JJです。


さて、心臓移植について勉強するシリーズ。

(1)(2)から、かなり時間があいてしまいましたが、第3回です。


前回までに、世界では、年約3500例もの心臓移植手術が実施されているが

日本では、年間3~11例で、累計でも100例にも満たない状況で、

先進国の中では、非常に少ないという現実を知りました。


そんな国内移植環境の中、2010年5月31日現在、

心臓移植を希望して登録されている方は、169名。


国内で長く待っていても、ドナーが現れず、命の炎が消えていく現実の中で、海外渡航移植という道を、選ばざるをえない人たちがいて、そんな日本の海外渡航移植者の半数以上は、18歳未満の子供たちという、渡航移植に依存する日本の現状を知りました。


・なぜ、日本の心臓移植の症例数は、これほどまでに少ないのか?

・なぜ、日本の子供たちの心臓移植を、渡航移植に依存しているのでしょうか?

その原因のひとつとして
現行の日本の臓器移植法の「臓器提供における条件」が

世界に比べて非常に厳しいからと、言われています。


現行の日本の臓器提供における条件を、見てみると、以下のようになっています。


・本人が提供意思を書面で残し(遺書扱い)、

 かつ、家族が同意した場合のみ。

・15歳未満は、提供できない。



これが、他の国と比べて、どう厳しいのでしょうか?


そこで、日本と世界の国々の臓器移植法の違いを、調べてみました。

トランスプラント・コミュニケーション(臓器移植の情報サイト) を参考にしながら、

以下の表にまとめてみました。


アメリカ、カナダ、オーストラリアなど(黄色の国々)は、

本人の提供意思が明確ならば、家族の承諾がなくても、臓器提供が可能です。

本人の意思が不明の場合でも、家族の承認があれば、臓器提供が可能です。


日本の現行法では

本人の提供意思を書面で残し、かつ家族が同意した場合のみ、提供可能ですから

確かに、アメリカ、カナダ、オーストラリアに比べて、日本の現行法は、提供条件が厳しい。

そして、日本には、15歳未満は提供できないという年齢制限もある


イタリア、フランス、シンガポール等(青色国々)は、もっとすごくて

本人が臓器提供を拒否する意思表示をしていなければ、臓器提供が可能です。

家族の承認は必要ありません。「推定同意」という考え方なんだそうです。


つまり、臓器提供するのが嫌なら、生前(脳死前)に、しっかり意思表示しておきなさい。

意思表示してない場合は、臓器提供に同意したとみなすしますよ。というわけですね。

遺族にとっては、厳しい法律ですが、拒否権があるのだから、嫌なら自己責任で

権利をしっかり行使しなさいという、わけですね。


大人というか、国民を甘やかさず、意思表示の責任をしっかり求めるあたり、

フランスらしいという感じがしますね。いいか、悪いかは別として・・・。


2010年5月、WHO(世界保健機構)は、
 「渡航移植は、結果的に渡航先の国民が移植を受ける機会を奪うため

  各国に、渡航移植の自粛を要請すること」を決めました。


これを想定して、日本では麻生内閣時代に、改正臓器移植法が可決されました。

2010年7月17日から、全面施行されます。


改正臓器移植法では、臓器の提供条件は、どう変わったのでしょうか?


7月17日に施行される改正臓器移植法の臓器提供条件は、以下の通りです。

・本人の書面による提供意思表示があり、家族が同意した場合

 (家族が拒否すれば、たとえ本人が提供を望んでいたとしても、提供できない

・本人の書面による意思表示がなくても、家族が文書で同意した場合

・年齢制限はなし

・ただし、家族は、脳死判定を拒否できる


アメリカや、カナダに近づいたと言いますが、

たとえ、本人に提供意思があっても、家族が嫌なら提供を拒否できる余地を残したあたりに

家族よりも、個人の意思(というより権利?)を、最優先とする欧米に対して、

残される家族への配慮が、本人の意思より優先されるという結果になっている。。。

なるほど・・・


果たして、

この改正臓器移植法が施行されると、ドナー提供者は、増えるのでしょうか?

このあたりについては、次回以降に勉強していきたいと思います。


臓器提供できる条件
アメリカ

・本人の提供意思が明確な場合

 (家族の承諾は不要)

・本人の意思が不明の場合でも、

 家族の承諾がある場合

カナダ
オーストラリア
デンマーク
スウェーデン
フィリピン
台湾
イタリア ・本人および親族の反対意思が明確でない場合
フランス

・本人および遺族の反対意思が明確でない場合

シンガポール

・本人が反対意思を登録していない場合

ベルギー

・本人の反対意思が明確でない場合

 ※近親者の反対があれば提供できないが、

   本人の提供意思が明示されている場合は、

   近親者の反対があっても、提供できる

日本(現行)

・本人が提供意思を書面で残し(遺書扱い)、

 かつ、家族が同意した場合のみ。

・15歳未満は、提供できない。

日本(改正)

・本人の書面による提供意思表示があり、

 家族が同意した場合

・本人の書面による意思表示がなくても、

 家族の同意で可能

・年齢制限はなし

・ただし、家族は、脳死判定を拒否できる


注意注意
この記事は、突然、根治療法は心臓移植しかないと言われる拡張型心筋症を発症した、一般の一患者が、自分が将来、もしかしたらお世話になるかも知れない日本の心臓移植環境について、知りたいと思い、個人的に調べたこと、勉強したことを書いています。

勉強中なので、記事の内容には、間違いがあるかもしれませんし、偏っているかもしれませんが、何かを主張しようとしているのではありません。議論したくて書いているのでもありません。どうか、ご理解をお願い申し上げます。