天皇陛下は祭司王。
$かつて日本は美しかった

 天皇陛下のお仕事に皇室祭祀というのがあります。大祭、小祭、旬祭とあります。大祭は天皇陛下自らが祭典を行う祭祀です。これだけでも元始祭(1月3日)、先帝祭(1月7日)、春季皇霊祭(春分の日)、神武天皇祭(4月3日)、秋季皇霊祭(秋分の日)、神嘗祭(かんなめさい)(10月17日)、新嘗祭(にいなめさい)(11月23日)とあります。

 小祭も多くあり、本日行われている小祭は歳旦祭になります。祭儀は年間で全部あわせて30になり、紀元節(2月11日)には臨時御拝を別途行われます。一年中お祭りといってもよいと思います。お祭りと言っても庶民のみこしを担いで酒を飲むようなものではなく、非常に神聖なもので冷暖房設備の無い宮中で何十分も平伏しなければならないものもあります。天皇陛下のメインのお仕事は「祈り」であり、天皇陛下は国民の安寧、五穀豊穣を祈り続ける祭司王だったのです。私は以前は天皇陛下というのは憲法に定められた国事行為と福祉施設の訪問や文化振興などのことを普段行われていると思っていましたが大間違いでした。祭祀が天皇陛下の本質です。

 本日、元旦は四方拝の儀があります。神宮をはじめ四方の神々や御陵を遥拝され、この年の平和と国民の幸福を祈念されます。平安時代の中期には確立していた祭儀です。歳旦祭は全国の神社でも行われている通り、一年の平和を祈念する祭儀で、天皇陛下は御剣(三種の神器のひとつ)とともに宮中の賢所(かしこどころ)、皇霊殿、神殿の順に玉串を持って御拝礼されます。

 宮中祭祀で重要なものは神嘗祭(かんなめさい 10月17日)と新嘗祭(にいなめさい 11月23日)があげられます。神嘗祭は古代から行われてきた祭祀で、新穀を供える大祭です。戦国時代以来中断していましたが、江戸時代に復興し、18世紀末の光格天皇が本格的に復興させています。新嘗祭は宮中祭祀の中で最も古く、重要な祭典であり、天照大御神をの御霊をお迎えし、米、粟をはじめとする穀物の今年の出来を奉告、感謝し、新穀で作ったご飯やお酒を陛下がご自身で天照大御神にお供えになり、且つご自身でもお召し上がりになります。そして「国平らかに、民安かれ」と祈られます。

 天皇陛下は神話の時代より民の安寧のために祈ってこられたのです。これは西洋の王などとは全く異質なもので、西洋の王様は権力と財力を持って民衆を従わせたため、対立構造になり勝ちで、民衆の反乱のために途絶えたりしていますが、日本の天皇は民衆のために祈る祭司王であり、歴史上、民と対立したことはなく、君民一体であり、この日本のお国柄は2600年続いてきました。

 お正月を迎えて、新聞やテレビでは一般参賀や皇室の家族的な写真や映像がよくとりあげられますが、マスコミが報じないところで、天皇陛下は国民のために祈られており、この先一年、ずっと祈り続けられるわけです。私はそのことに感謝し、今年一年、仕事に励み、微力ながら日本という国をさらに立派な国にしていくために尽力していきたいと思う次第です。



万葉集より(言霊信仰による祈りの歌)
 大和には 群山あれど とりよろふ
 天の香具山 登り立ち 国見をすれば
 国原は 煙立つ立つ
 海原は 鴎立つ立つ
 うまし国そ あきづ島 大和の国は 




参考文献
 転展社「宮中祭祀 連綿と続く天皇の祈り」中澤伸弘(著)
 PHP新書「日本人としてこれだけは知っておきたいこと」中西輝政(著)
 小学館「天皇論」小林よしのり(著)

添付画像
 結婚の儀に臨む、皇太子明仁親王と正田美智子 昭和34年4月10日(PD)

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本記事は平成21年12月8日「祈る君主」を再編集したものです。