昨年、ネットニュースを見ていると天皇陛下が稲刈りをされているニュースが載っていました。皇居内にはちょっとした水田があり、コメ作りが行われています。このコメは11月23日に行われる新嘗祭で神前に供えられます。陛下の稲作りが報道陣に公開されるのは春の「種もみまき」と初夏の「田植え」、と秋の「稲刈り」の3回あります。
 宮内庁によると稲作は昭和天皇によって始められたとなっているそうですが、明治より前は不明なものの、明治天皇が明治の初めに赤坂御苑内に水田を作らせ、陛下自ら耕されたと伝えられています。 歴史的に見て天皇陛下は農耕民族の代表者であり、五穀豊穣、国民の安寧を祈る祭祀王ですから伝統として何らかの形で現在に引き継がれていると考えることができます。日本書紀では天照大神(あまてらすおおみかみ)が自ら神田を営み、新嘗の祭りを行ったとあります。


 見方を変えると神話では天照大神が田畑仕事をしており、現在の天皇陛下も田畑仕事をしており、仕事・労働の尊さ、徳を日本人は持っていると見ることができます。

 麻生前総理が以前こんなことを言っています。
「日本人の底力の一つは労働を美徳とするところではないか」

 麻生前総理は「旧約聖書」と「古事記」の違いを述べています。旧約聖書は神様が人間に罰を与えて働かせた。だから7日目には安息の日曜日がある。古事記は天照大神が自ら畑に出たり、機(はた)を織って働いたと書いてある。神様が働いているのだから日本人は働くことは良いことだ、と思っている。

 この話はなるほど、と思いました。昨年の選挙選のとき、麻生前総理が「老人は働くことしか能がない」と言ったのをヤンヤヤンヤとマスコミは騒ぎ立てましたが、何のことはありません。働くことは美徳なんですから、褒め言葉であり、失礼でもなんでもありません。麻生前総理は日本人の芯を理解していたと言えるでしょう。


 たしかに日本人は労働を美徳と無意識に考えていると思います。私の両祖父は老後も絶えず何かしら家のことや地域のことをやっていましたし、現代の日本人も夜遅くまで働きます。また外国からも日本人は働きすぎとか勤勉と言われます。定年を迎えた人もまだまだ労働意欲があると聞きます。戦前の教育勅語にも「広く世の人々や社会のためになる仕事に励もう(公益世務)」というのがあります。

 こう考えると今上天皇が伝統を受け継がれて稲作を行われるのも大変大きな意義があることに気づかされる次第です。



参考文献
 「天皇陛下の全仕事」山本雅人著
 「日本の『神話』と『古代史』がよくわかる本」日本博学倶楽部著 島崎普監修
 「日本人の覚悟」日下公人著



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