学術研究を連動させました。
主な薬草(記録に多いもの)
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当帰
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地黄
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柴胡
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黄芩
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芍薬
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甘草
水戸藩は学術的整理が進んでおり、江戸の医師層にも影響を与えました。
⑤ 薩摩藩(鹿児島)— 南方系薬草の導入
琉球貿易を通じて南方系薬草を導入し、温暖な気候を活かして栽培。
主な薬草
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陳皮
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竜眼肉
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山梔子
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木瓜
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南方系の香薬類
⑥ 会津藩(福島)— 藩校と薬園の連携
会津藩は日新館で医学教育を行い、薬園で薬草を栽培。
主な薬草
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当帰
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川芎
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地黄
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柴胡
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黄連
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黄柏
🚚 売薬の流通経路(江戸時代の薬がどう動いたか)
① 産地 → 藩の薬園・薬種商
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加賀藩:立山・能美郡・越中で採取 → 金沢の薬種商へ
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奈良:宇陀・吉野の薬草 → 地元の売薬商へ
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尾張:御深井御薬園で栽培 → 藩内医療・研究用
② 藩 → 大坂・道修町(薬種中買仲間)
大坂道修町は日本最大の薬種市場で、全国の薬草が集まり、唐薬(輸入薬)もここで流通。
加賀藩の薬種商も、大坂の平野屋・小西伊兵衛などから薬種を仕入れていました。
③ 大坂 → 江戸・全国の医家・売薬商
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江戸の町医者
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富山売薬(行商)
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奈良の売薬商
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京都・大坂の医家
④ 売薬商 → 庶民の家庭薬へ
富山売薬の「反魂丹」、奈良の「陀羅尼助」、大和の「三光丸」などが全国に普及。
🧭 まとめ:各藩の薬草と流通の特徴
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加賀藩:立山系薬草+薬種商のネットワーク
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奈良:薬草の質と売薬文化の中心
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尾張藩:高度な薬草園と体系的管理
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水戸藩:本草学の学術拠点
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薩摩藩:南方薬草の導入
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会津藩:薬園と医学教育の連携
江戸の薬草は、藩の薬園 → 大坂道修町 → 全国の医家・売薬商 → 庶民という流れで動いていました