小林よしのり著「天皇論」では女系天皇について以下のように述べています。


「たとえ将来、女系天皇が誕生するようなことになっても、わしは失望しない。益々国民が天皇に注目し、敬愛を深め、かえって伝統が強化されることだってあるかもしれない。
 そうなるように皇室の意義を子孫に我々が伝えてゆかなければならない。
 もともと天照大神は女性神である。ならば日本の天皇は女系だったと考えることもできる!」


 小林氏は皇后陛下が民間から皇室に入られ、見事に皇室の伝統の守護者になられたことを伏線において伝統継承の障壁にはならないと述べています。

 これには私は違和感を感じましたが、東京大学名誉教授の小堀桂一郎氏がひとつの指摘をしています。
「『紀』の本文に即してみれば、天孫が天照大神の血統上の孫でないことは明らかである。ではこの皇統のつながりをなんと呼ぶのか。霊統と言っても道統としてもよい。ただ人間の世界の血統概念を当てはめて、皇統は女系に始まる、とするのは実に素朴な誤謬(ごびゅう)である」

 なんとも倫理学の用語など飛び出しており、私も漠然としかわからないのですが、ほかの箇所と読み合わせて、「神話の時代」と「神武天皇」以降とは区別するのが神話研究であり、神話と歴史を混同してはならない。つまり、天照大神という血統は意味をなさないというものです。血統が意味を持つのは「神武天皇」以降ということです。

 小堀氏は小林氏を批判しているのではなく、むしろ応援しています。田中卓、所功氏のような政治的党利、党略に基づく研究者の学説に依拠してはならない、皇都の学会では渡部昇一、八木秀次、神都伊勢では新田均、松浦光修という神道学専攻の学究を道標とするのが良いと助言しています。特に神都伊勢の両名は国体と皇統に対する神代以来の尊王敬神の「道」に対する「信仰」に拠った学説として推奨しています。

 なかなか深いところがあり考えさせられます。私ももっと勉強しなければと思いました。


参考文献
 「天皇論」小林よしのり著
 「正論」2009.12『共感と違和感と』話題の書『平成皇室論』、『天皇論』を読む 小堀桂一郎


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