( ^ω^)「・・・ここは・・?」

 そう呟き辺りを見回す。そこは小さな小部屋のようだった。部屋の出入り口は一つ、真ん中にテーブルが置かれている。
そして、壁にはあまりに不釣合いな大きな鏡が一枚。部屋を照らす明かりは蛍光灯が一本のみ。

( ^ω^)「・・・何なんだお、この部屋は・・・それに僕はどうしてここへ・・・・」

 なぜ、彼がこの部屋にいるのか、それは彼には全く心当たりが無いことだった。
 自らが置かれた状況を理解できないままでいると、不意に部屋に声が響く

???? 「おはよう、目が覚めたようですね。それでは、さっそく貴方にはゲームに参加していただきます。まずは席に着いて下さい」
( ^ω^)「ゲーム?ゲームってなんなんだお!それより、ここはいったいどこなんだお!」

 彼の語気が自然と荒くなる。無理もないだろう、彼にとってはわけもわからず謎の部屋に連れて来られているのだ。

???? 「では、今、貴方が置かれている状況を説明しましょう。
      貴方は街を一人で歩いているところを拉致され、この部屋に連れてこられました。
      そして、貴方は今からこの部屋でゲームを行い、それに勝ってもらいます。ゲームの回数は6回。
      6回勝てば貴方はここから解放され、多額の賞金を手に入れることが出来ます。
      以上で状況説明は終わりです。それでは、ゲームを開始していただきます」
( ^ω^)「ちょっと待つお!!言ってることがさっぱりわからないお!そもそもゲームって何だお!」

 彼がよりいっそう語気を強め声を出していると、部屋にただ一つある扉から黒服の男一人に連れられ、
 頭から袋を被せられた人が入ってきて、彼の正面に座らされた。
 黒服の男が袋をはずすと、そこには見慣れた男がいた。


( ^ω^)「・・・ドクオ?」
('A`)   「・・・よう、内藤・・・」
( ^ω^)「なぜ、ドクオがここに・・?」
('A`)   「さあな、俺もわからん。気が付いたら、謎の部屋に居て、ゲームに勝ったら解放してくれるらしいって事しかわからん」
( ^ω^)「僕と、同じだお・・・何のゲームかドクオは知っているのかお?」
('A`)   「・・・さあな、俺もわからん・・ただ、余り楽しいゲームじゃなさそうだな」

 と、そこで、黒服の男が無言でテーブルに近寄り、懐から黒い金属の塊のようなものを取り出した。

('A`)   「・・・おいおい、正気かよ・・・」
( ^ω^)「・・・拳銃?」

 黒服の男は無言のまま拳銃に弾丸を1発セットすると、リボルバーを回転させ、テーブルに置いた。

???? 「ゲームはロシアンルーレット。ルールは簡単です、自分の頭に拳銃をあて、引き金を引くだけ。
      どちらかが当たるまで交互に1回ずつ行ってもらいます。どちらが先でも結構です。それでは始めて下さい」

( ^ω^)「・・・・・・・・」
('A`)   「・・・・・・・・」

 お互い顔と拳銃を交互に見ながら無言になる。5分も経過しただろうか、無言を先に破ったのはドクオの方だった。

('A`)   「所詮、ゲームだろ、こんなもの。俺からやるぞ」
 
 そう言うとドクオは拳銃を手に持ち、自らの頭に当てると、内藤が声を発する間も無く引き金を引いた。

  カチン

 薄暗い部屋の中に金属の音だけが響く。ホッとした表情を浮かべ、ドクオは拳銃をテーブルに置いた。

('A`)  「ほら、次は内藤の番だぜ」

 自分の番が終わった安堵からか、ドクオは随分気楽に言葉を発した。
 内藤はテーブルに置かれた重厚な金属の塊に静かに手を伸ばし、取り上げた。
 ずっしりとした重さからは、とても玩具のような印象は受けない。
 恐る恐る銃口を頭にあてがい、目を閉じ、一度深呼吸をすると、そのまま一気に引き金を引いた。

  カチン

 ドクオの時と同じように、部屋の中を金属音が響く。安堵の溜息をつき拳銃をテーブルに置くと
 出入り口に立っていた黒服が無言でテーブルに近づき、拳銃にもう1発弾丸を込めるとリボルバーを回転させ、再びテーブルに置いた。

???? 「二人ともおめでとうございます。次は当たりを一つ増やしましたので、再び開始してください」

('A`)   「どうしても、当たりを引かせたいみたいだな。内藤、また俺から始めるぜ」
( ^ω^)「待つお。なんだか嫌な感じがするお。ゲームに使う玩具にしては拳銃が本物みたいだお」
('A`)   「そうか?最近のモデルガンは精巧らしいから、こんな物なんじゃないのか?
      それに、いくらなんでも、本物何てありえないだろ。ここは日本だぜ?」

 笑いながらドクオは拳銃を手にし、銃口を頭にあて、引き金に指をかける。

( ^ω^)「ドクオ!!止めるお!」

 内藤が止めようとするも、ドクオは引き金を引いた

  
  ターン!!

 乾いた銃声が狭い部屋に響く。
 内藤の目の前には、友人が力なく椅子にもたれている姿があった。

( ^ω^)「・・・ドクオ・・・ドクオーーーーーッ!!!!!!」

 椅子から立ち上がりドクオの元に駆け寄ろうとした瞬間、出入り口にいた黒服がすばやくドクオを運び出してしまった。

( ^ω^)「ドクオ・・・・・」

 現実感なんてまるで無い。それでも、内藤には友人の目の前での死がのしかかり、両の目からは涙が溢れていた。


???? 「おめでとうございます。まずは1回目の勝ちですね。それでは引き続き、2回目にうつります」

 静かに泣く内藤をよそに、部屋にはドクオの時と同じようにまた人が連れて来られた。
 内藤の正面に座らされ、袋を取らると、そこにはまた内藤の友人が座っていた。

(´・ω・`)「内藤君?どうしてここに?その前にここはどこ?」
( ^ω^) 「ショボーン・・・君か・・・」
(´・ω・`)「それより、僕の説明に答えてよ。ここはどこなの?何で内藤君がここにいるの?」
( ^ω^) 「それが、僕にもわからないんだお・・・・
       一つだけ分かってるのは、僕はこれから君とゲームをしなくてはならない事だけなんだお」
(´・ω・`)「ゲームをするのは、さっき説明を受けたよ。6回勝てばいいんだよね。
      でも、そのゲームの内容が分からないんだ」
( ^ω^) 「ゲームは・・・・・ゲームは・・・」
 
 そう言ってうつむき泣き出す内藤。その様子からショボーンはただ呆然と内藤を見ているだけだった。

???? 「それでは、新しい彼の為にゲームを説明します。
      ゲームはロシアンルーレット。ルールは簡単、互いに自分の頭に銃口を向け、引き金を引くだけ。
      当たりを引いたら負けです。それでは、ゲームを開始してください」

 出入り口にいた黒服が、また無言でテーブルに近づき弾丸を1発セットすると、テーブルに拳銃を置いた。

(´・ω・`)「どういうこと?」
( ^ω^) 「・・・・僕からやるお・・・」

 内藤はそういうと、拳銃を手に取り銃口を頭に向け、引き金を引く

 カチン

 部屋に響く金属音。腰が抜けそうになるのをこらえ、拳銃をテーブルに戻す。

( ^ω^) 「こういう事だお・・・次はショボーンの番だお・・・」
(´・ω・`)「よくわからないけど、内藤君みたいにすればいいんだね。わかった」

 内藤がそうであったように、ショボーンは拳銃を手に取り銃口を頭に向け、引き金に指をかける。

(´・ω・`)「ずいぶんと重い玩具なんだね。まるで、本物みたいd」

 ターン!!
 
 話しながら引き金を引いたショボーン。
 乾いた銃声が部屋に響いた瞬間、内藤は思わず身をすくめ目を閉じてしまう。
 そして、すぐさま黒服がショボーンを部屋の外に運び出してしまった。

( ^ω^)「う・・・うわあああああああああああ!!!!!」
 
 血と硝煙の臭いが漂う部屋に内藤の叫び声だけが響く。
 
???? 「おめでとうございます。2回目も貴方の勝ちです。貴方はとても素晴らしい強運に恵まれているようですね。
      それでは引き続き3回目を始めていただきます。
      次の相手は貴方と同じく2回勝ち抜いた方ですので、次の弾は初めから3発セットさせていただきます」

 内藤の事などお構い無しで、謎の声が部屋に響く。そして、また一人黒服に連れられて椅子に座らされた。
 袋を取ると、そこにいたのは内藤とは面識の無い者だった。

<丶`Д´>「お前が次の相手ニダか。ニダには誰も勝てるはず無いニダ!お前もさっさと脳漿飛び散らせてしまうニダ!」
( ^ω^)「・・・・・・」
<丶`Д´>「怖くて声も出せないニダか!!小心者はさっさと消えるニダ!」
( ^ω^)「・・・・・・」

 ニダの声のみが響く中、黒服が無言で拳銃に3発セットし、テーブルに置く。

<丶`Д´>「ニダからやるニダ!」

 勢いよくニダは拳銃を頭に突きつけ、そのまま引き金を引く

 カチン

 金属音のみが部屋に響く中、ニダはそのまま内藤に拳銃を突きつけた。

<丶`Д´>「どうせ、小心者だから自分で引き金を引けないニダ!ニダがこのチキンの為に引き金を引いてやるニダ!」
( ^ω^)「!!!!!!」

 そう言いながらニダが引き金に指をかけた

 ターン!!

<丶`Д´>「な・・・ぜ・・・・」

 そのまま崩れ落ちるニダ。見ると、出入り口の黒服が銃を構えていた。

???? 「言わなくてもわかるように、そこにいる黒服の彼は見張りです。
      おかしな行動をすればすぐに撃つように命じています。
      では、3回目は貴方の不戦勝と言うことで、続いて4回目を始めます。
      次も貴方と同じく3回勝ち抜いて来た相手ですので、弾は4発装填で行います」

 部屋に謎の声が響く中、いつの間にかニダの姿はなく、代わりに別の誰かが椅子に座らされていた。
 袋を外すとそこにいたのはまた面識の無い相手だった。

(゚∀゚)  「あひゃひゃひゃ」
( ^ω^)「・・・・・」
(゚∀゚)  「ひゃひゃひゃhy・・・」

 薄暗い部屋に奇声にも近いような笑い声だけが響く。

???? 「次の彼はここまで勝ち残る間に精神に異常をきたしてしまったようですが、遠慮はいりません。
      いままで通りゲームを始めてください」

 そして同じように黒服が拳銃に弾丸をセットし、テーブルに置く。
 内藤はテーブルに置かれた拳銃を手に取り、頭に銃口を向けた。

( ^ω^)「・・・・無理もないお・・・こんなゲーム・・・精神がおかしくならない方がおかしいお・・・・
      僕ももう嫌だお・・・・・・・早く楽になってこんなゲームを終わらせたい・・・お・・・・」

 頭に銃口を向けながら、内藤の目には涙が浮かんでいた。余りに理不尽に友人が目の前で命を絶つ。
 その事実のみを見せ付けられ内藤もすでに精神が磨耗しきっていた。
 
( ^ω^)「う・・・ううう・・・・」

 とめどなく溢れる涙。
 それを拭おうともせず、内藤は引き金を引いた。

 カチン

 しかし、部屋に響くのは金属音のみ。この音を聞き、内藤はさらに強く涙を流した。

( ^ω^)「うううううう・・・・」
(゚∀゚)  「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃhy」

 狭く薄暗い部屋に響く内藤の鳴き声とアヒャの笑い声。
 内藤は力なくテーブルに拳銃を置くと、すぐさまアヒャが拳銃を手に取り、銃口を頭に向け、そして引き金を引いた。

 ターン!!

( ^ω^)「!!」

 銃声に身を縮める内藤。ドサリとアヒャが床に倒れこむ音。むせ返るような血の臭いと硝煙の臭いに
 内藤はもはや壊れた人形のように泣き続けた。

( ^ω^)「ううううう・・・・・もう帰れなくていいお・・・・・死にたいお・・・・」

???? 「素晴らしい!6発中4発が当たりでありながら見事に交わす!なんという強運なんでしょう!
      このまま5回目を始めます!次は最初から当たりは5発です!」

 今までの淡々とした話し方とは違い明らかに興奮を隠せない声色で謎の声が部屋に響く。
 次は6発中5発が当たり。確率的に最初に拳銃を手に取れば、ほぼ当たりを引ける。内藤は疲弊しきった頭でそう考えていた。
 一刻も早くこの異常な部屋からいなくなりたい。もはや内藤はその事しか考えていなかった。

 いつものように黒服が誰かを連れてきて、内藤の前に座らせる。そして、袋を外す。
 しかし、もう内藤は相手の顔を見る余裕も無かった。ただ、早くいなくなりたい。それだけしか思考が働いていなかった。

     「・・・内藤・・・君?」
( ^ω^)「・・・・?」
     「ああ、何てことだ・・・まさか内藤君とやるだなんて・・・・」
 
 力なく顔を上げる内藤。そこにいた人物に内藤は驚くしかなかった。

( ´∀`)「・・・内藤君。僕だよ、モナーだよ」
( ^ω^)「モナー・・・・・ああ・・・・」
( ´∀`)「まさか、こんな所で会うなんてね。神様は意地悪だと思うよ」
( ^ω^)「・・・・・・」
( ´∀`)「僕が転校して以来だから10年振りかな?随分ひさしぶりだね」
( ^ω^)「・・・・・・」
( ´∀`)「懐かしいなぁ。あの頃は随分と仲良くしてもらったよね」
( ^ω^)「・・・・・懐かしいお・・・よく一緒に遊んだお・・・・」
( ´∀`)「そうそう、放課後や休み時間になると、いつも内藤君が僕を誘ってくれたよね」
( ^ω^)「・・・そうだお、モナーを何故か放って置けなくて、いつもモナーを遊びに誘ってたお・・・
      良く覚えてるお・・・」
( ´∀`)「・・・・・でもね、内藤君・・・・」
( ^ω^)「?」
( ´∀`)「僕の気持ちを知っていたかい?」
( ^ω^)「??何を言っているのかわからないお・・・」
( ´∀`)「・・・・そうだよね。内藤君に僕の気持ちなんてわかりっこないよね・・・・」
( ^ω^)「モ・・・モナー・・・・?」
( ´∀`)「僕は・・・・僕はずっと迷惑だったんだ!!」
( ^ω^)「!!」
( ´∀`)「いつもいつもいつもいつも!!暇さえあれば僕にまとわりついてくる!!僕はキミとは合わないんだ!
     それなのに、キミは一方的な善意で僕にまとわりついてくる!僕は当時あまり気が強くなかったから嫌だと言えなかった!
     僕は本当は一人でいたかった!キミがまとわりつくおかげで僕はイジメに合っていた事も知らないだろう!!
     キミが原因で転校せざるを得なかった事も知らなかっただろう!!!」
( ^ω^)「モナー・・・・」
( ´∀`)「もうたくさんなんだ!!僕の人生をこれ以上狂わせないでくれ!!
     さあ!早くゲームを始めよう!!!!」

 モナーがそう叫ぶと、黒服が拳銃をテーブルに置いた。もちろん当たりは5発。

( ´∀`)「・・・さあ、内藤君が拳銃を手にとってよ。そして、僕の前から消えてくれよ」

 モナーが発する言葉は低く冷たい響きを宿していた。
 
( ^ω^)「う・・ううううう・・・・・」

 内藤の目から再び大粒の涙が溢れる。
 そして、泣きながら拳銃を頭に突きつけ、引き金に指をかける。

( ^ω^)「・・・・モナー、すまなかったお・・・・」

 カチン

 金属音が部屋に響いた。

( ´∀`)「う・・・・うわあああああああああ!!!!!!!!」

 モナーの叫び声が部屋中にこだまする。内藤はテーブルに拳銃を置くと力なく座り込んだ。また、生きてしまったのだ。 
 しかも、次に待っているのは100%の死。

( ´∀`)「ちくしょう・・・・ちくしょうちくしょうちくしょう!!!!いつだって神様は不公平だ!!」

 叫びながらモナーは銃口を頭に突きつけ、引き金に指をかけた。

( ^ω^)「・・・・モナー!!」
( ´∀`)「うるさい!!お前が・・・お前さえいなければ!!!!」

 モナーが指に力を入れると、カチリと撃鉄が上がる。

( ´∀`)「・・・・神様のクソヤロー・・・・底意地が悪すぎるよ・・・・内藤、じゃあね」

 そう微笑みながらモナーは引き金を握りこんだ。

 ターン!!

 乾いた銃声が部屋に響く。

( ^ω^)「モナー・・・・・モナーーーー!!!!!・・・・・・・うう・・・あああああああ・・・」

 動かなくなったモナーを見ながら嗚咽する内藤。しかし、無常にも黒服がモナーを運び去ってしまった。

???? 「凄い凄い!まさか、あんな状況で生き残るなんて!!素晴らしい!次はいよいよ最終回です!
      最終回は少しルールを変えてより楽しめる状況にしましょう!
      最終回は最初に当たりを1発だけ入れます!
      そして、一人がクリアするごとに1発ずつ当たりを増やし、再シャッフルします!
      ふふ・・・凄いですよね・・クリアするごとに確実に増える死の可能性!とても興奮しますよね!!」

 さきほどよりさらに強く現れる興奮の声色。だが内藤にはもうすでにこの声が届いていなかった。

( ^ω^)「・・・・死にたいお・・・・早くいなくなりたいお・・・もう・・・嫌だお・・・・・」

 泣き崩れる内藤。しかし、黒服は無言でまた誰かを連れてきて内藤の正面に座らせた。

???? 「さあ、それではいよいよ最終回です。見事勝って自由と賞金を掴んでください!」

 謎の声がそう言うと、黒服は頭に被せていた袋を外した。

( ^ω^)「・・・・そんな・・・・・・・ツン・・・なぜ・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、内藤じゃない。なんだ、もの凄い強運の奴がいるって言うから
     どんな奴なのか期待してたらアンタとはね」
( ^ω^)「・・・・ツン・・キミはなぜこんなところに?」
ξ゚⊿゚)ξ「さあ?ここでこんなゲームをやってる理由は私もわからない。
     ただ、私もアンタも今までゲームをやってて生き残っていたってことだけは確かね」

???? 「我慢できませんね。お喋りはそこまでにして、早くゲームを始めて下さい!」

 謎の声の興奮と苛立ちが混ざった声が聞こえる。それに触発されるように、黒服が拳銃をテーブルに置いた。

ξ゚⊿゚)ξ「あらあら、ずいぶんと苛立ってるのね。しかたないわね。
     ここまで生きてるんですもの、最初なんて当たらないでしょ。内藤からやりなさいよ」
( ^ω^)「そ、そんなぁ・・・・でも、いいお。どうせ死ぬ気だお。早く終わらせたいお」

 ツンと話すことで少しだけ冷静さを取り戻した内藤だったが、
 早く終わらせたいことに変わりは無く、すばやく銃口を頭に突きつけると、引き金を引いた。

 カチン
 
ξ゚⊿゚)ξ「・・・・やるわね。躊躇い無く引き金を引くなんてね」
( ^ω^)「・・・もう、何も怖くないお。早く終わらせたいだけだお」

 内藤が拳銃を置くと、黒服が拳銃に弾を1発増やしリボルバーを回転させる。
 そして、今度はツンが拳銃を手に取った。

ξ゚⊿゚)ξ「当たる確立は、6分の2。つまり3分の1は当たりってことね」

 カチン

( ^ω^)「・・・・ツンもさすがだお・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「私ももう今更何も怖くないわね」

 ツンが拳銃を置くと、先ほどと同じようにまた弾が増えシャッフルされる。今度は6分の3。半分が当たりである。

ξ゚⊿゚)ξ「さ、内藤の番よ。男を見せてちょうだい」
( ^ω^)「・・・・随分ひとごとだお・・・」

 カチン

 金属音が響く。このとき、不思議と内藤の心は平静だった。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・・なんでそんなにリラックスした表情なのかしら?」
( ^ω^)「・・・そんな顔していたかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、とても落ちつた安らかな顔・・・・不思議な人ね」
( ^ω^)「・・・・・」

 そして、また弾が増えてシャッフルされる。これで6分の4。

ξ゚⊿゚)ξ「ふふふ・・・いい加減そろそろ当たりそうね」
 
 ツンはゆっくりと拳銃を手に取り銃口を突きつける。

ξ゚⊿゚)ξ「そうだ、謎の声さん。もしこれで私が外れで、次に内藤が外れたら、一つだけお願いをしてもいいかしら」
 
 この突然のツンの申し出にしばらく部屋の空気がとまった。そして、謎の声が響く。

???? 「・・・いったい何でしょうか?」
ξ゚⊿゚)ξ「やっと出てきたわね。いえ、とても簡単なお願いよ。
     これで私が外れて内藤も外れた場合、その次の私の番は100%死ぬわ。そうでしょう?」
???? 「その通り。それが何か?」
ξ゚⊿゚)ξ「いえね、そのときに3分だけ私に時間が欲しいの」
???? 「・・・・ほう・・・3分か。いったい何をするのだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「それは、次に私の番になったときに話すわ。今はまだ楽しいゲームを続けましょ」
???? 「いいだろう。では、ゲームを再開してくれ」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・・内藤、聞いた?」
( ^ω^)「聞いたお・・・・・でも、いくらなんでもそんな・・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「いいから、アンタはちゃんと生きるのよ!いいわね!」
( ^ω^)「・・・・そんなぁ」

 内藤の返事を待たず、ツンは引き金を引いた。

 カチン

 金属音が部屋に響く。さすがに安堵の表情を浮かべるツン。

ξ゚⊿゚)ξ「さ、これで私の番は終わりね。内藤、頼んだわよ」

 優しく微笑み、拳銃をテーブルに置くツン。すぐさま黒服が拳銃に弾を追加し、シャッフルを行った。6分の5。

ξ゚⊿゚)ξ「内藤、わかってるわね。外しなさいよ」
( ^ω^)「・・・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤!返事!」
( ^ω^)「は、はい!だお・・・」

 どうせ外れは1発。死んでもともとのゲームである。もはや内藤に迷いは無かった。
 静かに拳銃を手に取り、銃口を頭に突きつけ引き金に指をかける。

 カチン

 金属音が部屋に響き、内藤は椅子にもたれかかった。
 生き残った安堵。それ以上の後悔。自分が死ななかった事で、今、目の前にいる彼女に確実な死を押し付けてしまった。
 この事で内藤は自責の念に押しつぶされそうになっていた。
 しかし、彼女は違った。内藤が生き残った事により、彼女の目には嬉しさが溢れていた。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・・凄いわ。正直ここまで強運だとは思わなかった」
( ^ω^)「・・・・?」
ξ゚⊿゚)ξ「さあ!約束よ!私の願いを聞いて!これから死に行く者の最後の願いよ!」
???? 「・・・・いったい何だ」
ξ゚⊿゚)ξ「3分だけ、私と、内藤を二人だけにしてちょうだい。そこの見張りも外に出て、カメラも切って、お願い」
????「・・・・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「お願いよ・・・人生の最後の望みなんだから・・・」

 そう言って涙ぐむツン。今まで強く振舞うツンしか見たことの無かった内藤にとって、ツンの涙は驚きを隠せなかった。

( ^ω^)「僕からもお願いだお。勝者の僕が言うんだから、最後の望みくらい聞いてやって欲しいお!」
???? 「・・・・・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「お願い・・・・」
???? 「・・・・・分かった。3分だけだ。許可しよう・・・おい。出ろ」

 見張りが外に出るのと同時にツンは立ち上がり、内藤に抱きついた。

( ^ω^)「お?お?お?」

 あまりの急な出来事に思考がついていかない内藤。
 なおも強く抱きしめてくるツンに内藤も応じようとしたとき、ツンが内藤の耳元で話始めた。

ξ゚⊿゚)ξ「(内藤、そのまま私を抱きしめなさい)」
( ^ω^)「(・・・わかったお)」

 言われるがままにツンを抱きしめる内藤。

ξ゚⊿゚)ξ「(んっ・・・・いい?そのまま聞いて。拳銃には弾丸が6発入ってるわ)」
( ^ω^)「(うん、わかってるお・・・そのせいで、次はツンが・・・)」

 その言葉を発し涙ぐむ内藤だった。

ξ゚⊿゚)ξ「(大丈夫、私は死ぬ気はないわ。この時を待っていたの。弾丸が6発になるこの時を)」
( ^ω^)「(どういうことだお?)」
ξ゚⊿゚)ξ「(いい?この部屋に見張りは1人。鏡の裏に黒幕が一人とボディーガードが1人。これがこの部屋の詳細よ)」
( ^ω^)「(へ?いったいどういう?)」
ξ゚⊿゚)ξ「(弾が6発あればここから逃げる事が可能なの)」
( ^ω^)「(え?え?)」
ξ゚⊿゚)ξ「(いい?この時間が終わったら、私は自分を撃つ時にわざと1発失敗するわ。
      そうすると、見張りが弾を補充しに近づいてくる。そうしたら私は見張りを撃つからアンタは鏡に椅子を投げつけて
      私はその間に扉の鍵を拳銃で壊すわ。そして、黒幕とボディーガードを倒して、そのまま逃げるわよ。いい?)」
( ^ω^)「(・・・・いいも何も、そんな計画・・・)」
ξ゚⊿゚)ξ「(じゃあ、アンタは私が死んでもいいのね?)」
( ^ω^)「(それは、嫌だお)」
ξ゚⊿゚)ξ「(じゃあ、やるしかないでしょ。いいわね?)」
( ^ω^)「(わかったお・・・・)」
???? 「・・・・・随分と見せ付けてくれますね」
( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ「!!」
???? 「もう3分経ちましたよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、ごめんなさい。時間が経つのは本当に早いわね」

 そう言って内藤から離れるツン。そのまま何事も無かったかのように内藤の正面に座ると、
 黒服が拳銃をテーブルに置いた。弾は6発装填である。

???? 「さあ、ゲームを再開してもらおうか。もっとも、もはやゲームではないがね」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、私が死ぬのみの公開自殺ショーってところかしらね」
( ^ω^)「・・・・・」
???? 「ふふふ・・・その通りだね、さあ!楽しませてくれ!」

 静かに拳銃を手に取り、銃口を突きつけるツン。そして、引き金を引いた

 ターン!!

 予定通り、銃弾はツンの頭を掠め、天井に当たった。すぐさまかけよる黒服にツンは銃を向ける
 
 ターン!!
 
 銃声を合図に内藤は椅子を鏡に力一杯投げつけると、鏡は砕け、鏡の向こうの部屋が見えた。
 と、同時に扉に銃を向けるツン

 ターン!!ターン!!

 弾丸を2発使用し鍵を壊す事に成功したツンはすぐさま鏡の奥の部屋の黒服に銃を向ける。

 ターン!!

 ここまで、予定通りに進み、黒幕に銃口を突きつけたとき、その場の時間が止まった。

( ^ω^)「・・・・・そんな・・・黒幕が・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・さすがに想定外ね・・・・」

 ツンに銃口を突きつけられ、その場で身動きを封じられている黒幕に二人は驚くばかりだった。

(*゚ー゚) 「・・・・すごいわ、二人とも。信じられないくらいの強運ばかりでなく、こんな事までするなんて」

 そういいながら、無邪気な笑顔を向けるしぃ。

( ^ω^)「・・・・しぃ、教えてくれだお。なぜこんな事を?」
(*゚ー゚) 「あら、理由なんてないわ。ただの暇つぶしよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・・・・」
(*゚ー゚) 「ツンもそんなに怖い顔をしないでよ。もうここまでやってるんだから、後は逃げるだけじゃない」

 ツンの表情がわなわなと怒りに震えている。

(*゚ー゚) 「そんなに腹が立つなら早く私を殺しなさいよ。もともとそうするつもりだったんでしょう?」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・・・・」
(*゚ー゚) 「あと一人くらい殺しても別にかわらないわよ。今更何を迷ってるの?」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・・・・」
(*゚ー゚) 「貴女はここまで生き残るのに実の親を殺したじゃない。どうしたの?ほら」
( ^ω^)「もう止めるお!!」

 ツンより先に内藤が我慢できなくなり、内藤は思わずしぃを殴ってしまっていた。
 そのまましぃは気を失ってしまったようだ。
 そして、気絶しているしぃを撃とうとしているツンを必死になだめた。

( ^ω^)「ツン。もういいお。黒幕が分かった今、しぃは司法が裁いてくれるお」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・やめて、止めないで・・・だめ、私、彼女を殺さなきゃ・・・」
( ^ω^)「ツン!しっかりするお!とりあえず、ここを出るのが先だお!出てからゆっくり考えるお!」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・・・・・」

 茫然自失と立ちすくむツンの手をとり、内藤は部屋を出た。
 部屋を出ると、そこはどこかの倉庫だったようで、すぐに外に出ることができた。

( ^ω^)「ツン!見るお!脱出できたお!」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・・・・」

 相変わらず虚空を見つめたままのツン。そんなツンの手をとり、内藤は外に駆け出した。

( ^ω^)「やったお!やっと自由だお!」

 無事に外に出れ深呼吸をする内藤。

 ターン!!

 空に響く銃声

 地面に崩れ落ちる音

 内藤が振り向くと

 ツンが自らの頭を撃ち抜いていた


( ^ω^)「う・・・・うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 ターン!!

 不意に後ろから聞こえる銃声。
 地面に崩れるように倒れる内藤。
 空を見る彼の目にはもう光が宿っていなかった。


終わり
さて、みなさんは奇跡というものを信じますか?
奇跡にも様々な種類がありますし、人によって奇跡の内容ももちろん変わってきます。

人の思いは流れる水の如く形を変え続けるもので、永遠に変わることのない思いも奇跡の一つなのかもしれません。




今回はそんな奇跡ににまつわる、知人から聞いたお話をしようと思います。



では、お楽しみください。









それは、満開の桜が咲く春の日だった。
俺は同じ高校に通う「ハル」と言う子と付き合っていた。決して美人というわけではないが、気だての良い優しい子だった。
そのハルと別れたのは空から雪が舞い降りる冬の晩だった。
別れた理由はキライになったからでも、ケンカをしたからでもない。お互いに受験を控えていたし、それぞれ第一志望の大学が離れていたという極々些細な理由だった。

俺は無事に志望校に受かり、順風満帆なキャンパスライフをエンジョイしていたが、心の片隅では、ハルの事は忘れられなかった。

大学も2年になったある日、街に出ていた俺は懐かしい人と再会した。
服装はすっかり垢抜け、見違えるほどに綺麗になっていたが、面影は残っていた。

「ハル」だ。

俺とハルは街での偶然の再会を契機に再び付き合いだした。
それは、空には眩いばかりの太陽が燦然と煌めく暑い夏の日だった。


夏の太陽に触発されるように俺達は、二人の時間を目一杯楽しんだ。まるで再会までの空白の時間を埋めようとしているかのように………


俺とハルが再び付き合い始めてから2回目の秋に、俺達はケンカをした。
それまでは些細なケンカもなく平穏に過ごしていただけに、この時のケンカは大きなケンカになった。

そして、俺達は別れた。


枯れ木から舞い散る木の葉のように俺達はバラバラになってしまった。



それから月日は流れ、ある冬の晩、俺は夢を見た。

夢の中、ハルはあの頃と変わらない笑顔で俺と話していた。話の内容なんか覚えていない。でも、不思議と悲しさがこみ上げてきた。
この夢から覚めたらもうハルとは会えない気がした。




ケンカ別れをしてからも、俺は片時もハルを忘れたことはなかった。それほどに俺はハルの事が大好きだった。



夢の終わり際、ハルは俺にお別れの挨拶をした。

「もう会えないと思うけど、元気でね」


朝、俺は泣いていた。
堪らなく悲しかった。
その日、すぐに俺はハルの家に向かった。言い知れぬ不安感に駆られながら、俺はハルに会うために向かった。

ハルに会えたらすぐに謝って、またヨリを戻すつもりだったが、その思いは伝えられなかった。


ハルの家に行き、ハルの所在を聞いて愕然とした。ハルは事故に遭い、意識不明のまま病院にいると言うのだ。

俺はハルの入院している病院に向かい、病室で無言のハルと対面した。


そこにはいろんな機械に囲まれ、たくさんのチューブやコードに繋がれたハルがいた。


俺は泣いた


周りの目も気にせず泣いた


医者の話ではすでに脳死状態に近く、回復する可能性はゼロらしい。


その日から、俺はハルの所に通い続けた。
医者にゼロと言われても、俺はハルがまたあの笑顔を見せてくれると信じて通い続けた。





通い始めてから1ヵ月も経った頃、俺はいつも通りハルの所に向かう途中で事故にあった。


薄れゆく意識の中、このまま死ねばハルの所に行けるかも知れない。そうすればハルと一緒にいれる。それならそれで悪くないな。
なんて事を考えていた。





夢を見た。

そこにはハルがいた。


「俺も事故にあったよ。でも、これでハルの所に行ける。またハルと一緒にいれるよ」
「ダメ。アナタはまだ生きなくてはダメ。私はもうそっちには帰れないけど、アナタといつまでも一緒にいれるから、一緒に生きようよ」
「なんでハルは帰ってこれないのに、一緒に生きれるの?」
「それはちゃんと後で分かるから。ね?一緒にいつまでも生きようよ。私もアナタといつまでも一緒にいたいから」
「…………わかった」
「うん、ありがとう」


ハルはいつもの笑顔を俺に向けてくれた。
俺は夢の中でもハルの笑顔が見れたことが嬉しかった。







気がつくと、俺は病室にいた。
周りには家族がいる。俺が目を覚ましたのが嬉しいらしい、みんな泣きながら騒いでいた。
何日かして検査を受けたが、医者は口々に奇跡だと言っていた。

俺は事故の後、1カ月寝ていたらしい。


ハルは俺が事故にあった日に正式に脳死判定をもらい、ハルが持っていたドナーカードのもとに、ハルの遺志に基づき、ドナーとなって人の命を救い、そして天国に旅立っていったと聞いた。

俺はハルが命を救ったのはどんな人なのかを知りたかったが、この国ではそれは秘密らしい。




意識を取り戻してから俺は半年ほど入院生活を余儀なくされた。
そして、入院中、俺は毎日のようにハルの夢を見た。
夢の中でも俺は幸せだった。



退院後も続く長いリハビリや度重なる検査で医者とも仲良くなり、俺が事故にあった時の様子をようやく知ることができた。どうやら内蔵破裂で本当に ヤバかったらしいがちょうどその日に近くの病院で脳死患者が出て、その人がドナーカードを持っていたため、急いで検査したら俺と合いそうとの事でその方の 臓器を移植したらしい。

それからは心配していた拒絶反応も現れず今に至るそうだ。医者が言うには本当に奇跡らしく、救われた命なんだから大切に生きろ、とまで言われた。





俺はその時、直感的に気がついた。




間違いない。
俺に臓器をくれたのはハルだ…………


この国ではドナーを調べることができないけれども、俺は確信している。



夢の中でハルと頻繁に会えるし


なにより、ここまで強くハルを感じることが出きるのだから






外は優しい春の陽射しが降り注いでいた。


名前の通り、ハルは暖かい子だった。

そして、その暖かさはいつまでも俺の心を暖め続けてくれるだろう。


「ハル、ありがとう。いつまでも一緒に生きていこうな」
さて、先日、ある方から人形のお話のリクエストがありました。

おいら自身は体験したことはないのですが、知人から聞いたお話を紹介させていただこうと思います。





さてさて、みなさんのお宅には人形ってありますか?

日本人形にフランス人形、小さな女の子なら必ず一体は持っているであろう着せかえ人形などなど、洋の東西を問わずに人形という物はたくさんあります。


人形とは読んで字のごとく人の形をした物であり、古来より人の形をした物には心が宿りやすいと言われております。


この時期だと日本人に馴染み深いのが雛人形ですが、この雛人形というのは女の子の無病息災を祈るものですよね。


この雛人形の制作過程には今でも手作業の部分が多いのですが、それが古い物だったりしたらほぼ手作りといっても過言ではないでしょう。


人の形をして心が宿りやすい人形に、さらに人が多く関わる行程。
不思議なことの一つや二つない方が不思議だと思いませんか?



今回はそんなお話です。

では、どうぞお楽しみください。



あ、今回は女性から聞いたお話なので一人称は「私」です。









私の実家では毎年雛人形を出します。

女の子のいる家庭では風習的に多いと思いますが、私の実家にある雛人形は祖母の代から使われているらしく、かなりの年季が入った半ば骨董品と言っても差し支えが無いくらいの物でした。



でも、ある一件があってからその人形はお寺に供養に出してしまい、もう手元にはありません。

その一件についてお話します。




それは私が中学生の頃でした。


毎年雛人形を出していたのですが、その年、雛人形を倉庫から出し、人形を入れてある箱の蓋を開けたとき、私は思わず悲鳴をあげてしまいました。



前の年まではなんとも無かったはずなのに、蓋を開けると、真っ黒い髪の毛に覆われた人形が………

さながら映画リングの貞子を彷彿とさせるような感じです。


気味悪がりながらも人形を箱から出すと、その異様さはさらに際だった物でした。


ゆうに50cmは伸びたボサボサの黒髪

その黒髪の隙間からは人形の持つ精気の無い目が覗いており、気持ち悪い意外の感情は出てきませんでした。


それでも気を取り直し、伸びた髪の毛をハサミでカットし整えてやると、長年慣れ親しんだ人形に戻りはしましたが、それでも何となく不気味なのは変わりませんでした。




人形を全て飾り終え何日かしたころ、深夜に物音がして目が覚めました。


誰かが畳の上を足を摺りながら歩いているような音がします。


私はとっさに不審者だと思い、懐中電灯を持ち、静かに音のする部屋に向かいました。


息を殺しながら静かに進むと、物音は仏間からします。


仏間には誰も寝ていません。あるのはタンスと仏壇と、雛人形だけ。



私はそっと仏間に続く襖を少しだけ開けて中の様子をうかがってみることにしました。



息を殺し、襖に近づき、手をかけます。
中の物音はまだしているので、誰かがいるのは間違いないようです。



物音をたてないように細心の注意を払いながら襖を少しだけ開き中の様子を伺うと、何となく見える程度なのですがそこには小さな動く影が………



私は襖を勢いよく開け放ち、手に持っていた懐中電灯の光をその動く影に向けました。

懐中電灯に照らされそこにいるのは、雛人形!

しかも髪を振り乱し、目を見開いた鬼のような形相をした雛人形が畳の上を這いつくばって動いているのです!


私は張り裂けんばかりの悲鳴をあげ、自室に駆け込むと、カギをかけ布団に頭から潜り込みました。



深夜のため耳が痛くなるような静寂があたりを包んでいます。

あまりの静寂のおかげで物音はよく聞こえます。


私は布団の中に丸まりながらこのまま何もなく早く朝が来ることを祈っていました。


でも、それは淡い期待でしかありませんでした。



廊下を引きずるような音が聞こえます。

間違い無くあの雛人形でしょう。


音はだんだんと近づいてきて、私の部屋の前で止まりました。


そして、ドアの下の方で引っかくような音が聞こえます。


私は布団の中で思い付く限りのいろんな宗派のお経を唱え続けました。



すると、ふいに引っかくような音が消えたのです。


私はお経が効いたのかな?などと考え、ふっと安心して、布団から顔を出してドアを確認しようとしました。


そして、布団から顔を出した瞬間、目の前に、本当に鼻が付く距離にあの雛人形の顔がありました。


乱れた髪に人形とは思えない大きな見開いた目に血管が浮き、私を凝視していました。




そこで私は気を失ってしまったようです。


朝、目が覚めると手元にはあの雛人形がありました。


……………そして、私の指先には小さな噛み傷がたくさんついていました………