『恋慕』正体を明かしたフィが迎えた結末 最終話で描かれた“美しい夢”とは

呼吸が浅くなってしまうほど張り詰めた展開が続き、あっという間に終わりを迎えたNetflix配信中の韓国ドラマ『恋慕』。この緊張感から早く解放されたい思いと、まだまだイ・フィ(パク・ウンビン)たちを見守っていたい思いが交差する最終回だったのではないだろうか。そんな中でも、それぞれの思いはしっかりと描かれていた。
フィは鎧を一枚一枚と外していくように、自分が女性であることを大妃(イ・イルファ)、そして王妃ノ・ハギョン(チョン・チェヨン)に打ち明け、チェヒョン大君(チャ・ソンジェ)に王を譲位する準備に入る。ハギョンに「誰かを恨むのであれば自分を恨んでほしい」と伝えた言葉に、フィ自身を重ねてしまう。悪いことをしたわけではないのに、知らないうちに耐えがたい人生に巻き込まれてしまう残酷さをフィは誰よりも知っているからだ。史曹判書の娘シン・ソウン(ペ・ユンギョン)も同じだ。ジウンに自ら破談を切り出し、「誰かを好きになる気持ちは思い通りにはならないものです」と受け入れた。かつて、ジウン(ロウン)のことを慕うためにフィの求婚を断ったことソウンだからこそ、ジウンの気持ちが痛いほどにわかるからだろう。

無念にもジウンの父チョン・ソクチョ(ペ・スビン)が左義政ハン・ギジェ(ユン・ジェムン)の手によって殺されてしまった。ギジェの家臣になった道は間違っていたかもしれないが、その選択の理由に“家族を守る”ことが常にあった。ジウンがソクチョの死際に伝えたかったこととは何だったのだろう。ソクチョの行動が理解できなくて苦しみ許せなかったけれど、すべて自分のたちのためだとわかっていたとソクチョの気持ちを受け止めたかったのではないだろうか。ソクチョはジウンの長所を自分と似ていないところだと言ったが、命がけでフィを守るジウンは紛れもなくソクチョの息子なのだから。
大きなことを成し遂げるには犠牲が出てしまう。それがチェヒョン大君だったのはフィにとって辛くてたまらない出来事になった。反乱を終わらせるためにギジェと共に死ぬことを決意したのは、チェヒョン大君のように大切な人たちをこれ以上失わないため。死ぬ覚悟をしていながら、ジウンに「かんざしがほしい」と言ったのは、できない未来の約束をしたのではない。「ただ生きていたいです」の言葉がフィのすべてだったのだ。

フィは生きて戻り、ギジェは亡くなった。戦いは終わり、大妃の配慮により身を隠してどこかでひっそり暮らすこともできた。それでも逃げずに処罰を受けると言ったのが、フィらしい。今までも身を隠していた彼女にとって、それは同じことを繰り返すだけだからだ。ところが、多くの家臣たちがフィの罰を自分たちが受けると申し出る。国と民に尽力してきたフィの姿が、フィの生き様が彼女自身を救ったのだ。キジェは以前、王になろうとする者は、家族や兄弟の命を絶つことができるくらい非情でなければならないと言っていたが、それは間違いだった。その言葉の通りにチェヒョン大君を殺してしまったウォンサン君(キム・ペク)は、王になれなかったのだから。
王位を譲位したのはイ・ヒョン(ナム・ユンス)。ヒョンは王という形で、フィに新しい人生を生きるよう命じる。ヒョンとフィは恋人として結ばれることはなかったけれど、永遠にあり続ける強い絆で結ばれている。これからも変わらず、フィの幸せをヒョンなりの形で守り続けるだろう。ソウンは最後まで相手を重じ縁がなかったと運命を受け止め、ハギョンはフィを恨まないことで新しい人生をスタートさせた。四角関係だったあの頃が懐かしく幻のようだが、それそれが自分の道をまた歩んでいく。

フィとジウンは夫婦になり、魚を釣って一緒に夕飯を食べることを叶えた。森で語った時はその光景が輝いて見えたが、こんなにも平凡であたたかい幸せだったことは二人が一番噛み締めていることだろう。フィはこれまでのことを「とても長くて恐ろしくて、美しい夢だった」と話す。生まれた瞬間から死を命じられ、死んだ兄に変わって正体を隠しながら王にまでなったフィの人生は、先の見えない闇の中で計り知れない恐怖と戦っていた。最後のシーンは、フィとジウンの元にヒョン、キム尚宮(ペク・ヒョンジュ)、ホン内官(コ・ギュピル)、キム・ガオン(チェ・ビョンチャン)がやってくる。イ・フィとして生きた深い暗闇の中で、時には手を取り時には光を照らし、いつもそばで支えてくれたこの仲間たちとの時間は“美しい夢”だったに違いない。
■配信情報
『恋慕』
Netflixにて独占配信中
出演:パク・ウンビン、キム・ロウン、ナム・ユンス、チェ・ビョンチャン、ペ・ユンギョン、チョン・チェヨン
原作:漫画『恋慕』イ・ソヨン作
演出:ソン・ヒョンウク、イ・ヒョンソク
脚本 :ハン・ヒジョン
製作:モンスターユニオン、イヤギサニャンクン
写真はKBS公式サイトより
良い記事でしたので…

