皆さまこんばんは。
つい先程、映画LAMB/ラムを見に行きまして、取り急ぎネタバレやら感想を書いていこうと思います。
公開前のCMを見ていたもので、ある程度展開を予想して映画館に行ったのですが、
だいだい予想通りだったという点と、えええーっ!となった点、2点ございました。まんまとCM製作者の意図に引っかかった感じですね。
以下ネタバレがございますのでご注意ください。。。
北欧のアイスランドの片田舎(行ったことがないので確かなことはわかりませんが)に酪農と農業を営む夫婦がおりました。
日々の労働をこなして夫婦の一日は終わるのですが、しばらく見ていると、あれなんか会話が全然ないなと気が付きます。本当にこの二人全然喋りません。
ただ二人の表情がとっても暗いので、過去に何かあったんだろうなということが察せます。
ある日、いつものように羊の出産に立ち会うと、あり得ないモノが生まれます。
産み落とされたのは頭と右手が羊、その他は人間の体を持つ赤ちゃんでした。
夫婦は戸惑いながらも、子供にアバと名づけ大事に育てます。ここで哺乳瓶やベビーベッドが登場するので二人には過去に子供がいたことがわかります。
次第に明るさを取り戻していく夫婦でしたが、幸せな家族の団欒を邪魔する耳障りな声。それはアバの母羊の鳴き声でした。
まるで子供を返せというように家の前に泣き続ける羊。奥さんは良心の呵責に耐えかねて、皆が寝ている間に母羊を撃ち殺してします。
同じ頃、納屋にひとりの不審な男が現れます。それは泥棒ではなく、旦那さんの弟でした。お金がなくなった彼は、夫婦の元に転がり込んだのでした。
弟は羊の頭を持つアバを不気味がり、殺してしまおうとまでしますが、やはり思い直して夫婦の幸せを守ります。
ここまでは何となく予想通りでしたが、ラストは怒涛の展開が続きます。
朝早くに目が覚めた奥さんは、弟を起こして都会行きのバスが来る通りまで送りに行にいきます。
家に残された旦那さんはアバと畑を耕しに行きますが、突如旦那さんが何者かに銃で撃たれてしまいます!
映し出されたのは羊人間。アバのように頭は羊で体が人間の姿をしていますが、肌は灰色っぽく泥のようなものに塗れています。
旦那さんはアバを連れていかれまいと必死に袖を掴みますが、努力も虚しくアバは羊人間によって連れて行かれてしまいました。アバは悲しそうな瞳で父親を振り返ります。
後から奥さんが駆けつけますが、旦那さんは出血多量で息を引き取りました。
・私はこの映画を見て「蜘蛛の糸」のお話を思い出しました。お釈迦さまが気まぐれに垂らしてくれた糸で自分だけが助かろうとした悪人が地獄へ落ちたように、アバの母親(母羊)を殺した奥さんは最終的に一番大切なものを失ってしまいました。
終盤の場面、奥さんが倒れた旦那さんを抱きかかえたまま、カメラ(の向こうの私たち)を見るようなカットがあります。
まるで、あなたたちは私を非難するかもしれないけど、じゃあどうすればよかったの?と聞いているようです。
・この物語で人為的に(羊人間を人と言っていいのかは微妙ですが)殺されたのは、母羊と旦那さんです。羊と人であるはずの二つの命が対をなしています。
この二人(一人と一匹?)はアバがという存在が生まれたことによる犠牲です。
けれど逆に、アバを通して人間と家畜という二つの命が繋がる未来もあったのではないでしょうか。
作中のアバは二つの種を繋ぐ架け橋のようなものでした。
しかし奥さんが母羊を殺したことで、架け橋としてのアバの役割も死んでしまいました。
連れ去られたアバの悲しそうな表情は、役割を失ってここに居られなくなったというようにも取れます。
・映画にしては珍しく、登場人物が全員いい人です みんな心に傷を抱えていますが、根っからの悪人のような人は出てきません。
ですが、人間は時に狂気に陥ります。特に奥さんが母羊を撃ち殺すシーンは衝撃的です。銃口が向けられた瞬間の緊張感がすごいです。
慈愛と狂気、この二つが交互にやってくるので見ているこちらも、二つの区別がつかなくなっていきます。
・冒頭の方で、外が明るいのに何でベッドに入っているんだ?と疑問に思いましたが、途中で設定が北欧だということを思い出してハッとしました。夏の間は日が完全に落ちないのですね
この昼夜の区切りがない日々というのが、悲しみを断ち切ることのできない夫婦の心情のマッチしていて存分にその効果を発揮していたように思えます。
一つ一つの映像がとにかく美しく、映像美という点でも優れた映画と言えます。
普段ホラーは全くダメな私ですが、Lambはそれほど抵抗なく見ることができました。その代わり、始まる前の予告はホラーばかり流れるのでずっと目を閉じていました笑
恐怖と言うよりかは、見終わった後もの悲しさが心に残る映画でありました。