天皇陛下は国民の安寧と五穀豊穣を祈る祭祀王です。ですから祭祀が天皇陛下の本質です。西洋の王、貴族がうなるような財力と武力で民を従えさせていたのとは異なり、天皇は日本の成立と同時に自然に形成され、民のために祈る存在として国を治めました。しかし戦後、祭祀よりも公務を重要視するむきがあります。もちろん皇室内部は祭祀重視です。まわりの怪しい人たちが祭祀を軽視しようとしています。
昭和44年に侍従長となった入江相政(いりえすけまさ)氏は天皇陛下のご高齢を口実に祭祀の簡略化を目論見ます。これは伝統破壊であり天皇陛下の本質を破壊しようとするものです。昭和天皇はただ一人抵抗をなさり、祭祀を守りました。
しかし、2008年に今上天皇が体調を崩されたのを機に宮内庁は再び祭祀の「簡略化」を打ち出しました。宮内庁は他省庁から幹部職員が来るのでにいろいろな思惑をもったものが入り込んできているようです。
宗教ジャーナリストの齋藤吉久氏は悠久なる歴史に立つ皇室の伝統がないがしろにされ、ご高齢の天皇は「象徴」という国の機関として無慈悲にも利用されている、と懸念を示しています。宮内庁は陛下の公務軽減をうたっていますが、齋藤氏がとった統計では平成19年と平成21年では公務件数は増加しており、特に引見、会釈、海外賓客の午餐・晩餐が増加しています。一方祭祀のほうは件数が減っています。齋藤氏は官僚たちは祭祀王であるという本質論を見失っており、祭祀の持つ、高い文明的価値を理解できずにいる、と指摘しています。
これは大変な危機的状況です。祭祀が本質であることを高級官僚が理解できていないということは、日本国家が成り立っている本質、つまり日本の国体は天皇と公民で成り立っているということを理解できていないということです。
官僚が色々なことで問題になっていますが、この祭祀の問題が隠れた最大級の問題、国家的問題ではないでしょうか。
ちょっと前ですが、本屋へ行くと小林よしのり氏の「天皇論」が20万部突破したとありました。こういった本で皇室の本質を国民が知り、本来あるべき日本の姿に矯正されていくことを願っています。
参考文献
「天皇論」小林よしのり著
「正論」2009.10『宮中祭祀を蹂躙する人々の”正体”』斎藤吉久
「正論」2009.12『皇統を揺るがす羽毛田長官の危険な”願望”』斎藤吉久
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